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この世界で一度だけのパーティーを

※少し残酷な描写があるかも知れません

 目を開けると、そこは草原だった。

 

本当に異世界に来てしまった。半分夢だと思っていたが、まさか現実だったとは──。

 まずは深呼吸をする。そして俺がまずこの世界で何をすればいいのか考える。

 俺がこの世界に来たのは、魔王を倒し、この世界に平和をもたらすため。ならば魔王を倒すためには、色々と準備しなくちゃいけない。ひとまずこういう時は、近くに村や、町があるはずだ。

 幸い、武器はある。ナイフに毒、投げナイフに、……ん? 銃がない。もしや、元の世界で敵と戦ったときに落としたのか?

 はぁ、仕方ない、銃のことはもう忘れて、代わりに投げナイフで戦うか。

 そして俺は町が近くにあることを願って歩き出す──。


 体内時計で十数分だろうか。歩いていると、遠くにたくさん家が並んでいるのが見えた。おそらく町だろう。さらに近づくと、看板に「アルビダイヤ」と書いてある。

 この町は少し古い、いや、この世界が日本よりも昔なのか。家が木で作られていたり、レンガで作られていたりいろいろな家がある。


 町に入ると、いきなり老婆が話しかけてきた。

 「あら、旅の者?」

 「あぁ、ところでこの町には集会所のような場所はあるか?」

 ちゃんと相手が言っている言葉を理解できたし、こっちの声も伝わるようだ。

 こういう世界の町には、絶対に集会所があるはずだ。昔からそういう異世界物語が大好きな仲間がよく熱心に話していたから分かる。あの時は鬱陶しかったが、こんなところで役に立つとは。

 「あるわよ。この広い道をまっすぐ歩いていくと、〝ギルド〟と書かれた看板が見えてくるはずよ」

 俺は老婆に感謝を伝えて、広い道を歩き出す。

 そして老婆の言う通り、ギルドと書かかれた看板があり、すぐ後ろに大きい建物がある。俺はギルドの扉を開いた。


 中に入ると、木製の椅子や、机、カウンターのようなものもあった。

 まだ昼間だというのにたくさん酒を飲んでいる人たちがワイワイ騒いでいる。

 俺は受付の人に、この町について尋ねる。

 受付の人が言うには、ここは新人のハンターや、ハンターになりたいという人と、一般市民が住んでいる町だと言う。俺はハンターという物をよく知らないので、ハンターについても受付の人に聞く。

 要約すると、この世界では、モンスターと、魔族という人間に敵対する生き物が生息しており、そいつらを倒して一般市民を守るのがハンターというものらしい。

 これは、日本での殺しの能力が役立つかもしれない。少しワクワクしてきた。

 「ハンターにはどうやったらなれるんだ?」

 「ハンターは、体力テストを行い、基準値を超えたら誰でもなれますよ」

 「そんな簡単なことでいいのか?なんか、モンスターを討伐してきたらハンターになれる、みたいなのを想像していたんだが……」

 「ええ、むしろハンターでもないのに、いきなりモンスターを討伐してこい、と言ってる方がおかしいと思いませんか?」

 確かにそれもそうだ。

 「その体力テストはどこでを受けれるんだ?」

 「このギルド内でもできますよ。今から挑戦いたしますか?」

 俺は悩む。というのもさっきから水を一滴も飲んでいない。のどが渇いている。

 ここは一度断って何か注文してそれから受けることに決めた。

 どこに座ろうか悩んでいると、さっきから近くの机で飲食をしているハンターらしき男が話しかけてきた。

 「よう、お前ハンターになりたいんだって?どうだ、ハンターになったら俺のパーティーに来ないか?俺達のコンビネーションは抜群だからな!」

 随分と馴れ馴れしい。だが、ハンター同士で争っていたらきっとモンスター討伐などできないだろう。この世界のハンターは基本的に協力型なのだろう。だが、

 「すまないが、今は誰かと組む気はない。ほかを当たってくれ」

 「ええー。まぁ嫌ならいいけどさー。組む気になったらまた声かけてくれよー」

 随分とチンピラっぽい話し方をしてきたが、意外とあっさり帰っていった。そいつを見ていると席につき、仲間らしい男女と喋り始めた。やはりパーティーは組んだほうがいいのだろうか。

