第七十三話:特別な日
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
腰山:「渡り廊下のほうもいいぞ。今、陽が入り始めててさ。影が長く伸びて綺麗だったよ。」
久保田:「そういうところだけやたら観察してるよな。腰山って。」
腰山:「別にいいだろ。気づいただけだよ。」
久保田:「いや、お前は昔から妙にそういうの見てる。季節とか空とか。」
腰山は照れくさそうにそっぽを向く。
久保田:「……じゃ、せっかくだし全部まわるか。校内ツアー。」
腰山:「お、いいね。高校最後の記念巡りってやつだな。」
長谷川:「そういう言い方するとちょっとしんみりするね。」
3人は笑いながら教室を出る。
廊下は静かで、昼の光の名残が床に淡く広がっていた。
久保田は歩きながら、ふと前を向いて言った。
腰山:「……なんかさ。こうやって歩くだけでも、ちょっと特別に思えてくるよな。」
久保田:「そりゃそうだろ。あと何回こんなふうに歩けんだって話だし。」
長谷川:「だからこそ、ちゃんと覚えておきましょうね。こういう時間って、あとから思い出すと案外一番残るんですよ。」
腰山:「……お前ってほんと、たまーに名言っぽいこと言うよな。」
長谷川:「“たまーに”は余計です!」
腰山が吹き出し、久保田も笑う。
ゆっくりと、3人の歩幅が自然とそろっていく。
校舎の光と影の中を、懐かしさと名残惜しさが溶けるように進んでいく。
――時間が過ぎるのなんて早い。
気づけば次のチャイムも、もっと先の節目もすぐ来てしまうのだろう。
でも今は、ただこの道を、3人で歩いていた。
3人はまず中庭へ向かう。
腰山:「ここで、部活の帰りにいつも駄菓子を買って食べたよな。」
久保田:「懐かしいな。あの頃は小さなことで盛り上がれたんだ。」
長谷川:「春の風も心地いいですね。こうして歩くと、当時の匂いや音まで思い出す感じ。」
渡り廊下に差し込む陽の光を浴びながら歩く。
腰山:「……影が長く伸びるこの時間、なんか特別だな。」
久保田:「そういうところだけやたら観察してるよな、腰山って。」
腰山:「別にいいだろ。気づいただけだよ。」
次に図書室の前を通ると、長谷川が少し遠慮がちに口を開く。
長谷川:「ここで夜遅くまで勉強して、時々寝落ちしたのも思い出しますね。」
久保田:「図書室のあの静けさ、落ち着くんだよな。」
腰山:「俺は寝落ちする奴を見張ってたこともあったけどな(笑)」
3人は校舎のあちこちで笑いながら思い出話を交わす。
久保田:「あと何回、こうやって歩けるんだろうな。」
長谷川:「だからこそ、今日全部回っておかないと。」
腰山:「ま、最後くらい楽しまないと損だな。」
そして、3年1組に戻った。腰山が尋ねる。
「そういえばさ、深見さんとは最近どうなん?」
腰山がニヤつきながら肘でつついてくる。
久保田:「は?」
「ど、どうって……別に。普通。」
久保田は視線をそらした。
「いやいや、その照れ方は普通じゃないの?」
長谷川も面白がって続ける。
「うるさいって。向こうは進路で忙しいんだよ。俺なんか気にしてる暇ないって。」
久保田が言うと、二人は同時に「はいはい」と笑った。
その軽さが心地よくて、久保田自身もつい表情がゆるむ。
腰山:「…その表情、なんかあったのか?よければ聞かせろよ。力になるから。」
長谷川:「…」
久保田:「じつはさ、俺、受験が終わったら告白しようと思っていたんだ。でも、できる雰囲気じゃなかった。彼女になんて言葉をかけたら良いか分からなくて。」
…:「そうか、分からないところがあるのか、なら補習が必要なようだな。」
坂本:「お前たち遅くなってすまない。そして、ありがとう、俺を待っててくれて」
久保田・長谷川・腰山:「坂本先生!」
坂本:「よし、じゃあ始めようぜ。いつもとは少し違う、いつも通りの補習を」
坂本先生の落ち着いた笑みの中、3人はいつもとは少し違う、でも変わらない教室での時間を過ごし始めた。
いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。
重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。
彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。
一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。
次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
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次回更新日:12月07日 10時,14時,18時,22時(社会情勢によって変動。)




