第二十一話:分からなかった思い
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
そこで私は、少し間を置いて自分の過去を口にした。
「いじめってさ、結局、相手の反応を見て面白がってるだけだと私は思う。……私も中学のとき、髪をピンクに染めててね、それでいじめられた。でも、私は無反応で通した。それに、先生にきっちり告げた。そしたら、それっきり何も言われなくなった」
小島ちゃんは目を瞬いた。
私は照れくさそうに笑う。
「私の場合は本当に小さなことだったから、今では笑い話にできる。でも……君の痛みは比べものにならない。だからこそ言うんだ。もし“行きたい”って気持ちがほんの少しでもあるなら、行った方がいい。後悔しないためにね。――経験者は語るってやつ」
小島ちゃんははっとして私を見つめる。
「……お姉ちゃんも、昔……?」
私は軽く肩をすくめ、わずかに笑った。
「そう。不登校だったんだ。理由は大したことじゃなかったけど……同じクラスに不登校の子がいてね、その子を見て……羨ましくなっちゃったの」
「結局ね、卒業式にも行きづらくなっちゃってね。行けていないの、知り合いの連絡先も誰一人知らない。だから私は知り合いの作り方どころか、友達の作り方も知らない」
「友達の作り方なら、あのお兄ちゃんがいっぱいいたはず。だよ」
「そうだね」
二人は思わず顔を見合わせ、ふっと小さな笑い声がもれる。
――そのとき、チャイムが響いた。
15時:
「あ、あいつが戻ってきた。真田、どうだった?」
私は真田に気づき、声をかける。
「大丈夫か?」
「なんでもないよ。それより助かった。恩に着るよ」
「案外、悪くなかったよ」
「そうか。小島さんも大丈夫だったか?」
小島ちゃんが言う。
「はい。貴重なお話をたくさん聞けました」
「何か話したのか?」
「学生時代のことを少しね」
「そうか。俺も今朝、学生時代の夢を見たんだ。いやな夢だったよ」
「本当に思ってる?」
小島ちゃんの方を見ると、満腹あるいは疲れもあって、満足そうにすやすやと眠っていた。
「じゃあ、また今度にするか」
真田がそう言った。
数時間後、時計の針は18時を指していた。
「冬香、起きた?」
目が覚めると、お母さんがいた。
「お兄ちゃんたちは?」
「もう、帰られたわ。全く、アンタが死んだら私も死ぬからね。田中さんから連絡を受けて早引きしてきたわ」
母は相変わらずだ。
「大丈夫だった。あのお兄ちゃんたちに何もされなかった?」
「あ、そうだ。それと冬香に伝言。『頑張れよって、分からなくなったら、いつでも教えるって』」
私は笑顔で返した。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんとお兄ちゃんたちと勉強していた。分からなかったところをたくさん教えてもらえたよ」
読んでくださり、ありがとうございます。
重いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はまだ続いていきます。
彼らの心の揺れ動きや選択を、これからも見守っていただけたら嬉しいです。
一歩ずつ前に進む姿を一緒に感じていただければ幸いです。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
次回更新日:9月7日(日)10時、14時、18時、22時 4話更新。 (社会情勢によって変更)
次回予告:バザー編スタートします。話数が多いです。
あの人物がさらっと中盤で再登場します。




