表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

殺し屋にバカな仲間を

 町に帰った俺達はギルドへ報酬を受け取りに来ていた。ビックオークの討伐報酬は50000ゼルト。ゼルトとは日本で言う円と同じ意味だ。

 本来ならば4等分か、それとも今回は俺はあまり活躍していないので俺だけ少ない報酬になると思っていた。だが、なぜか俺はそれ以上の20000ゼルトも貰った。

「こんなに貰っていいのか。俺は何もしてないぞ」

「いやいや、お前がいなかったら全員死んでたのかもしれないんだ。なんならもっとあげようか?」

「そうよ、遠慮はしないで。今お金に余裕がないんでしょ?」

 この世界の人間は優しいな。と思いつつこれ以上貰うのは気が引けるので20000ゼルト貰っておいた。


 そしたら3人が飯を奢ってくれた。モンスターの料理はどれもいける。

 そして俺は少しだけ情報収集する。

「この世界の魔王について教えてくれないか?」

「悪いが俺たちも魔王については知らない。この村は図書館も小さい。そんな貴重な情報はどの本にも載っていない。」

「そうか。」

「ただ、魔王直属の配下、四天王についてはすこーしだけ知ってるぜ。」

「ぜひ、教えてくれ。」

「四天王は魔族というモンスターとは違う種族だ。そして四天王は、火、水、風、雷のそれぞれ4属性のプロフェッショナルらしい。中でも雷の四天王は一番強いんだとか。まぁ、それ以外は知らねぇ。親に昔話してもらっただけだしな」

「その情報だけでも助かる」

 その時、無言で会話を聞いていたサラが語りだす。

「そういえば四天王って言えば、全員が150年生きてるらしいわ。魔族は歳をとらないもの。」

「そうなのか。ええだからこんなに情報が世間に出回っている。魔王はもっと生きてるはずだけどね」

「そんなに魔族について知りたいなら王都に行けばいいんじゃないか?世界一の図書館があるらしいよ」

 シュンが言う。

 ……なるほど。確かに世界一の図書館と言われているのならきっと役立つ情報は1つや2つではないだろう。

「分かった。なら、俺は王都を目指してみる」

「お、おお、行動力がえげつねぇな。だが気をつけろよ。王都には高難易度クエストばかりだという。今のままいってもきっとどのクエストもクリアできないと思うぞ」

 「はぁ、もう少しここでレベルを上げてから行くことにするよ」

 そうして、俺は料理をたいらげて、席を立つ。


「じゃあな、魔王討伐頑張れよ!」

「ああ、いろいろとありがとうな」

 俺はクエストに連れて行ってくれたこと、飯を奢ってくれたこと、様々な情報を教えてくれたこと、全部にお礼をしてギルドを出た──。

というわけで、1人でEランクのクエストに来たわけだが、この洞窟のようなダンジョンのボス、ゴーレムが見当たらない。

 さっきからずっと探しているがもぬけの殻だ。どうしようか悩んでいると、突如後ろの岩から殺気を感じた。

「!!」

 だが振り向いても誰もいない。妙だ。いま完全に殺気を感じたんだがな……。

 冷静に思考を巡らせる。

 もしや……、ゴーレムは岩に擬態するのか!?だとすると……。

 僅かな希望を感じてその場に座り込む。

 そして眠るかのように脱力する。

 その時!右側から何かが飛んでくる。それは石の拳だ。俺はそれを予知していたかのように避ける。そのまま、ナイフで腕を切断しようとする。だが、『キンッ!』と音を立ててナイフが弾かれた。当然だ。石をナイフできるなんて不可能だ。ここは一度距離をとるためにバックステップを踏む。

