頭のおかしいやつら
メラとパーティーを組んでから4日経った。
俺たちはついに2人で一緒にクエストに行くことになった。普通はパーティーを組んだら、常に一緒にクエストに行くのだろうが、俺が嫌だったのでメラと一緒にクエストに行くことはせず、1人で依頼をこなしていた。
そうしてるうちに、俺はレベルが6になっていた。スキルポイントもたくさん手に入れ、全てのスキルポイントを使って、〝隠密〟というスキルを手に入れた。
隠密とは気配を最小限にし、敵に見つかりにくくするスキルだ。本来のハンターなら少しバレにくくなるというだけで、結構すぐにモンスターに見つかるそうだ。故に覚えるのにスキルポイントを少し多く消費する上に、対して使えないこのスキルを獲得する人は少ないそうだ。
だが、俺は元の世界では殺し屋だ。生身の状態で気配を消すという能力を持っている。気配を消せないとすぐにバレて、護衛との戦闘になり、ターゲットを逃がしてしまうからだ。
そして、2人でクエストに行く前に、メラから提案があった。
「ねぇ、そろそろ職業を決めたほうがいいんじゃない?別にレベル上げていけば職業を変えれるから、そこまで慎重に考えずに、ぱっと決めちゃおうよ」
「……そうだな。流石に職業がないとこの先、厳しそうだ」
そういうわけで俺たちはギルドにやってきた。
早速職業を選ぶ。受け付けの人に頼んだら、職業が書いてある図鑑を貸してもらえた。何が1番いいか……。魔法使いはメラがいる。と言っても1日に1回しか魔法を撃てない脳筋バカだが。
全ての職業について調べてみて、俺が特に気になったのは、剣やナイフ、全ての刃物の扱いが上手くなる剣心。そして、搦手や、色々なアイテムをたくさん持てるようになる、器用な人に向いている、バックパッカーという職業だ。バックパッカーは、あまりおすすめはされなかった。なぜならただ搦手がたくさん持てるようになるだけで、搦手の扱いが上達するというわけではないからだ。 だが、搦手は俺の得意分野。どうするか……。
「ねえー早くしてよー」
隣ですでに退屈しているメラが文句を言ってくる。コイツは静かに待つことすらできないのか。
悩みに悩んだ結果、シンプルに剣心を選んだ。これで近距離戦の勝率は上がるだろう。
「やっと終わったのね!暇だったからいい感じのクエストを見つけてきたわ!」
目をキラキラさせながらクエストの書いてある紙を目の前に突き出してくるメラ。
そのクエスト内容は……。
ドラゴンの討伐だった。ちなみにドラゴンのランクはA。そのかわりクエスト報酬が650000ゼルトと、規格外の報酬だ。
だが、今の俺たちにAランクのドラゴンなんか倒せるはずがない。
「却下」
「ええー!?なんでよ!」
「Aランクのドラゴンなんて勝てるはずがないだろう。なんでそんなに高難易度のクエストに行こうとするんだ!」
「だって私の借金、800000ゼルトなんだもん!これぐらいの報酬じゃなきゃ、当分この町から出られないわよ!」
800000ゼルト。高すぎる。
「どうやったらそんなに借金ができるんだ……」
「えーっと、どうしても欲しい家具があって、所持金じゃ買えなくて、3000ゼルト借金して、カジノでお金を借りまくって、結局ボロ負けで700000ゼルト、それから……」
「もういい、もういい。ていうかカジノで700000ゼルトも借金するなんて一体どういう脳みそしてるんだ。本当にバカだな」
「はぁー!!いくらなんでも私のことをバカにしすぎよ。もうキレました!私の実力を見てから物事を言いなさいよ!」
そう言うとまたメラがクエストを持ってきた。
「Bランクのダークスカルの討伐、報酬100000ゼルトか」
ダークスカル。その名の通り黒いガイコツだ。俺はFランクだが、実力は絶対にFランクよりも上だ。それにメラだってCランクだ。2人でBランクのモンスター討伐なら……。
「分かった。そのクエストに行こう」
俺はそのクエストを了承し、クエストに出かけた。
今回のダンジョンは森の中にある墓地らしい。
だが、森といっても前にキリムたちと来たときよりも暗い森だった。
「ちょ、ちょっとこんなに暗いなんて聞いてないんですけど!」
「文句を言わずに歩け。そもそもお前が選んだクエストだろう。」
「それはそうだけど!」
やはりコイツはうるさい。いつも文句ばっかだ。だがそれでもちゃんと俺についてくる分だけマシか。
そうしてるうちに俺たちは目的地の墓地についたのだが……。
「何ここ?」
「気味が悪いな」
そこはまるで漫画に出てくるような不気味な墓地だった。しかもかなり広く、霧が出ている。
「ん?待て」
俺はメラに立ち止まるよう指示する。
「なんなのよ。早く帰りたいからどいてちょうだい」
「いる」
メラの言葉を無視しながら前にある影を睨む。
「え?何が?……ひっ!」
前から歩いてきたのはボロボロのフードをかぶった黒いガイコツ。しかも両手に剣を持っている。こいつがダークスカル。
直後、ダークスカルが突っ込んでくる。俺はすかさず投げナイフを投じる。だが、あっさりと剣で弾かれてしまった。どうやら動体視力がいいらしい。目はないが。
「そんなガイコツ私がぶっ飛ばしてやるわよ!見てなさい、メテオライト!!」
直後ダークスカルに向かって隕石が飛んでいく。そして凄まじい爆発を起こした。だが威力がすさまじく、俺の服が少し燃えた。
「おい!俺まで巻き込みやがって。一応パーティーだろ!」
「テヘペロ!」
コイツってやつは!
