第八十話:現代の介錯人
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
悲しみは残る。
後悔も、怒りも、喪失感も残る。
だがそれは――
**生き残った者が、生き続ける限り抱える感情**だ。
「誰かが歩くのをやめた理由よりも、
置いていかれた悲しみだけを理由に断罪するなら、
この世に“降ろしていい荷物”なんて永遠になくなる」
彼は静かに結論づけた。
「限界を超えた者が荷物を降ろした。
それを見て悲しむ者がいる。
――その両方が真実だ」
「だが、真実が二つあるからといって、
どちらかが罪になるわけじゃない」
「私はあんたたち自殺請負人は、生きる選択肢を奪う存在ではない。
荷物を一身に引き受けるために、そこに立つ存在だと思っている。」
あかしはその言葉を聞いて表情を変えて言う。
「…そっか…ありがとうございました。なんか吹っ切れました。」
その表情をみた、久保田は続ける。
「そうか、なら良かった。」
「これ。食うか?」
「なんなんですか、それ?」
「俺の、楽しかった思い出だ。」
「???」
「…そうかじゃあ、私の学生時代の話しでも聞くか。」
「いや、それは…」
「あ、じゃあ、お店のダイヅの由来を教えてください。」
「ダイヅという名前は魔目を射るという意味のゲン担ぎだ。速く犯人を捕まえて欲しくてね。ダイヅに出店したのは、自分のエンディングデザイン(終活)の一つだったんだ。空き巣が捕まるまでの数か月で気分転換にと旅行に連れて行ってくれた。空き巣でほとんど取られてしまったが、残った物や昔の本などの骨董品を売っていたんだ。」
「それから数か月後に犯人たちは捕まったが、何も解決しなかったよ。犯人を捕まえれば、きっと気持ちが落ち着くと思っていたが、そういう訳でもなく、残ったのは虚しさだけだった。あんだけ、犯人に恨みがあったのに、そして、逮捕から数日後に恩師が亡くなった連絡を受けた。そこで俺の中で何かが外れてしまったんだ。」
請負人
「準備できましたよ、久保田さん。」
久保田
「そうか。代金は足りるか?」
請負人:「ええ、充分でした。君は、おわるまで待っても良いですよ。」
あかし「いや、俺も見届ける現代の介錯人であり、請負人の責任として。」
久保田:「ありがとう。」
自室にて、私は目を閉じた。請負人たちは、久保田の脈を確認し、
自分たちの痕跡を消し部屋を出た。
遺体が発見されたのは、数日後のことだった。
近隣の住民から、異臭がするとの報告で発覚した。
連絡を受けた腰山は、すぐに現場に駆け付けた。
「貴方は?」
玄関先で制止するように声をかけたのは、玄関先で声をかけたのは、若い警察官だった。
腰山は一瞬ためらい、それから低く名乗る。
「……古い友人です。私がこの数日間だけは、違う用事で打ち合わせをしていたんです。
その間にも連絡が取れなくて心配していたんです。」
警察官は視線を落としたまま短く頷いた。
「現在、現場検証中です。関係者の方は中には入れません」
ドアの隙間から、微かに空気が漏れてくる。
鼻を刺す、甘ったるい腐臭。
腰山は無意識に息を止めていた。
廊下には白い防護服を着た鑑識が数名、黙々と動いている。
カメラのシャッター音、ゴム手袋の擦れる音。
それらが異様に大きく聞こえた。
「亡くなってから、数日は経っていると思われます」
警察官は事務的な口調で言った。
慰めるでもなく、突き放すでもない、ただの事実。
警察官は頷き、視線を室内に向けたまま言った。
いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。
重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。
彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。
一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。
次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
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