 

 そうして空いている席に座って注文しようとメニュー表を見る。よく分からないものばかりだ。とりあえず腹はまだ減っていないので、ドリンクの項目の所に書いてある『グレッグサイダー』という物を頼んでみる。

 しばらくしてグレッグサイダーが運ばれてきたのだが、

「な、なんだこれは?」

 思わず心の声が口に出る。なぜなら、グレッグサイダーは飲む気をなくすような緑色の見た目だった。その緑色は、メロンソーダのような色ではなく、まるで青汁のような色をしていて、シュワシュワ泡が浮いている。

 だが、頼んでしまった手前、どうしょうもない。仕方なく、覚悟を決めて飲む。

 すると、驚くことに意外といける。レモンスカッシュに似た味だ。あの見た目で酸っぱい系なのは予想できなかった。


 喉の渇きを癒した俺は、早速体力テストを受けに行く。

 「ではコチラついてきてください」

 俺は受付の人について行く。裏口のようなところからギルドを出てすぐ後ろの建物に行く。

 「では、これから体力テストを初めます。まずは握力から測ります。これは35キロを超えていたら合格となります」

 俺は測定機に思いっきり右手に力を込める。すると、74キロという数値が出た。続いて左手にも思いっきり力を込める。すると今度は72キロという数値が出る。

 受付の人は驚いた表情をして、

 「ご、合格です……」

 

 「……コ、コホン、で、では次はシャトルランです。体力は戦闘においてすごく大事です。なのでシャトルランの合格基準は85です」

 なるほど。握力が三十に対してシャトルランは85回で合格か、確かに体力だけ合格ラインが高い。

 俺はとにかく走る。しかもこれ、25メートルシャトルランだ。日本では20メートルのシャトルランしかやってこなかったため、走る少し回数が減る。そして、188回という記録で限界が来た。いつもなら200回は行くんだがな。まぁ、いい。

 またしても受付の人は豆鉄砲を食らった鳩のような顔をしている。


 それからも俺はたくさんの種目を受けた。長座体前屈や、反復横跳び、100メートル走などなど。

 そしてそれらすべての種目において合格ラインの2倍以上の記録を叩き出した。

 「や、やばいこの人……」

 受付の人は引いている。

 すべての種目を測り終わり、先ほどのギルドに戻ってきた。そこで、ハンターとしての証の、バッチをもらった。ようやく俺はハンターになれたのだ。


 俺は説明を受ける。

 かなり長い説明だったが、すべて覚えた。要約すると、ハンターはそれぞれランクがあり、F、E、D、C、B、A、S、Xランクまであるらしく、この世界にXランクのハンターは数人しかいないらしい。興味がある。敵ではないが一度手合わせしてみたい。そしてハンターの中にもさまざまな職業がある。ナイフや刀などの刃物の扱いを得意とする剣心や、魔法を得意とする魔法使い、弓矢の名手、アーチャーなどだ。


 俺は今ハンターになったばかりなのでFランクの、職業なしと言われた。職業は今後決めていけばいい。


 そしてそれと同様にモンスターと魔族にもランクがあるらしく、F、E、D、C、B、A、S、までがモンスター。魔族は全員がXランクらしい。魔族はモンスターと違い、人間に似ている見た目をしていて、魔王直属の〝四天王〟というらしい。つまりこの世に魔族は魔王を含めて五人しかいないということだ。