だがその時、奥から何か大量の影が迫ってくる。目を凝らしてじっくりとその影を見る。影の正体は……。
「「ダークスカル!」」
見事にメラと被った。いやいや、今はそんな事どうでもいい。
この数はまずい。
「メラ、もう一回メテオライトをぶっ放せ!」
「無理よ!私は1日に1回しか魔法を使えないって言ったじゃない!」
そういえばそうだった。本当に使えない魔法使いだ。もはやハンターとかよりも芸人になったほうがいいんじゃないか。そんな事を考えてると、大量のダークスカルが走ってくる。
「逃げるぞ!」
どのくらいの走ったのだろうか。メラの体力が限界そうだ。
「少し休むか」
まだ森の中だがダークスカルは見えない。どうやら撒いたようだ。
「疲れた。ゼェゼェ……。もう、ハァ、二度とこんなクエストはやらないわ……。」
「もう少し体力をつけたらどうだ?」
「うっさい!ていうかあんたがおかしいだけだからね!なんで6レベの分際で、12レベルの私よりも体力があるのよ!」
「……もともとだ」
これがBランク。数も多かったが、一人一人が強かった。逃げてる途中追いつかれそうになり、少しずつ応戦しながら逃げてきたがなかなかの手練だった。
「というか、お前はなんで杖で戦うんだよ」
「仕方ないでしょ。魔法は魔力が切れて使えないんだし」
だから別の魔法を覚えてくれ、という俺の意思は伝わっていないようだ。
メラは追いつかれそうになると、ダークスカルを杖でぶっ叩いていた。しかも一発でダークスカルの腕を粉砕していた。まぁ、ダークスカルはすぐに腕を治し、またメラを追いかけていたが。
魔法使いなのに物理がすごく強い。うん、意味が分からん。
というか、回復魔法まで使えるなんて聞いてないぞ。
「とにかくもう帰るぞ。クエスト内容はダークスカル1体の討伐だ。一応クエストは成功だから報酬は貰えるぞ」
「ヤッターー!!報酬は100000ゼルトだから、2人で山分けして、1人50000ゼルトね!」
今回のクエストはかなりよかった。2人とも死にそうな思いはしたが、傷は負っていない。
俺たちはついにBランクのクエストをクリアしたのだ──。
ギルドに帰って報酬の100000ゼルトを受け取り、家に帰る途中、先に帰っててとメラに促され一人で帰ってきた。
「メラめ、何をするつもりだ」
考えたところでわかるはずもなく考えるのをやめた。
今回は疲れた。先にシャワーを浴びよう。
体を洗い、ゆっくりと湯船につかる。そして考える。
ダークスカルはクエストボードで見たところ、Bランクの中でもかなり報酬金が少なかった。つまり、ダークスカルよりももっと上のBランクがうじゃうじゃいるわけだ。しかもメラの魔法があったから倒せたわけで俺は1体も倒せていない。
「……無理だろ、この世界」
とにかく明日からはCランクのクエストに行こう。毎回あんな思いをするのはきっとメラも反対だろう。
…………早く元の世界に帰りたい。
風呂から出ると、リビングに大量の肉がおいてあった。
「随分と高級そうな肉だな」
「ええ、今回は初めて一緒にクエストに行ったことと、初めてBランクのモンスターを倒した事のお祝いだからね!今日はすき焼きよー!」
「こんなに高い肉を買って借金は返せるのか?」
「あ……」
はぁ。何も考えていないコイツにいつもだったらムカつくんだろうが、今はすき焼きタイムだ。今日ぐらいは、別にいいだろう。
ちなみにすき焼きは日本で食べたものよりも、めちゃ美味かった。
それからというもの、俺たちは毎回Cランクのクエストに挑んだ。借金返済のために、節約しながら、少しでも報酬がいいクエストに行くようにし、気づいたら2週間が経っていた。
そこで俺は気づいた。
「……仲間が欲しい」
「?私がいるじゃない、この完璧な私が」
「いや確かにメラは火力においては十分だ。だが……」
「だが?」
「毎回毎回お前はポンポンポンポン魔法を撃ちすぎだ。1回しか使えないからこそ、いざという時にとっておくべきだろう」
