第六十七話:三人の帰り道
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
長谷川は苦笑しながら続ける。
「俺は難しいかもしれないけど国信(国際信州学院大学)に行くために勉強してる。」
「ま、まだ結果はわからないけどな」
久保田:「大丈夫だよ。このまま自信をもって、長谷川は努力してるし、伸びるタイプだと思う。」
長谷川:「……そう思う?」
腰山:「うん。少なくとも、俺たちはそう信じてる」
坂本:「よし、じゃ再開するぞ。」
二時間後、補習は無事終了した。
坂本先生が答案を確認しながら言う。
「久保田……お前、かなり良くなってるじゃないか。よし、この調子でいけば次の小テストは合格圏内だ」
「ほ、本当ですか!?」
「嘘ついて誰が得するんだ。自信持て」
その言葉よりも早く、後ろから肩を叩かれた。
腰山:「やったな久保田!」
坂本:「さすがだな腰山、次の定期試験は合格ラインだ。昨日質問にきた問題も完璧だ。」
坂本:「自学でここまでとは、すごいな。長谷川、お前もこの成績なら国信には余裕の合格ラインだ。」
坂本:「お前たちおつかれ。これ、先生が最近はまっている、かみかみ豆だ。今日は頑張ったからな。お前たちも食べるか?」
久保田・腰山・長谷川:「いつも頑張っています!」
久保田:「食べたいです。」
腰山:「欲しいです。」
長谷川:「ください。」
久保田:「このあと、先生久しぶりにトランプしません?」
坂本:「それは、お前たちの進路が確定したらの約束だろ?」
補習が終わったころには、空はすっかり赤みを帯びていた。
正面玄関を出ると、長谷川が伸びをしながら言った。
「今日、めちゃくちゃ疲れたな……。でもまあ、やらないよりはマシか。」
「坂本先生、容赦なかったな。夏前だからって気合い入れすぎだろ」
腰山がぼやくと、久保田は笑って肩をすくめた。
「まあ、あの人なりの優しさってことで。」
三人は並んで坂を下りはじめた。風が少し湿っていて、夏が近いことを感じさせる。
「まあ……俺のせいでもあるしな。」
「そうそう。だからほら、今日おごってくれるんだろ?」
腰山がすかさず食いついてくる。
「そうだよ。俺、アイス希望ね。」
長谷川もちゃっかり便乗する。
久保田は一瞬「え?」と止まりかけてから、思い出したように言った。
「いや、アイスとかじゃなくて……『参考書』をおごるって言っただろ俺。」
「それは違うだろ!!!」
腰山と長谷川の声がきれいに揃った。
「なんで疲れたあとに参考書なんだよ!」
「ご褒美の概念どこ行ったんだよ!」
「勉強しろってことだよ。ほら受験生なんだから。」
久保田がとぼけた顔をすると、二人は完全に呆れたようにため息をついた。
「はあ……だから深見さんに好かれるんだよ。」
腰山がぼそっと言う。
「は?急に何だよ」
久保田が耳まで赤くなる。
「いや、真面目じゃん。そういうとこ、女子は好きそうじゃね?」
長谷川がニヤつく。
「うるさいって!」
そのやり取りに、夏前の熱気が少しだけ和らいだ気がした。
しばらく歩くと、腰山がふいに言った。
「でもよ、三人でこうやって帰るの、久しぶりだな。」
「たしかに。受験だからってみんなバラバラだったしな。」
長谷川が空を見上げる。
久保田も、同じ夕焼けを見ながら小さく頷いた。
「じゃあさ――今日だけはアイス奢ってやるよ。その代わり、後日ちゃんと参考書コーナー行くぞ。」
「結局参考書かよ!!!」
三人の笑い声が、少し蒸し暑い夕風に溶けていった。
いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。
重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。
彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。
一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。
次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
次回更新日:11月23日 18時,22時(社会情勢によって変動。)




