第七話:私が消えたいと思った日
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
鮫谷さんから感謝された。発表が終わり、社員さんからの感想を聞く時間になったが、私たちの班は最後だった。そのため時間が押してしまい、本来は社員5人全員から感想をもらい、他の新入社員からも一言もらう予定だった。しかし結果は、社員1人からの感想だけで終わった。
そのとき、木下が挙手した。
「その結論は先程の班から聞きました。そして、その意見は面白くありません。あなたたちは何をやっていたんですか?寝ていたり、さぼってわけのわからないものを検索していたりするから、このざまなんじゃない?」
声は怒りに満ちていた。周囲は圧に押され、誰も反論できない。この時点で私は気づくべきだった――この会社は根本から腐っている、と。そして木下は続けた。
「今年の新入社員はレベルが低いですね。どうなっているんですか?一体?」
オリエンテーションの結果、上層部は急遽、私たちに仮雇用の形をとらせた。この期間中、「ペンを一本木下に売る」をテーマにプレゼン資料を作成することになった。講義や講習を受け、私は安心していた。今度は班ではなく、私個人の成果だ。変なクレームは付けられない――そう信じていた。
講義や講習では真面目に学び、積極的に質問をした。寝ている他の学生たちを横目に、私は講師や社員の話をまとめ、毎日資料を修正した。社員たちは、私の熱意と具体性、分かりやすさを褒めてくれた。そのおかげで、自信を胸に、今回の資料作成で最も時間をかけたのは私だと断言できるようになった。
しかし、木下は事前に資料を見た際、全体の前で冷やかすように言った。
「なんか、沢山作っているようですが、何がしたいんですか?」
それでも、私はめげずに発表練習を毎日行った。木下の過去の私への当たりから見える地雷を踏みに行くような気分で。
そして発表当日。鰻山と蛇島の発表を見て、素人目にも準備不足だと感じた。文字が小さく、画面は絵だけ、提出予定の台本は空欄。発表も抑揚がなく、AIに読ませたようだった。しかし、審査員たちはその点に触れず、「文字色にこだわりを感じる」「台本に捕らわれない心意気が良い」と褒めた。
私は確信した。大丈夫、緊張せずに、木下の地雷も踏みに行こう。
発表は練習通り完璧だった。声量も資料の明確さも、社員に絶賛されるほどだった。ところが、審査員5人は厳しい表情で木下だけが言った。
「事前にコメントしたとおり、何がしたいんですか?」
その瞬間から、罵倒の嵐が始まった。歩き方、声のトーン、立ち姿――何でも文句を言う。周囲の新入社員も、誰も木下に逆らえない。労基に相談しても、巧妙にかわされる木下の手腕は見事だったけれど、私は知っていた。ここまで真剣に、全力で取り組んだのは自分だけだと。心の奥で、静かな誇りが湧いていた。
そして、成績発表の日がやってきた。結果は――私以外、全員が合格だった。胸の奥が冷たく沈む。
勇気を振り絞って木下に理由を尋ねると、彼は一言だけ放った。
「君には覚悟がない。点数で言ったら0点でも甘いくらいだ。不愉快だ、消えてくれ。」
言い放すと、何事もなかったかのように去っていった。私はその場にぽつんと取り残され、呼び出しを受ける。そこで、たった今、正式に首を宣告されたのだった。
それでも私は、最後に礼を尽くしたかった。木下に頭を下げ、声を震わせながら言った。
「最後に、手伝っていただいた皆さんに、報告だけさせてください。」
しかし木下は冷たく遮った。
「ダメだ。何故ならお前はもう部外者だからだ。とっと去れ。」
私は、報告の機会すら奪われたまま、静かにその場を後にした。
そんな時だった。頭の中に「消えてなくなりたい」と思ったのは
読んでくださり、ありがとうございます。
重いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はまだ続いていきます。
彼らの心の揺れ動きや選択を、これからも見守っていただけたら嬉しいです。
一歩ずつ前に進む姿を一緒に感じていただければ幸いです。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
次回更新日:2025年8月24日(日) 10時(社会情勢によって変動。)