第七十八話: 夜明け前、老人は静かに請う
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
請負人を乗せた車は久保田家の近くに停め、久保田の家まで歩いた。
請負人は携帯を手に取り、久保田へ連絡する。
「久保田さん、まもなく、ご自宅に到着します。ご準備を」と
数分後、久保田が出迎えてくれた。請負人が口を開く。
「どうも、あなたですね。久保田さん。」
久保田は不思議そうに我々を見つめている。
「あ、どうも…?えっと…どちらさまですか?家は先日、全てを取られたばかりだ。金目のものなど、ないぞ。」
携帯を見せる請負人
「久保田さん、覚えていませんか?こちらのご依頼。」
「あ…、申し訳ない。昔のことは鮮明に覚えているのに最近の記憶は、あまり覚えてなくて、とりあえず、家に入ってください。」
久保田は座る。
請負人が口を開く。
「改めまして、私は自殺請負人です。隣にいるのは助手です。先日、私の携帯に貴方からのご依頼がありました。そこには、こう書かれています。安らかに家族のもとに、いきたいと。そのお気持ちに変わりはないですか?」
久保田は手で首を擦りながら語る。
「…ッ、ようやくか…頼む。」
「では、ご依頼通り、縊死でよろしいですか?」
「勿論だ。代金は金庫の中で多分足りると思う。パスワードは1142だから」
「分かりました。」
請負人は、袋から、かみかみ豆を取り出す。
「そして、こちらですね。中々探すのに苦労しました。なにせ、生産が終了している商品でしたので、しかし、貴方の門出を祝うためになんとか探し出しました。」
仮面の下から、あかしは久保田さんをじっくりみつめて話す。
「あ、貴方は…あの時のおじいさんですよね。」
久保田は難しい顔しながら、あかしの方を見る。
請負人は、あかしをみて言う。
「何やら、訳アリのようですね。私はここで準備をしていますから、用事を済ませてください。」
夜明け前、縁側で二人は語る。
あかしは口を開く。
「あの、バザーで都市伝説を沢山教えてくれた、おじいさんですよね。」
久保田は思い出そうとしている。
「…バザー…そういえば、あったな。」
あかしは続ける。
「あまり覚えていないですか?」
「いや…そうだな。」
あかしは続ける。
「確か、お店の名前は“ダイヅ”です。ヅはツに点々です。」
「ダイヅ…そういえば。」
久保田は部屋の奥から看板を取り出す。
「そうか、あの時の青年なのか?」
あかしは少し戸惑い言う。
「まあいいか。あの時はすまんな。
「あの時は気分が上がって沢山話してしまって悪かったな。…昔の知り合いがあの時のお前さんと同じような張り詰めた表情をしていたんだ。そいつは都市伝説の本を渡したら笑ったんだ。
だから、お前さんをそいつと重ねてしまって、つい話過ぎてしまった。
話している内に、なんだか、楽しくも切なくなってしまった。…でも、よかったな。」
いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。
重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。
彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。
一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。
次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
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