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新たな敵?

 目の前には明らかに只者ではないフードを被った男と、既に討伐されているサタンジャック。

 サタンジャックを討伐したということはこいつもハンターなのだろうが、なぜか俺の本能がこいつは危険だと言っている。

 そもそも周りに人影は見当たらない。詰まりこいつは一人でここに来て、サタンジャックを討伐したということだ。

 何者だ? こいつ。


 するとメラが明るい笑顔を浮かべた。

「な〜んだ!他のハンターがいたのね!なら帰りましょ〜」

「待て」

 ひとまず踵を返して歩き出したメラを止めた。

 俺たちの声を聞き、男がこちらに振り返る。


「「!!」」

 俺とメラが驚きの表情を浮かべる。

 なぜならこいつは、般若の面をつけていたからだ。

「ディザスター!?」

 メラが声を上げた瞬間、男がこちらに襲いかかってきた。

 俺は一瞬でメラを後ろに押し、男のナイフによる斬撃を防いだ。

 この躊躇いのなさ、人間との戦闘に慣れてるな。

 すると男が今度は後ろへ飛んだ。そして俺に向けて手のひらを向けた。

「ブリザーダー!!」

 男の手のひらから、氷の氷柱が何本も飛んできた。

「ロックウォール」

 俺は自身の目の前に壁を作り出す。

 だが、男の攻撃が壁に当たった瞬間、ヒビが入った。

 俺は即座に横に回避した。

 次の瞬間、氷柱が壁を貫通した。

 攻撃力が高く、詠唱も短い。明らかに雑魚とは違う。

「お前何者だ」

 俺は率直に男に聞いた。だが、一切口を開かない。

 そうなると……、無理やり吐かせるしかないか。

「ファイヤーチャージ」

 俺はナイフに炎をまとわせた。これで攻撃力も上がる。

 だが、この技は時間経過で勝手に効果が消えてしまう。つまり短期決戦ということだ。

 俺が突っ込もうとしたその時。

「イグニッションバーン!!」

 メラが俺の身長の5倍はありそうな炎の塊を飛ばした。

 辺りが一瞬眩くなる。

 目を開けると、辺りの雪が消し飛んでいた。

 そこにはさっきのフードの男が、ボロボロになって膝をついていた。体中がボロボロなのに、何故か般若の面だけは傷一つなかった。

「も、もう……無理」

 だが、メラはその場に倒れ込んだ。

 一発に全ての魔力を詰め込みやがって。その分相手のダメージは甚大だが。


「さぁ、いろいろと吐いてもらうぞ」

 俺がゆっくりと近づく。

 だが、フードの男が立ち上がってきた。やはり耐久力もそこらの雑魚とは比べ物にならないな。

 あのメラの1撃は俺でも当たったら余裕で死ぬだろう。そんな威力の魔法を食らっても動けるのか。

「抵抗するなら仕方ない」

 俺が炎をまとわせたナイフで腕を突き刺しにかかる。

 殺しはしない。死にそうになったら、回復魔法を使って生かす。目的は情報を吐いてもらうことだ。

 男がナイフを構えて迎撃に出る。

 俺と男のナイフが火花を散らしてぶつかり合う。

 やはり手練だな。俺もそこそこ強くなってきたと思っていたが、世界は広い。それは元の世界でも、この世界でも変わらないようだ。

 まぁ、そんな事は知っている。俺はもっと強くならなくちゃいけない。


 カブラとの戦いで学んだ。やはりこの世界は攻撃魔法をもっと覚えたほうがいいことを。

 俺の今の攻撃方法はほとんどナイフだ。だが、それだけでは足りないんだ。


「グラビティオーブ!!」

 俺は斬り合いの中、左手を前に突き出し魔法を唱える。

 グラビティオーブは、使用者以外の周りの物や人を紫色のオーブに引き寄せる魔法だ。

 まだあまり強い力で引き寄せる事は出来ないが、これから成長していくにつれ強化されていくはずだ。

 俺と斬り合っていた男だけがオーブに引っ張られる。

 生き物は重力には逆らえない。たとえそれがあまり強い力ではなくとも。

 男がグラビティオーブに引き寄せられないように、踏ん張る。

 だが、俺の攻撃への意識が薄くなっている。これなら、行ける!!

