第八十三話: 夜明け前、残された者の重さ
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
日本に到着し、腰山から事前に聞いた腰山の住所へ向かった。腰山の家に着くと出迎えてくれた。
腰山:「バタバタしていて、返信できなくてごめんな。」
長谷川:「こちらこそ、中々連絡できなくて申し訳ない。何か手伝えることはあるか?」
腰山:「もう、納骨まで終わった。」
長谷川:「あいつはどうだったんだ?」
腰山:「俺があいつと久々にあったのは、それこそ去年坂本先生が入院された時、お見舞いに行った時に偶然会った。坂本先生は俺たちが卒業した後に教育委員会から呼び出しがかかって、定年後は校長をやっていたんだ。たまに、久保田は学芸員の立場から、深見は獣医の立場から協力していたらしい。」
長谷川:「そうか、それで」
腰山:「空き巣犯に家族が惨殺されたときは憔悴しきってた。今回のように自殺を図っていたが、たまたま、その時に俺が発見して、何とか一命を留めた。そのあとから、毎日久保田の家に行ったり、たまに気分転換に旅行に行ったりしたよ。俺が用事が入ってこない
ときに図ったらしい。」
長谷川:「施設に入るとか、専門医に相談はしなかったのか?」
腰山:「春頃に一か月医者にかかったよ。でも、退院の許可がすぐに下りたんだ。」
腰山:「それから、あいつは今度は微熱を出してたよ。本人は、これは願掛けだからといって、バザーの準備を入念にしてたけど、それで体調崩していたら世話ねえよな。
準備した甲斐があってかバザーが終わった時は少々上機嫌だったと思う。その後、空き巣が捕まっていた時は、同級生の俺が見てる手前照れ隠しかと思っていた。そのあと、坂本先生が亡くなった。」
長谷川:「そうか。」
腰山:「……正直に言うとな、俺はまだ怒ってる。」
長谷川:「誰にだ?」
腰山:「あいつに、だよ。」
長谷川:「当然だ。」
腰山:「俺がいない隙を選んだ。」
長谷川:「それは、信頼していたからだ。」
腰山:「そんな慰め、今はいらねえ。」
長谷川:「……すまない。」
腰山:「いや、悪いのは俺だ。止められなかった。」
長谷川:「止める、という言葉は簡単だが、現実ではほとんど成立しない。」
腰山:「研究みたいに言うなよ。」
長谷川:「すまない。癖だ。」
腰山:「でもさ……最後まで、あいつは俺に弱音を吐かなかった。」
長谷川:「吐いたら、戻れなくなると分かっていたんだろう。」
腰山:「強がりすぎだよ。」
長谷川:「強さではない。覚悟だ。」
腰山:「覚悟で死なれたら、残された方はどうすりゃいい。」
長谷川:「生きて、引き受けるしかない。」
腰山:「重すぎるだろ。」
長谷川:「だから、人は誰かと分け合う。」
腰山:「……俺一人じゃ、抱えきれねえよ。」
長谷川:「今日は一人じゃない。」
腰山:「それ、今だけだろ。」
長谷川:「それでもいい。今、話していることが事実だ。」
腰山:「……あいつ、最期に何考えてたと思う?」
長谷川:「自分の人生に、区切りをつけただけだ。」
腰山:「俺たちのことは?」
長谷川:「考えていたからこそ、言わなかった。」
腰山:「……卑怯だな。」
長谷川:「ああ。とても。」
腰山:「それでも、嫌いになれねえ。」
こうして、一夜明けた。
いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。
重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。
彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。
一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。
次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
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