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初のAランクハンター

 今まで住んでいたアルビダイヤを出てから数時間、俺たちはアルビダイヤと次の街の中間地点にある洞窟で焚き火をしていた。

「はぁー疲れた。まだつかないのかしら。ふかふかのベットで寝たい……」

「明日には着くんだから文句は言うな」

 キララは疲れて眠ってしまった。さっきまでは、「我はどんな困難にも打ち勝つ最強の魔法使いだ!これくらいどうってことは無い!」

 とかほざいてたのに……。まぁ、静かでいいか。

「さぁ、そろそろお前も寝ろ」

「あんたは?寝ないの?」

「寝てる最中にモンスターでも来たらどうする。俺は辺りを見張っている」

「ふぅ〜ん。まぁ眠くなったらいつでも交代してあげるから言いなさいよ」

「……ずいぶん優しいな」

「まぁ、いつも迷惑かけてるし……」

 迷惑かけてる自覚あったんかい! なら迷惑をかけないように工夫をしてくれ。

「分かった。じゃあ…………交代してくれ」

「……え?」

「いや、俺だって眠いんだよ。というわけで交代してくれ」

「嫌よ!やっぱりもう寝る。眠くなっても途中で起こさないでね!」

「おい!」

「………………」

「もう寝てやがるこいつ……」

 まぁ寝かせておいてやるか。

 そうして無事、俺は朝方には隈が酷くなり、2人に爆笑しながらからかわれるのだった──。くそ!


 「さぁ、もうすぐだ」

 ようやく俺たちは次の街、〝ウォータータウン〟に辿り着こうとしていた。

「先程から雑魚どもが襲いかかってきてるのだが……、鬱陶しいな。我にはどうあがいたって勝てるわけもないのに」

 自慢気に鼻を高くしているこいつは先程から襲いかかってくるモンスターを一度も倒してない。というかメラもほぼほぼ戦っていない。つまり、俺がほとんど倒しているわけだ。

「なぁ」

「何よ?」

「これ、お前らのいる意味あるか?」

「何を言っているのだ貴様は。この我がいるのに意味がないわけないだろう」

「だって誰も戦ってくれないし……」

「そ、それは……すまない……」

「だって、デスナイト戦を見たら、私たちが戦うよりもキョウが1人で戦ったほうが早いんじゃないかなぁって思って」

 それは事実だ。この2人は役に立たん。コイツラに任せておくと、モンスターの食料として運ばれていることが多々あるのだ。それもこれも魔法が一回しか使えなかったり、魔法の詠唱が長すぎたりするからだ。

