対ヴァンパイア作戦
篠宮は自分の宿に帰り、メラはご飯を食べに行き、キララ眠り、俺は1人で考えていた。
「(なぜキララが四天王に?)」
あいつ容姿はかなりいいほうだが、それ以上に頭がおかしい変なやつだ。正直、狙われる理由がない。しかも嫁にする気だと? あいつは一応俺の仲間だ。俺には守ってやる義理がある。
明後日の朝出発することになったので、一応今のうちに鍛錬をしておく。これからは厳しい道のりになるだろうな。
「まさかあの白い髪の女がXランクのハンターだとはな」
明日は準備を色々としなければならないため、鍛錬が終わったらすぐに、軽くシャワーを浴びてベッドで眠った。
翌日、準備品を買うために街の店を回っていた。その時、街中にアナウンスが流れた。
『緊急です!緊急です!直ちに街の住民は避難し、街にいるハンターは全員ギルドへ集合してください!繰り返します…………』
住民たちが歩いている俺の横を何度も通り過ぎる。
一体何事だ? と思い、一応ハンターなのでギルドへと向かった。買い物なら急げば後で何とかなるはずだ。
ギルドへ行くと既にたくさんのハンターがざわざわしていた。数十人はいるな。だがおそらくは集まっていないだけでもっとたくさんのハンターがいるのだろう。その中で受付の方にギルドの職員がメガホンの様なものを持っていた。
「みなさん突然集まっていただきありがとうございます。集まっていただいた理由を簡単に説明させていただきます」
と、説明が始まった。
「今回みなさんに集まっていただいた理由は、街のそばにあるダンジョンに、Sランクモンスター、〝ヴァンパイア〟が住み着いたという通報がありました」
その言葉にギルドのハンターは大騒ぎ。もはや何を言っているのか分からないほど慌てて泣いているやつもいる。全く根性無しだな。
とはいえSランクモンスターか。ただでさえ俺たちのパーティーでもAランクモンスターには勝てないと言うのに……。
「神様!仏様!どうかお許しを!!」
「アーメン!」
なぜか元の世界の祈りを捧げているやつもいるが今はヴァンパイアだ。
俺はあることを職員に質問する。
「なぁ、ヴァンパイアは俺たちに危害を加えるのか?」
「は、はい。血を吸い尽くされて干からびたような死体がいくつも発見されています」
まじか。この忙しい時に。
ていうか篠宮はどこいった? キララはメラが見ていれば安心だと思うのだが。
すると、後ろから肩をトントンと叩かれた。
「やっほ」
「相変わらず酔っ払ってるな」
「もちろんだよ〜ん!」
こいつは鬱陶しいが戦力にはなる。そして俺ももちろん戦力になる。クエストをあまりこなしていないだけで、Bランクのモンスターだって一人で勝てるくらいには強くなっているのだ。だが、それは信じてもらえずに今はCランクのハンターをやっている。
「ではこれから、この中で特に戦力になりそうなハンターを10人ほど集め作戦会議をします。他のハンターはここで待機していてください」
大勢のハンターの中から数名手を挙げながら、職員の方に歩いていく。もちろん篠宮も、そして俺も。
だが、
「ええっと……、もう少し人数を減らせないでしょうか。意見がたくさん出すぎても話が進みませんので、話がまとまり次第全員に共有しますので!」
と、頭を下げる職員。それを聞き数名いなくなった。それでもまだ……13人いる。
「……仕方ないのでこの人数で作戦会議を初めま」
「いや、待て」
職員の声を無視しある男が図々しく俺の目の前に歩いてきた。
「お前、今まで顔すら見たことがない。俺は強いハンターならたくさん見てきたのにだ」
「……何が言いたい?」
「お前のランクを教えろ。そして戦力になることを証明しろ!」
「Cランクハンターだ」
流石に信じられなかったのか目の前の男以外にも笑われる。
「Cランクハンターがこの街の10位以内の実力者だって、そりゃあねぇだろ!わっはッはッは!」
次の瞬間、俺は男の頬を投げナイフで少しだけ裂く。
あまりの速さに投げナイフが視認できなかったのか、頬を顔を青ざめながら撫でている。
「今のも避けられないんじゃ戦力にはならん」
「いやいや、今のは私レベルでないと外せないよ」
ニコニコしながら篠宮が下から目線で話しかけてくる。
「これくらいは余裕だろ。俺にもまだ上がある」
「やっぱり君が日本で何をしてたのか気になってしょうがないよ」
「話すつもりは……」
「わ、分かった分かった。話さなくていいから、今は作戦会議をしよう」
