第二十話:重なる思い
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
小島ちゃんは息を吸い込み、ためらいがちに語り始めた。
「私ね、学校では……授業を受けて、休み時間はいつも図書室で本を読んでた。小学校の頃は仲良くしてた子も、みんな変わっちゃって……気づいたら、いじめる側といじめられる側に分かれてしまってた。私はそれを見て怖くなって、誰にも話しかけられなくなった。いじめられてる子を助けたかったけど……それもできなかった。自分も同じ目に遭うのが怖くて」
小さく唇を噛むと、言葉を続ける。
「放課後はイラスト部に入って、絵を描いてた。絵は上手じゃないけど、色を塗るのが好きで、ちょっと変わった色を選んだりして……でも、そんな個性は認められなかった。『変だ』って笑われて、いじめの理由にされた」
一瞬ためらい、小島ちゃんはさらに声を落とす。
「家でも……自由はなかった。描いた絵は必ず母に見せなきゃいけなくて。『やめて』って言ったけど、『親なんだから当然でしょ』って。そればかり。……本当はただ監視したいだけなんだって、分かってた」
「絵を見せるたびに、『この絵は何?どういう意味?』って問い詰められる。……学校に行けなくなったら、今度はWi-Fiを切られて。『教育だ』って。私は……居場所がどこにもなかった」
小さな声が震え、涙がにじむ。
「だから……何度も死のうと思った。でも、痛くなく死ぬ方法が分からなくて。結局……最後の手段に出たのに」
私は静かに頷いた。
「……私はね、無理に生きろとは言わない。その人の痛みは、その人にしか分からないから。でも、もし今少しでも楽しいことがあったり、これからの楽しみを見つけられる可能性があるなら……そのために生きる価値はあると思う。だって、死ぬことはいつでもできるから。特に大人になればね」
小島ちゃんは顔を上げる。
「先生に親のことを話したら、『親御さんを大切に』って言われた。親はそう思ってないのに……。学校に行ったほうがいいのかな」
私は小さく笑って、肩をすくめた。
「先生もいろいろだよ。とんちんかんなことを言う人もいれば、クズもいるし、ちゃんと向き合ってくれる先生もいる。でもね、学校ならまだ巻き込める人がたくさんいる。声を上げれば、必ず誰かが気づいて力になってくれる。……社会に出たら、そうはいかない。面倒ごとを避ける人ばかりで、関係を切られることの方が多い。私はそういうのを、嫌ってほど見てきた」
読んでくださり、ありがとうございます。
重いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はまだ続いていきます。
彼らの心の揺れ動きや選択を、これからも見守っていただけたら嬉しいです。
一歩ずつ前に進む姿を一緒に感じていただければ幸いです。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
次回更新日:2025年8月31日(日) 22時(社会情勢によって変動。)
次回予告:色々あるよね。