「(どうするか。ナイフがだめなら投げナイフも効かない。毒に関しては……、石相手に効果はないだろうな)」

 その時、

「メテオライト!!」

 声とともに巨大な隕石がゴーレムめがけて飛んでいく。ゴーレムは避けられずに隕石に直撃した。その振動でダンジョンが揺れる。そして土埃が舞う。

 土埃が晴れるとゴーレムは跡形もなく消滅していた。

「危なかったわねー」

 声がする方向を見ると魔法使いっぽい服装をした女が立っている。

「まぁ、仕方なくだけど、助けて上げたんだから私に感謝してよね!」

「随分と鼻が高いな」

「何よ!助けてもらって感謝もないの!?これだから最近の若者は……。」

 呆れたように言っているがおそらく年齢はさほど変わらないだろう。かなり若い。とはいえ、確かにピンチではあった。……とりあえずお礼を言う。

「はぁ、助かった」

「そうよ、それでいいのよ!それで、その……、もしよかったらご飯を奢っていただけませんか?」

「金はクエストの報酬でもらえるだろう?なぜ俺に?」

「…………いや、それは、その〜……い、今は言えないんだけど、えぇーと、と、とにかく理由があるの!分かった!?」

 なぜか逆ギレされた。意味が分からん。

「奢って欲しいのなら、最初から丁寧に話せばいいだろう。なぜそんなに図々しい態度で話しかけてくるんだ?」

「それはプ・ラ・イ・ドよ!」

自慢気に話す彼女を無視して帰ろうとする。

「なんで無視するの!?こんなに可愛い美少女が飢えてるんだから助けるのが基本でしょ!!」

 本当にうざいな、コイツ。

 どうするか……。このまま無視してもいいんだが。助けてもらった身だ。

「……今回だけなら奢ってやる。だからあんまり高い物は頼むんじゃ……」

 俺の言葉を全て聞く前に足にしがみついてきた。

「ありがどうごばいますぅ。」

 泣いている。しかも、俺のズボンにしがみついて。

「離れろ!」

 俺は強引に彼女をどけた。

 そして俺のズボンには涙と鼻水が大量についていた。きったね。


 町に帰った俺たちは、ギルドで飯を食っていた。

 あまり高いものは頼むなと言ったのに、一番高いやつを頼みやがったこの女をぶん殴りたい。

 そんな感情を押し殺していると、彼女が当然自己紹介を始めた。

「私は魔法使いのメラ。ランクはCよ。ちなみに魔法は1日に1回しか使えないわ」

 ……まじかよこの女。

「もし、魔法が当たらなかったら今までどうしてたんだ?」

「だいたいのモンスターはパーティーの皆が倒してくれてたから、基本魔法はあんまり使わないんだけど、私がたまに魔法を撃って、それ以外は荷物係をしてたら他の魔王使いが欲しいって言われて、パーティーを抜けさせられたわ。」

 そりゃそうだ。なんで魔法使いなのに1回しか魔法が使えないんだよ。

「1回しか使えないってのは何か理由があるのか?」

「私は元々魔力がすごく少なかったのよ。一回しか魔法が使えないくらいに。まぁ、誰でも使えるような初級魔法なら何回か使えるんだけど。でもそれだったら、一発で相手を仕留めたほうがいいと思ったのよ。たとえ一回しか魔法が使えなくても、私は魔法使いに憧れてたわ。だからスキルポイントはほとんど魔法の威力をあげる為か、攻撃力アップに使ってるわ!」

 「魔法使いなのに攻撃力を強くするのか。そんなに憧れてたのか?」

「ええ!だって魔法ってかっこいいじゃない!」

 ん?それだけ?

 今理解した。コイツはバカだ。

「そういえばあなたは何の職業なの?」

「俺は、まだ決めていない。そろそろ決めようと思ってるんだが……」

「ふ~ん。じゃあスキルは何を覚えているの?」

「!!」

「ん?」

「……スキルポイントを振るのを忘れてた」

 するとメラが笑いだす。

「何バカなことをやってるのよ〜。スキルを何も覚えずにクエストをに行くなんてバカじゃないの〜?あーッハッハッハ!」

 脳筋魔法使いのバカにバカと言われたことにすごくムカついたが、今回は俺が忘れてた俺がバカだ。認めるしかない。

 俺はいまからスキルを振るためにモンスーンを取り出す。そしてスキルポイントを見ると前回は2だったのに対して今回は3になっている。つまりゴーレムは、ビックオークよりもランクが低いためもらえるスキルポイントが1少なかったということだ。強いモンスターを討伐すると多くのスキルポイントがもらえるのか。勉強になった。


 何を覚えるか。覚えられるスキルを見ると、簡単な魔法から肉体強化まで、幅広くある。だがスキルポイント3で覚えられるスキルは少ない。その中で俺が今1番必要としているのは……ずばり、回復魔法だ。パーティーがいないため回復してくれる人がいない。戦闘面はまだ余裕そうだが、もしもの時があったとき用に、保険はかけておいたほうがいい。というわけでスキルポイントを3消費して、回復魔法を覚えた。魔法使いよりは回復魔法が少ないがそれでも多少のケガならすぐに治るだろう。