 俺は目の前の男を袈裟に切り裂いた。

「ぐぁぁああぁあ!!」

 死なないように手加減はしたが、ちょいとやりすぎたか。

「ヒール」

 俺は男が死なないくらいに回復させた。


 俺は男に容赦もなく圧をかける。

「お前は何でハンターの俺に攻撃してくるんだ」

「…………」

 やはり答えない、か。

 俺がナイフで拷問し始めようか悩んでいると、フラフラとメラが歩いてきた。

「あなたはディザスターの一員ですよね?」

 そしてこんなことを聞いた。

 そういえばさっきディザスターとか何とか言っていたな。

 それでも男は答えない。体の疲労も相まって息づかいが荒い。

 少し待っているとようやく喋る気になったのかゆっくりと立ち上がった。

 そして怪しい笑みを浮かべた。

「スノートルネード!!」

 巨大な雪の竜巻を召喚した。

 だが、それ自体に攻撃力はないのか、竜巻に飲まれても視界がなくなるだけで、ダメージは食らってない。


 十数秒後、竜巻が晴れた頃、そこに男の姿はなかった。

 ずっと黙っていたのは魔力が回復するのを待っていたからか。やられたな。

 結局俺たちは、あの男について分からなかった上にサタンジャックも討伐できなかった。

 俺はレベル上げに来たというのに随分と無駄な時間を過ごしてしまった。


 ギルドに帰り、キララと篠宮を呼び出し全員で飯を食べていた。

 そこで今日のことを共有する。

「メラ、お前が言っていたディザスターとは何だ?」

 メラはディザスターについて少しだけ知っていた。

「ディザスターっていうのはね、どこから来たのか分からない人たちが集まる巨大な組織のことよ」

「どこから来たのか分からない人たちの組織?」

 全くもって分からんが、あいつもその組織に所属していたということか?

 メラが続ける。

「あいつらは、自分たちの目的を達成するためなら手段を選ばない外道たちよ。だからさっき私たちを仕留めようとした。しかも全員あの鬼のような仮面をつけているのよ」

 鬼のような仮面? 般若を知らないのか。

 ……おいちょっと待てよ。

 俺が篠宮を見ると、俺が何を言おうとしたのか理解したように、頷いた。


 とりあえず、メラの話を聞き続ける。

「分からんな。俺たちを潰すメリットはなんだ?」

「そんなことを言われても私だって分からないわよ。ディザスターじゃないし」

 まぁ、それもそうだな。とにかく俺たちが狙われたのは偶然の可能性もあるということか。


「あ、そういえば王都から手紙が返ってきたって、ギルドの人に渡されたよ〜」

 酒を飲みすぎて顔が真っ赤に染まっている篠宮が突然こんな事を言った。

 王都ということは、あのジコというハンターの件だろうな。

「なんて書いてあった?」

「今日王都を出るから、明日の午後くらいに着くって。ギルドで待ってろって書かれてたよ〜」

 良かった来てくれるのか。

 俺と安心したが一番安心していたのはキララだ。表情が一気に和らいだ。まるで別人のように。


「さて、もう帰るぞ」

「えぇ〜!もう少し飲ませて〜」

 ……1人で飲んで、1人で帰ってこい。

「はぁ〜い」

 まだ飲み続けている篠宮以外の会計を済ませ俺たちは宿に帰った。


 ディザスター。何やら嫌な予感がするな。厄介事には巻き込まれないようにしないとな──。


 ちなみに、篠宮は次の日の朝10時に、酔いつぶれてずっと寝ていたところをギルドの職員が運んできた。

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