第六十四話:ページの向こうにいたあの日
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
私の名前は久保田 達也、もう71歳の老いぼれだ。趣味は読書だが、高校生の頃は文字を読むのが苦手で、長い文章を目にするとすぐに頭が痛くなるほどだった。しかし、そんな私と正反対に、妻は小説を愛してやまなかった。物語の中に生きる人物たちの喜びや悲しみを、文字を通して鮮明に感じ取れる人だった。
高校一年生の終わり、全校集会で表彰式が行われた。その年に大会で優勝した生徒や、校内で人を助けた生徒、そして年間で最も多く本を読んだ生徒などが体育館に集められ、拍手と共に表彰状を手にしていく式だった。私はその時、初めて妻の姿を見た。彼女は一番多く本を読んだ生徒として表彰されており、その誇らしげな笑顔はまるで光を放つようだった。初めて見た瞬間、胸がぎゅっと締め付けられ、言葉にならない感情が心を支配した。帰宅しても、彼女の姿は鮮明に脳裏に焼き付いており、夜眠るまで頭から離れることはなかった。
それから、私は妻と話題を合わせるために、図書館で彼女が好みそうな本を片っ端から借りて読み漁った。当時は何の知識もなく、ただページをめくることしかできなかったが、少しずつ物語の世界に引き込まれていった。おかげで、高校二年生の時には、年間で最も多く本を借りた生徒として表彰されるまでになった。自分でも驚くほど、文字と物語の面白さに魅了されていたのだ。
その翌年、当時の担任であった坂本先生から図書委員への推薦を受けた。正直言えば、クラブ活動や委員会にはあまり乗り気ではなかった。面倒だと思ったし、友達と遊ぶ時間のほうが大切だと思っていたので、一度は断った。しかし、高校三年生のクラス替えで、偶然にも妻と同じクラスになったのだ。彼女は図書委員として活動しており、図書委員は人気がないため、再び坂本先生から推薦の話を受けることになった。何かの縁だと思い、今回は受けることにした。
友達からはこう言われる。
腰山:「久保田、おまえ、いつからそんな本が好きになったんだ?」
長谷川:「そうだ。雷にでも打たれたか?」
久保田:「バーか、そんなわけないだろ。ちょっと社会に出る前に知見を広めようとしているだけだよ。」
腰山:「この後どうだ。また、ゲーセン行かねえか?」
久保田:「悪い、今日委員会の当番なんだ。そのあともテスト対策しないといけないし」
腰山:「サボっちまえよ。一回くらい良いだろ?」
久保田:「んなわけいくかよ。」
長谷川:「なんだよ、クラス替えがあってから、つれないね。」
久保田:「ただ、本が好きなだけだよ。」
図書委員として過ごす日々は、思った以上に充実していた。初めの頃は、ぎこちない会話が続いた。どの本を読んだか、どの作家が好きか。小さなことから会話は始まり、少しずつ距離が縮まっていった。ある日、彼女が「最近、戦国時代の本を読んでるの」と話しかけてきた。私は正直、戦国武将のことはほとんど知らなかったが、「それなら一緒に読んでみようかな」と答えた。すると、彼女は少し驚いた顔をしてほほ笑んだ。それだけで、胸の奥が温かくなったのを覚えている。
いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。
重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。
彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。
一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。
次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
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次回更新日:11月23日 22時(社会情勢によって変動。)
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何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。