 ……こいつらは本当にCランクのハンターなんだろうか?戦力としてあまり数えられないな。

 まぁそれも新たな仲間を増やせばいい。次こそはまともで、強い仲間が欲しい。もうポンコツは増えないでくれ──。


「つ、ついたぞー!」

「あまり騒ぐな迷惑だ」

「はぁー、いつもあんたは説教、説教。そろそろ嫌われるわよ」

「お前が1人で何でもできるって言うなら何も言わないぞ」

「ふん。今に見てなさい!この街に滞在している間に、一番強くなってやるわ」

「いーや、我が一番強い!それは今もこれからも変わらぬ事実なのだ!」

 本当に近所迷惑だ。目立つからやめてほしい。

 ようやく俺たちはウォータータウンに着いた。街の周りには数mの石の壁が立っている。モンスターが襲撃してきても一定時間は街を守れるのだろう。

 俺たちは街の人達にギルドの場所を聞きながら、ギルドへ行き、街の地図をもらった。

 そうして一番高い宿へと向かった。

「へい、らっしゃい!」

 宿の人が明るく振る舞ってくれた。

「ここに1カ月ほど泊まりたい。金ならある」

「1カ月ですね。…………本当に金はあるんだな?」

 店の人が鋭い目つきになる。おそらく俺たちにそんな金があるとは思っていないのだろう。ていうか服装からしてそんな金持ちには見えないが。

「ああ、俺たちはこう見えて全員Cランクのハンターだ。だから犯罪なんかしないから安心しろ。もし金がなくなったら野宿でもするから」

 そう言って俺は自分のモンスーンを見せる。それを見た2人もモンスーンを取り出す。

「おお、これは、疑ってすみませんでした。最近この街で犯罪が多くてね。では……2部屋でいいでしょうか?」

「ああ、俺とこの2人の分の部屋を用意してくれ」

 さすがに宿のサイズの部屋で3人は少し窮屈だ。というかそれ以前にこいつらといっしょに寝たくはない。

「はい、これが部屋の鍵です。何か分からないことがあったらいつでも声をかけてくださいね」


「明るい人だったね」

「ああ」

「ところで今日は何をするのだ?できるものなら宿でゴロゴロしていたいのだが」

 あれだけ寝ておいてまだゴロゴロしたいと言うのか、俺はほぼ眠っていないというのに。……そうだ。

「よし、じゃあ今日は自由行動だ。日が沈んだら宿のロビーに来い。そしたら飯を食いに行く。それでいいか?」

「はーい、賛成!」

「我もそのほうがいいな」

「よし、じゃあな」

 と、同時に3人が同じ方向に歩き出す。

「ちょ、ちょっとなんでこっちに来るのよ」

「俺はこっちの方向に用事がある」

「わ、我もだ」

 無言のまま3人並んで歩いていく。俺が今目指しているところは宿だ。俺は今から寝る。死ぬほど眠いんだ。

「ま、まだこっちの方向なの?」

「あ、ああお前こそ」

 そうして3人が先程の宿に着いた。

「いやあんたらもここかい!」

「お前らはたくさん寝たからいいだろ。オレは全然寝てないんだ」

「わ、我に疲れの概念などないが、なぜかだるくて横になりたいのだ」

 それを疲れと言うんだよ! とツッコみたかったが俺も疲れていたからやめた。

それぞれの部屋に入り、寝る。思ったよりも疲れていたようですぐに眠れた。

 そしてそれは向こうの部屋の2人も同じだった──。


 夜になりようやく目が覚めた俺は2人を起こしに部屋へ行く。行くと言っても隣の部屋だが。

「おい、飯を食べに行くぞ。出てこい」

「はぁ〜い」

 案外すぐに出てきた。俺よりも早く起きていたのかもしれない。

「ではギルドへ行くとするか。うまい飯が我を呼んでいる!」

 意味分からんことを言うやつを無視してギルドへ行った。


 この街のギルドはアルビダイヤとかなり似ているが、アルビダイヤよりも広く、綺麗だ。こういうところには美味い飯がつきものだ。そう期待しながらギルドの扉を開く。

 するとそこには、地面に倒れている赤紫色っぽい女の姿が。しかも顔が赤い。

「「酔っぱらいだ……」」

 メラとキララがハモる。

 だが俺はその横をスタスタ歩いていく。こういうのには関わるだけ無駄だ。なんか面倒なことになる。

 たが俺が通り過ぎようとしたら、女が倒れたまま俺のズボンを掴んだ。

「み、水……」

「……………………」


 最悪だ。なぜかいつもこういう面倒なやつに目をつけられる。なんだ? 俺の姿が舐められているのか? もっとチャラい見た目になったほうがいいのか?

 と、考えてるうちに水を飲み干した女が話しかけてきた。

「いやーありがとね。飲み過ぎて立つこともできなくなっちゃってて、あははー」

 まじで酔っ払いだ。

 俺の横でメラとキララがヒソヒソ話している。きっとこいつらもこの酔っ払いについてしゃべっているのだろう。

「すいませーん。ビール1つ!」

 なんだこの女、また酒を注文してやがる。さっき飲み過ぎて立てなくなってたじゃないか!この世界はバカなやつしかいないのか?

「ご、ごめんなさーい」

 俺達が座っている席のもっと奥から別の女が話しかけてきた。見ると黒髪の20ほどの女の人だ。

「この酔っぱらいの仲間か?」

「あ、はい。すみませんこの人は『お酒がないと私は死ぬ!』とか言う変人でして……」

 この人も苦労してるんだな。

「そ、それでその……ここで出会ったも何かの縁、どうかこの人をあなたのパーティーに入れていただけないでしょうか!」

「……嫌だな」

「で、ですよね~」

「あんたの仲間じゃないのか?なんでこの女を俺たちのパーティーに?」

「実は……、私は訳あってハンターをやめて実家を引き継がないといけなくて。どうかお願いします」

「なるほどな。だが断る」

「そんな!この人は1人でダンジョンに行くと途中で酔っ払ってそのまま寝てしまうんですよ!この人は1人で生きていけません!どうか!」

 余計嫌だわ! というか俺たちが探しているのは実力のある〝まとも〟な人だ。

 こんな酔っぱらい、大して強くないだろうし仲間にする理由が見つからない。

「この人は一応Aランクの凄腕ハンターです!どうか!」

 …………ん?今なんて言った?

「すまないがもう一度言ってくれ」

「この人はAランクの凄腕ハンターです!」

「あ?ん?この酔っぱらいすぎて今餅のようにとろけてるこの女が?」

「はい!酔っぱらいですが実力はあります!」

「じゃあいいんじゃなーい?」

 ずっと隣で聞いていたメラが言う。

 なんでこいつはこういう変なやつばっかり仲間にしようと思うんだよ。

 「Aランクのハンターなんてこの街にはほとんどいないわよ。Aランク以上のハンターはほとんどが王都か、その周辺の街に住んでる。ここはまだ王都から離れてるからそんなに凄腕ハンターはいないわよ。絶対にここで仲間にしておきましょう!」