「回復魔法ね、いいじゃない」

 いつの間にか自分の分だけでなく俺の飯まで食っているバカ魔法使いが言った。俺はメラをぶん殴った。

「うぇ〜ん。ごめんなさい……」

 頭にたんこぶができたメラが謝ってくる。

「これは俺の飯だから二度と手を付けるなよ」

 警告する俺を無視して、また注文しようとしている。

「おい、これ以上は俺の財布がもたん。もう何も頼むな」

「えぇ〜。ケチ」

 ケチか。一番高い料理をたくさん奢ってあげるのにケチか。あはは、またぶん殴ってやろうか。

「じゃあさ、代わりに提案があるんだけどさ」

 嫌な予感しかしない。

 そしてその予感は見事当たった。

「私とパーティー組んでよ!あなたとなら、何とかやっていけそうだわ!」

「断る。俺は1人でクエストに挑む」

「チッ!だからそんなに暗いんだよ。陰キャ野郎。」

 急に口調が変わりやがった。しかも舌打ちまでしてきやがる。

「お前みたいなバカ野郎は絶対に仲間にしない。分かったらとっとと帰れ。ちゃんとお金は俺が出すから。」

「嫌よ、私を仲間にしなさい。あとバカって何よ!私はあんたよりもランクが高い魔法使い。メラよ!分かったら早くパーティーを組んで……って何勝手に無視して会計してるのよ!」

 うるさいな、コイツ。


 ギルドを出たあともメラはずっとついてきた。

「パーティーに入れてよ!ていうか入れろ!」

「断る!俺は早く寝床を確保しなきゃならないからとっとと消えろ」

 そう言うと、メラはニヤニヤし始めた。

「あー、寝床がないのか私は広い家を持ってるんだけどなー!1人じゃ満喫できないくらい広いんだけどなー!」

「…………。」

 俺は考える。こいつと仲間になるのは、正直言って嫌だ。だが、仲間になればただで寝床が確保できるのか。

 きっとこの世界の宿はそんなに安くないのだろう。

 なぜそんな気がするのか。それは普通の家よりも豪華そうな見た目の宿ばかりだからだ。

「あ、今ただで家をゲットできるって思ったでしょ。でもね、世の中そんなに甘くないのよ。だがしかーし、私も鬼じゃないわ。今すぐ私を仲間にするのなら、なんと!1泊3000ゼルト!お安いよ〜……って、待って待っておいてかないで!」

 呆れた。こいつはやはりパーティーには要らないな。

「やっぱりただでいいから。ね?お得でしょ?」

「はぁ、そもそも俺の目的は魔王を討伐することだ。その覚悟がお前にはあるのか?」

「もちろんあるわよ!そうなると、私のような魔法使いはパーティーに欲しいんじゃない?」

「お前は対して戦力にならんだろう」

「はぁー?ふざけんじゃないわよ!いくら温厚な私でもこれ以上は我慢出来ないわ!パーティーに入れてくれるまでつきまとうから覚悟しなさい!」

 どこが温厚なのか、と心のなかでツッコんだ。


 どれだけ歩いてもずっとずっと俺についてくる。そしてずっとずっとパーティーに入れろと頼み込んでくる。

 数十分位経っただろうか。俺はもう限界だった。

「…………分かった、分かったから。仲間にすればいいんだろ?パーティー組んでやるからそれ以上つきまとうな」

「ウェーイ!私の勝ちのようね!」

 両手でピースしてくるコイツを今すぐに土の中に埋めたい。

「なら、約束通りただで家に住まわせてもらうぞ」

「ええ、もちろん。さぁ、私についてきなさい!」


 メラの家は確かにデカかった。この町の中ではかなりの豪邸だな。

 玄関を開けると、内装もきれいだった。

「お前がこんなにいい家を持ってるとはな」

「ふふん、私だって良いところがあるのよ!」

「ちなみに、なんでこんないい家を持ってるのにご飯すら食べる金がなかったんだ?」

「そ、それは……その、実はこの家はもらったのよ」

「もらった?」

「ええ、あるクエストの帰り道に馬車がモンスターに襲われてたのよ。それで私がメテオライトで助けたら、その人は今、引っ越し中でこの家は要らないからあげるって言われて……」

「だから私ほんとはお金全然持ってないのよ!」

「なぜそんな話を自慢気に話せるんだ……」

「ちなみに借金もあるわよ!」

……ん?借金?借金ってあの借金か?

 俺の表情で何となく言いたいことが伝わったようで、

「そうよ、あの借金よ。というわけで手伝ってね」

「何をだ?」

「決まってるじゃない!借金返済よ!」

「いやいやなんで俺がお前の借金返済を手伝わなきゃいけないんだ!」

「え?だって仲間じゃない」

 またぶん殴ってやろうかと思ったが、流石に辞めた。

「と、言うわけでこれからよろしくね!……えっと、まだ名前を聞いてなかったわね」

「宮崎境だ。魔王を討伐することが俺の目標だ。嫌いなものはお前だ」

「またまた〜。ツンデレなんだから!」

 結局我慢できなくなり、またメラの頭にはたんこぶができていた。

 こうして、借金まみれのバカ魔法使い、メラが仲間になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