表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自殺請負人ー依頼は、命の終わらせ方ー  作者: マイライト
街を見下ろす父

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/65

第四十三話:街を見下ろす父

【注意事項】

本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。

読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。

心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。


※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。

真っ黒な夜の中、ひときわ目立つ白いオフィスビルがそびえている。その姿は、まるで街を見張る監視塔のようだった。窓の奥で無機質な蛍光灯が静かに瞬いている。


私の名前は――三浦誠みうら まこと

手には、上司から返された資料と、「やり直し」と赤字で書かれたメモ。

頭の奥はずっと痛く、胃も焼けるように熱い。体のあちこちも張りつめている。


帰宅すれば、妻と小学生の娘が眠っている。

家のローンは三十五年。ボーナス払いもある。

妻はパートを辞め、娘の学費を貯めるのが精一杯だ。


「会社を辞めればいい」と友人に言われたこともある。

だが、辞めればすべてが崩れる。

世間の視線、家族の生活、そして“自分の居場所”。


私は気分転換にビルの屋上に立った。

「……ちょっとだけ、気分転換だ」


無意識に一歩を踏み出す。小さな段差に足をかけたまま、景色に見入っていた。

気づけば、フェンスの外――ほんの数十センチの幅に立っていた。


風がビルの隙間を抜け、服の裾を揺らす。

視界に広がる街の光が、まるで自分を押し出すようにざわめいている。


つい今までの疲れや苛立ちを忘れ、ただ景色を眺めたかっただけだった。

だが、この数秒の“好奇心”は悪い気がしなかった。

「このまま、楽になれたら……ダメだ……まだだ」


下を見ると、青年が必死な表情で何かを呼びかけている。声は聞こえない。


「……」


私は青年を見て、フェンスの中に戻った。そしてしばらくしてから降りてきた。

片手には、缶ジュースを持っている。


「さっきはありがとう」

「あ、どうも。それより、少し休んでも」

「ダメだ。娘のためにも、まだ働かないと。稼がないと」


「そうですか。今日はこの後どうするんですか?」

「会社に戻るよ。まだ、仕事が残っている。気分転換に外に出ただけだから」


俺の顔を見るなり、彼は言った。

「大丈夫です。ラストスパートだから」

「そうじゃなくて」

「あ、もう大丈夫ですよ」


そして、私は会社に戻った。


その後、街の夜道を歩いて家に向かう。時計はすでに午前三時を指していた。

静まり返った住宅街。遠くで犬の鳴き声が響く。


鍵を開け、寝静まった家に足を踏み入れる。

リビングの電気は控えめに点け、妻と娘の寝顔を確かめる。

深く息を吐き、ソファに腰を下ろすと、疲れと緊張が一気に押し寄せた。


ふとキッチンを見ると、片付けきれなかった洗い物や、明日分の弁当箱が残っている。

娘の学校のプリントも散らばり、妻が急いで家事をこなしている姿が目に浮かぶ。


手元にある缶ジュースを飲みながら、深くため息をつく。


「もう少し休めばいいのに……」


小さな声で自分に言い聞かせる。

でも、三時間後には再び起きなければならない。朝六時、まだ薄暗い中で家を出て、会社へ向かうのだ。


出勤前に娘の寝顔をもう一度確認する。

小さな手が掛け布団に隠れ、微かに口をもぐもぐ動かす。

安心と同時に胸が痛む。ほんの少しだけ、安らぎが心を満たす。


しかし、休息は長く続かない。

わずか三時間後の六時、私は再びスーツに袖を通し、出社のため家を出た。

いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。


重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。


彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。


一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。


次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

次回更新日:10月12日 18時,22時(社会情勢によって変動。)

次回予告:・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