「なるほどな」

 どうするか。Aランクなんて俺たちにとっては憧れそのもの。貴重な戦力だ。だが、この酔っ払いが本当にAランクなのか? ていうか酒臭い。

「この人のモンスーンを見せてくれ」

「分かりました」

 そう言うと、とろけてる女からモンスーンを取り出して見せてくれた。

 確かにAランクと書かれている。しかも職業はサポート重視の〝僧侶〟だ。

「少し考えさせてくれ。明日の午前10時にここでもう一度集合しよう」

「分かりました。では私たちはこれで。ほら帰るよ」

 俺たちに丁寧にお辞儀をし、女の人に肩を貸し帰っていった。

 ちょうどその時、さっきの女の人が頼んでいたビールが運ばれてきた。

「「「あ」」」


 俺は朝5時に起きる。そして体のストレッチ、腕立て伏せなどの軽い筋トレをする。

 ちなみに昨日あの女が頼んだビールは俺が飲んだ。この世界では15歳から酒が飲める。初めて飲んでみたが、美味くもないし、不味くもない。余計な代金を払わされた。たが

、あまり不味くなかったということは俺の舌がおこちゃまではないという証拠だ。結果的にプラスだと思っている。料理に関してはメラとキララが頼みまくり、俺の食べたいものも注文できなかった。というかメニュー表すら見れなかった。

 あれから一晩中悩んだが結局、あの女を仲間にするかどうか決まらなかった。

 戦力としてはかなり欲しい。たが酔っぱらいだ。しかも酒臭い。

 よしここは俺たち3人で多数決を取ろう。それが一番平和だ。

 というわけですぐに2人に聞きに行きたいのだが、きっとまだ寝てるだろう。俺は退屈なので街に散歩しに出かけた。


「いらっしゃい!」

 まだ6時を少し過ぎたくらいの時間なのにもう武器屋は店を開いていた。

 俺は新たな得物を探していた。正直今のナイフではリーチが短すぎる。もう少し長い得物が欲しい。

 店中を見て回った結果、オーシャンエッジという、皆が想像する剣よりも少し短い長い剣だ。と言ってもナイフよりはリーチがある。

「あまり長すぎても使いにくいからな、これでいこう」

「お客さん。店の裏で少し振ってみな。手に馴染むかどうか分からんからな」

「いいのか?なら試してみるか」

 店の裏の少し狭い敷地でオーシャンエッジを降ってみたが随分と軽く、振りやすい。のだが、

「……ナイフのほうが、使いやすい」

「…………」

 これには店長も無言になってしまった。

 ……どうしよう。いやでも、今初めて振ったし? 慣れれば別に問題は、ない……と思う。

「金なら今から全然稼げるしな。これを買う」

「い、いいのか?あんた今……」

「いい。これを使いこなす」

「そ、そうか。頑張れよ!」

 会計を済ませ宿に帰る。家に着いた時は7時過ぎだった。さすがに起きているだろうと思ったが、全然起きてないな。部屋から物音もしないし、これは完全に寝てるな。

 俺はキッチンの鍋とお玉を持って、部屋に凸った。そしてその2つの料理器具で大きな音を立てて2人を起こした。なんか文句を言ってきたが、無視して部屋を出た。多分他の部屋の人には聞こえてないと思う。多分……。

 朝ごはんを食べて、2人は着替えて、歯磨きをしてゆっくりし、10時にギルドに着くように宿を出た。

 少し早くギルドについてしまったので、10時になるまで待っていると、ギルドの扉が開いた。そして、あの酔っぱらい女が入ってきた。あのまともな人は見当たらない。

「おはよ~!元気してた〜?昨日のまともな女性は予定が入ってこれなくなったって」

 手には缶の安そうな酒を持っている。

「そうか、これなくなったか。ていうか、」

「「「酒臭!」」」

 全員でハモった。


「で?私は結局どうすればいいの〜?」

 女がふわふわした顔をして聞いてくる。

 そこで俺は2人に朝思いついた、多数決で決めようと提案する。2人は頷いてくれた。

「この酔っ払い女を仲間にしてもいいと思う人は手を挙げろ」

「酔っぱらい女ってなんだ!酔っぱらい女って!変なあだ名をつけるな〜!…………って誰も手を挙げてないじゃん」

 だって、

「「「(酒臭いし、強そうに見えないんだもん!)」」」

 誰も声には出してないが、なぜか俺たちは考えが一致していた。

「ん〜〜?もしかしてあたしのこと疑ってる?だいじょーぶ!ちゃんと強いから〜!」

「「「(…………ほんとか?)」」」

「私、毒とかも調合できるよ〜!あとはね、」

 俺は女が喋っている最中に質問する。

「毒はどんな毒が作れる?」

「ん〜、私こう見えて結構器用だから作り方さえ分かれば、基本的にどの毒でも作れるよ〜。材料があれば」

 これはでかい! 俺は日本から持ってきた毒はあるが、調合はできない。つまり、こいつがいれば毒使い放題! これはいい!

「おい、2人とも俺はコイツを仲間にすることに賛成だ」

「「えぇ〜」」

「どうしても嫌なら断るが、どうする?」

「「…………良いよ」」

「お、じゃあ私はこのパーティーの新たな4人目のメンバーってことでいいのかな?」

「ああ、これでようやくフルパになった」

 メラと2人でパーティーを組んでいた時は少し嫌だったが、意外とパーティーも悪くはないな。

 俺がそう思っている最中にも、女は酒を飲んでいた──。

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