もう何を言っても無駄なのをこいつも理解したのだろう。
「だな。じゃあそこの頬を撫でながらビビっている奴に言う。お前はこの作戦会議から抜けろ」
「は、はい」
俺が睨むとすぐにヒィッ! と走って何処かへ行った。ちょっとやりすぎたか。
『パンパン!!』
突如手を叩く音が響く。
音の方を見ると偉そうなおっさんが立っていた。
「ではこれより作戦会議を始める。まずはヴァンパイアをどう討伐するのかだが、何か案がある人はいるかね?」
誰も口を開かない。そりゃそうだ。きっとこの街のレベルの人たちはAランクモンスターにすらボッコボコにされるのだろう。多分俺もだが。
「何か案を出してください」
分かってるよジジイ。それ以上急かさないでくれジジイ。
数分経っても誰も発言しようとしないので俺が口を開く。
「まず、ヴァンパイアは討伐しなくていいと思うぞ」
「「!?」」
ざわざわとしながらハンター達の視線が俺へ向かう。
「なぜだね?きっとここで倒さなければ被害がもっと増えるぞ」
「確かにそれはそうだが、最後まで話を聞いてくれ。まず俺達にヴァンパイアは倒せない。Aランクモンスターならまだしも、Sランクなんて話にならん」
「それはそうかもしれんが……」
偉そう職員が首をかしげる。
「ならどうするつもりだ? 話にならん相手をどう止める?」
「分からん。それは後で考える」
「後でって……」
「状況を冷静に見ろ。追い返しさえすればいい。今は準備をする時間がない。一度追い返してしまえばもう一度来るまで時間が空く。その隙に対策をもっとゆっくり練ればいい」
「なるほど。何か作戦は考えているのかね?」
「今考えているところだ」
Sランクモンスターか。Sランクモンスターすら相手にしたことのない俺達がどう止める。
思考を巡らせている最中にさっきアナウンスをしていた職員が慌てて言う。
「大変です!ヴァンパイアがこちらに向かい出したとの報告が!」
まずいな。もう攻めてきたのか。思ってたよりも早い。ならば、
「おい!この中でヴァンパイアについて何か知っているやつはいないか!」
こんなことならモンスター図鑑を全部暗記しておくべきだった。すると本を持った少し背丈の低い女子が手をゆっくりと挙げた。
「少しだけなら、分かります」
「そうか、教えてくれ」
「は、はい。ヴァンパイアは接近戦はSランクモンスターの中でも上位に位置するほどの強さだそうです。そしてコウモリを操る遠距離攻撃も大変危険らしいです。」
まさに、元の世界でも知られているヴァンパイアだな。とはいえこの情報はでかい。
「助かった。おい!もう作戦を考えている時間はない。各々が自分にできることをしろ!」
「「おお!」」
全員が息をそろえて声を上げる。
「この街を守るぞー!」
「ヴァンパイアがなんだ!ぶっ飛ばしてやる!」
流石はハンターだな。やる気は十分なようだ。
「で、結局どうするの?」
こんな状況でもゆっくり聞いてくる篠宮に作戦を伝える。
「まずヴァンパイアのコウモリの攻撃は他のハンターに任せる。そしたら、俺が接近戦で挑む」
「えぇ?それはさすがに無謀だって〜」
「そこはお前のサポートに任せるぞ。〝一応〟サポートが得意な僧侶だろ?」
「一応って失礼だな。私はこう見えて立派な僧侶なんです〜」
「はいはい、じゃあ行くぞ」
「任せな〜」
街の正門に着くと奥から禍々しいオーラのようなものをまとった人影がやってくる。多分、というか絶対あいつがヴァンパイアだろう。羽のようなものがあるのに歩いてくるのか。
「久しぶりに使うな」
俺は腰からオーシャンエッジではなく、元の世界から持ち込んだナイフを取り出す。まだ扱いきれてないオーシャンエッジだとおそらく勝てないと思ったからだ。
そしてヴァンパイアと俺たちの距離が30メートルくらいになった時だろうか。
ふとヴァンパイアが足を止める。そして息遣いが荒く少し変な匂いが漂ってくる。
『貴様ら、何のつもりだ?』
その圧は尋常じゃない。少し汗が出てくる。俺達はこんなこと今から戦うのか。
俺がヴァンパイアの質問に答える。
「この街は譲れないもんでな。お前には壊させない」
『そうか。ならば滅ぼすのみ』
やつが少し笑う。不気味な笑みだな。
そしてここで俺はこの世界の厳しさを知り、魔王討伐までの道のりの長さを思い知ることになる──。
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