 ハンターはより強いモンスター達を倒して、どんどんレベルを上げてランクを上げていく。それがこの世界のルールだ。


 そしてスマホのような〝モンスーン〟という物を渡された。これは、自分が倒したモンスター、魔族を自動で記録するらしい。それ以外にも、自分ランクや、レベル、手に入れた経験値なども記録してくれる万能アイテム。経験値というのはモンスターや魔族を倒した際に受け取れる、目には見えないものだ。経験値を一定量手に入れると、レベルアップし、自分のステータスが上がり、それと同時にスキルを習得するために必要なスキルポイントという物をゲットできる。スキルは強い技ほど必要とする経験値が多くなるそうだ。


 早速、俺はクエストに行こうと、受付の隣にあるクエストボードという物に目を向ける。そこにはたくさんの依頼が貼られている。それらは別にモンスターを討伐を依頼しているものだけではなく、家の掃除を手伝ってほしいとか、一緒に野菜を収穫してほしい、など色々な依頼が貼られている。

 だが、俺は気づいた。どんな依頼でも報酬の金はゲットできる。だが、クエストを受けるのにも金がかかるというのだ。俺の所持金はほぼない。今ここでクエストを受けて、もし失敗したりでもしたら、次にクエストを受ける金が無い。ビビっているわけではないが、ここは慎重に、クエストを受けるかどうか悩んだほうがいいだろう。

 考えているうちに俺の頭に一つの案がよぎる。先ほどパーティー勧誘に来た男に協力してもらえばいい。一度だけパーティーを組むということだ。そうすればきっとクエストを受けるくらいの金は払ってくれるだろう。そして俺はただでクエストを受け、モンスターとの戦い方、何より、安全にクエストを受けれる、などいい事だらけだ。

 早速俺は先程の男に話しかけて、提案をした。するとすぐに事情を理解してくれて、喜んで男をパーティーに入れてくれた。そこでパーティーの全員に自己紹介をする。

 「宮崎境だ。よろしく。今さっきハンターになったばかりだがナイフの扱いは得意だ。戦闘においては自信がある」

 俺が自己紹介すると、右から順に他のみんなも自己紹介を始める。

 「僕は、Dランクの騎士のシュンだ。よろしく」

 黒髪のメガネをかけた騎士、シュンに、

 「私はDランクの魔法使いのサラ。一番得意な魔法は水魔法。よろしくね」

 水色の少し長い髪の魔法使い、サラ、そして、

 「俺は、Cランクの剣心のキリム。このパーティーのリーダーをやっている。よろしくなキョウ!」

 俺に最初に話しかけてきたキリム。先程は酔っぱらっていただけなのか、酔いが冷めてチンピラみたいな喋り方は変わっていた。

 やはり職業持ちの仲間はいたほうがよさそうか。特に魔法使いだ。魔法は魔法使いじゃなくても使えるそうだが、あまり強力な魔法は使えない。たくさん魔法を覚えている魔法使いならば、汎用性が高い。信頼できる仲間になりそうだ。

 いや、あんまり信用しすぎると、現世での俺と同じようになりそうだ。

 「じゃあ早速、どのクエストを受けるか決めるか!」

 「『おーー!』」

 リーダーの声に対して元気に返している。いいパーティーだな。これは……、意外といいかもしれない。


 どのくらいのクエストが丁度いいのか、少し話し合って、結局Dランクのビックオークの討伐に決めた。

 ほんとはCランクでも問題はないそうだが、なにせ俺が初めての受けるクエストなので、少し簡単な難易度にしようという案が出た。俺としてはCランクでも構わないが、みんなの優しさを踏み躙りたくはない。

 そして俺は、パーティーのみんなと初めてのクエストに出かけた。


 町を出て、とにかく歩く。その道中も、仲良くしゃべっていた。特に俺に関する質問が多かった。

 「キョウはどこから来たんだ?」とか、「本当にパーティーを組むのは今回だけなの?もっといればいいのに」とか、たくさん聞かれた。俺は答えられる範囲のものはすべて答える。

