第七十九話: 降ろされた荷物
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
「あの時は気分が上がって沢山話してしまって悪かったな。…昔の知り合いがあの時のお前さんと同じような張り詰めた表情をしていたんだ。そいつは都市伝説の本を渡したら笑ったんだ。
だから、お前さんをそいつと重ねてしまって、つい話過ぎてしまった。
話している内に、なんだか、楽しくも切なくなってしまった。…でも、よかったな。」
あかしは語る。
「いや、貴重なお話をありがとうございました。」
続けて、久保田が語る。
「まさか、自殺請負人が本当にいるとはな。今でも信じられないよ。興味本位で聞くが助手のあんちゃんは今どんな気分なんだ?」
「俺、分かんないんです。死ぬことが悪なのかが、自殺が悪なのかが」
「…急にどうした??」
「急にこんな話をされても困りますよね。」
「いや...善悪なんて時代によって形が変わるもの。ただ一つ確かなことは他者をどうこうするのはいけないということだけ、でも自分の命くらい、自分でどうにかしても良いでしょ。」
あかしは詳細を話す。
「ある子が非業の死を遂げたんです。その子は純粋で凄くまじめだった。その子は私にずっと聞いてたんです。死ぬことはダメなのかと、なぜ生きなければならないのかと、最後にその子は笑顔でした。」
久保田は答える。
「そうか、それは心中お察しする。私から言わせてみれば、生まれたことを選べなかったのなら、せめて終わり方くらいは、自分で決めてもいい。と今は思っている。」
「その子について私はよく知らない、だが、その子がそうしたかったのなら、最後の権利をどうするのか、それは人それぞれでしょ?」
「残された者が悲しむというのなら、それは彼ら自身の感情の話であって、
死を選んだ本人へ背負わせるべき罪ではない」
「皆それぞれ、背中に荷物を背負って歩いている。
ある人の荷物は、もう立ち上がれないほど重くなってしまった。
その人は荷物を降ろし、歩くのをやめた。
周囲は言う。
「一緒に歩いてほしかった」「置いていかれて悲しい」と。
でも、
他人の悲しみまで含めた荷物を背負える人間はいない。
限界を超えたところで降ろした行為を罪とは呼べるか?
「昔は、介錯人という職業があって、」
そう前置きして、彼は少しだけ言葉を選んだ。
「切腹という行為は、本人が責任を引き受けるための儀式だった。
だが、苦しみだけは一人で背負わせないために、
**最後の一太刀を入れる役目**が必要とされた」
介錯人は、命を奪うためにいたのではない。
逃げるためでも、罰するためでもない。
**限界に達した人間が、これ以上苦しまないようにするため**の存在だった。
「それでも、残された者は悲しんだだろう。
介錯人がいようが、いまいがな」
彼は続ける。
「だが、その悲しみを理由にして
“限界を迎えた者”や“介錯した者”を
罪人と呼ぶことはなかった」
悲しみは残る。
後悔も、怒りも、喪失感も残る。
だがそれは――
**生き残った者が、生き続ける限り抱える感情**だ。
「誰かが歩くのをやめた理由よりも、
置いていかれた悲しみだけを理由に断罪するなら、
この世に“降ろしていい荷物”なんて永遠になくなる」
いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。
重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。
彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。
一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。
次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
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