~14~
数日後、院内も落ち着きを取り戻した頃、麗加は改めて検査を依頼しようと仁の元へ向かうことにした。
仁は丁度、弟の賢の病室にいた。
賢も安静状態だが話が出来るまでに回復していた。
二人は久々に「家族」として同じ空間に立っていた。
しかし、それはとても和やかとは言えない空間だった。
「兄さん・・・兄さんの言った通りだったよ」
「・・・。」
賢は、TAGAMIscienceの田神スン科学博士の次男だ。
仁は実は長男だったのだ。
仁の本名は田神仁。
だが、あの田神スン科学博士とは縁を切っておりその姓を使いたくなかった仁は名前を「仁」とだけ名乗っていたのだった。
「レッドタウンにはスンの研究所があったな。あの爆発はそれが関係しているのか?
スンは完成真近で「製品」を発表していた・・・今回のは、大掛かりなプロジェクトだったそうじゃないか。
大方、テロにでもあって爆発されたんじゃないのか?スンは少々恨みを買うようなやり方があったからな。
俺はあの人のやり方が理解できなかった。だから研究を継ぐつもりもなかったんだ。
いつかこうなると思っていたから・・・」
普段は温厚な仁が、厳しい口調で話した。
賢は重い表情で語り始めた。
「確かに、父さんのやり方には少々強引なものがあった。あれだけの精巧なアンドロイドを作るのに裏で違法なこともしていた。
でも、今回のことはテロにあったとかそう言う問題じゃないんだ・・・」
「違うのか・・・?」
賢は大きく息を呑み、思いきって口を開く。
「先日発表したA-D2Xが衛星の故障により暴走をしている。あの爆発はA-D2Xが起こしたものだったらしい」
「どういうことだよ・・・言ってることの意味が分らない」
「父さんは・・・おそらくその時に・・・」
二人の間に沈黙が走った。
その頃、麗加は仁の元へ向かっていた。
途中であった看護婦に聞くと、被害にあった弟の病室にいると聞き、
麗加は仁のいる賢の病室へと向かったのだった。
「A-D2Xは衛星で作動管理をすべて行えるようにしてあった。
でも、スペース・デブリが他の衛星と衝突して、その破片がA-D2X衛星に直撃して、衛星は大破した。
管理元が破壊された場合、A-D2Xは作動不可能になるはずだった。
だけど、A-D2Xは作動してしまった・・・」
「誤作動したって訳か・・・?」
賢は目を閉じ、悲痛な表情を浮かべた。
「プロジェクトは失敗だ・・・
アイツが、指示なしで動いてるという事が大問題だ。
TAGAMIscienceではすぐに誤作動したA-D2Xの停止処理に取り掛かった。
でも、アイツの威力は設定以上で・・・」
TAGAMIscienceであの夜、A-D2Xの異常に気がついた研究員が、慌ててスンに報告に向かうとき、そこにはA-D2Xがいた。
A-D2Xは研究員を抹殺し、自分が停止させられるのを阻止した。
最終手段を持つスンでさえその力に敵わず、抹殺されてしまった。
そして、暴走したA-D2Xは街ごと何らかの形で破壊したのだ。
賢はあの日の出来事をそう推理していた。
「あくまでこれは一つの仮説だけど・・・
アイツは暴走マシーンになってる可能性がある・・・」
元々防衛システムが搭載してあるタイプだ。
もし、そのプログラムが自分自身に稼動しているとしたら・・・
自分を阻止しようとするものすべてを、抹殺するかもしれない。
「イエロータウンの爆発も、A-D2Xだ・・・
あの日、アイツは僕の研究所に現れたんだ。」
「それで、阻止しようとしたのか・・・?」
賢は静かにうなずいた。
「案の定、研究所が破壊された・・・
爆発の規模は父さんの時より小さかったけど、
人間の手で造っておきながら、人間の力では敵わないなんて・・・」
「それでも、ここには沢山の犠牲者が来たんだぞ!
そんなことで済むか!!
レッドタウンの爆発で沢山の人が死んだ!!
ここ(病院)にはその被害者もいるんだ!!
まさか・・・自分の家族したことのせいで被害に遭った人たちを助けてるなんて・・・」