 俺がパーティーを組むのは今回だけ、と言うとみんながっかりそうな表情を浮かべた。

 そんなに俺にいてほしいのか? ていうか俺はそこまで集団行動が得意なわけでもない。故に、一人でクリアできそうなクエストをすべて終わらせ、どうしても一人では攻略できなさそうだったら、パーティーを組むつもりだ。

 そんなこんなで、ビックオークが出るという森に来た。基本的にモンスターはこういうダンジョンにいるそうだ。


森の中はたくさんの木の陰のせいで日があまり当たらなく、薄暗い。俺はとにかくついていく。今回はパーティーの皆に任せておけば何とかなりそうだからだ。俺は不意を突かれないように、気配を探りながら歩く。これは殺し屋の特殊能力みたいなものだ。殺気を出しているものは何となく分かる。


 森の深くまで行くと、そこには三メートルほどの巨大な、猪と人間が混じったようなモンスターが後ろを向いていた。これがビックオークか。

 その時ビックオークが振り向いた。そしてすぐに突進してきた。俺達は全員サイドステップで避けた。だがビックオークは止まらずに奥の茂みまで突っ走った。すぐさま全員で追う。するとビックオークが茂みから、長い槍を取り出して、構えた。

 「ウォーターカッター!」

 サラが杖の先から水の刃のようなものを飛ばす。だがビックオークはそれを軽く避け、またもや突っ込んでくる。その時、

 「うぉぉぉぉ!」

 剣を持ち、盾を構えながらシュンが突っ込む。そしてビックオークが槍を振り下ろす。それをシュンが盾で受け、カウンターを飛ばす。それがオークに傷を負わせた。だがそれではビックオークの巨体は止まらない。そのまま盾を蹴り飛ばす。

「くっ!」

 盾がない状態はまずい。シュンが苦悶の表情を浮かべる。そして再度槍で突こうとする。しかし、すでにキリムがオークのサイドに回っていた。そのまま脇腹を剣で裂く。痛そうな声をあげるビックオークの足元に水たまりが発生していた。サラが唱えた魔法の一つだろう。それはまるで透明な沼のように、ビックオークの足を止める。そしてキリムが容赦なく袈裟斬りを落とす。ついにビックオークが倒れた。

 「『よし!』」

 パーティー全員がハイタッチをしている。今回俺はただ見ていただけだった。このパーティーは連携が上手い。そしてサラがビックオークの足元の魔法を解除した……。

 その時ビックオークが立ち上がった。そのまま槍で三人を突きにかかる。三人は帰ろうとしていたためビックオークに背を向けていた。

 「「「あ、」」」

 全員が絶望の声を出す。

 だがビックオークの槍が三人を貫くことはなかった。

 なぜなら俺が、ビックオークの手首を切断したからだ。手首が切れると、手の神経も同時に切れる。故に力が入らなくなり、自然と槍が地面に落ちる。だが、それでもまだ動こうとしている。そのため心臓があると思われる場所を突いた。人型近いモンスターの臓器の場所は人間と同じらしく、ビックオークは死んだ。

 「ふぅ、」

 「「「あ、ありがとう!」」」」

 三人が俺に寄ってくる。

 「キョウがいなかったら死んでいた。本当にありがとう!」

 俺は感謝を受け取った。

 初めてのクエスト、少しばかり緊張したが、なんとかなりそうだ。モンスーンの画面を見ると、Dランクのモンスターの項目の上の方に〝ビックオーク 討伐数1〟と書かれていた。

 なるほど。こうやって倒したモンスターは記録されていくのか。便利だ。

 モンスーンを閉じようとホーム画面に戻ったら、画面のアプリのような所に通知が来ていた。アプリのアイコンは〝レベル〟という文字が書かれているだけ。開くと、レベルが1つ上がりました。現在、レベル2と書かれていた。その隣にスキルポイント2と書かれている。きっとビックオークを倒してレベルが1つ上がったのだろう。後でスキルポイントを振ろうと思い、そろそろ帰ろうと、三人に提案する。

 そして俺達は森を後にした──。



暇な時とかにたくさん読んでいただけると幸いです!

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