「いやいや、何もわかっていないのねキョウは。私の魔法は最大火力、一撃で相手を消し飛ばす爽快感を私は一刻でも早く味わいたいのよ!」
何を言ってるんだろう。この頭の悪い魔法使いは。
「……ていうか、ずっと気になってたんだが、お前はかっこいいからっていう理由で魔法使いをやってるんだろうが、そろそろ物理特化の職業に就いたほうがいいんじゃないか?」
「嫌」
即答された。
まぁ、現状は何とかなっているからいいが、明らかに魔法を撃ちすぎだ。確かに敵が一体なら討伐できるかもしれない。だが、その後のコイツは杖で殴るしかできない。
もうちょっとサポートタイプの仲間が欲しい。
すると納得したのかメラが口を開く。
「はぁ、確かに仲間があなたのような人だけだと、不安ね。よし、ここはパーティーメンバーを募集しましょう」
と、言うわけでギルドに〝パーティーメンバー募集中〟という紙を貼ったまま、2日が過ぎた。誰一人として話しかけてこない。
「な、なんで誰も来ないのよ!」
「まぁ、Fランクの俺と、Cランクといえど1回しか魔法が使えないへなちょこ魔法使いしかいないパーティーなんか誰も興味ないよな」
正直分かりきってた。俺だったらこんなパーティーに行こうとは思わない。
しかし、ついにその時が来た。
「おい、ここがメンバーを募集しているというパーティーか」
いきなり変な口調の黒いフードをかぶった男が話しかけてきた。
「我の、いや、漆黒の悪魔と契約を交わし、圧倒的な実力を手に入れた我が名は、キララ……」
ん?最後だけ声が小さかったな。
「すまんが、名前だけもう一度言ってくれるか?」
「な、なぜこの我が2度も名乗らんといけないのだ」
「パーティーになりたくて話しかけてくれたんじゃないのか?嫌なら別にパーティーに入らなくていいが」
「い、いや待て。そうだ。我はパーティーに入りに来たんだった。えーっと、キ、キララです」
「プッ。女の子っぽい名前」
メラめ、人の名前を馬鹿にするなんて、堕ちるとこまで堕ちたな。
「わ、我は女だぞ!」
「「!!」」
「お、おいもう一度言ってくれ。耳がおかしくなっていて聞こえなかった」
「わ、私も聞こえなかったから、もう一度お願いできるかしら」
「お、女、だと言ったのだ」
まじかよ。しかも女で、ちゅ、厨二病だと……。
「わ、我をこのパーティーに入れてくれ!」
嫌な予感がする。確かにメンバーは募集しているが、こいつはなんかやばい。悪いがここは断って…
「いいわよ!」
メラが即答しやがった。俺はメラに向かって来い来いと指でジェスチャーした。
俺はキララに聞こえないように小声でメラに喋る。
「おい、あんな変なやつをパーティーに入れるのか?」
「え?だってあなたからメンバーを募集するって提案してきたじゃない」
「そ、それはちゃんとした仲間が欲しいって言ったんだ。見るからにあいつはヤバそうだろ」
「いーや、私の目に狂いはないわ。彼女は絶対に役に立つ。ここでパーティーメンバーにしときましょう」
そんな自信どこから湧いてくるのか。
「い、いや迷惑ならいいんだ。別のパーティーに入れてもらうから」
もはや、普通の喋り方になっているキララが少し可哀想に見えてきた。
「ほら、早く決めないと彼女のメンタルが持たないわよ」
「……わ、分かった。彼女をパーティーに入れよう」
本当にこの判断は正しかったのか。それは一緒にクエストに行けばわかる。
「おい、キララとか言ったな。話し合った結果、お前をパーティーに入れることにした」
それを聞くとあんなは目をキラキラさせながら迫ってきた。それと同時にフードを外し、声も女の声になった。随分と声を変えるのがうまいな。
「ほ、本当か!では、このキララ、誠心誠意このパーティーに尽力を尽くし、必ず魔王を倒し、世界を支配することにしよう」
なんで世界を征服させようとするんだ、とツッコミたかったが辞めておいた。こうして新たな仲間、変な厨二病のアンズが仲間になった。
そしてコイツもまたメラと並ぶほどの厄介なやつだということを俺はまだ知る由もなかった──。




