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自殺請負人ー依頼は、命の終わらせ方ー  作者: マイライト
迷える少女

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19/65

第十九話:頼もしい助っ人

【注意事項】


本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。


読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。


心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。


※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。

私は目を細め、首をかしげる。

「どうして怒らなきゃいけないの? 怒ったら何か変わる? 消えたいと思う人には、それぞれ事情がある。だから私は、あなたが話したいと思うまで事情は聞かない」


「じゃあ……ずっと聞けなくてもいいの?」


「そりゃ、できるなら聞きたいよ。でも、もし事情を聞いたところで私にどうこうできるなら、もうとっくに行動してるはずだしね」


小島ちゃんはきょとんと私を見た。その率直さに、かすかな安心がにじむ。私は少し考え込んだあと、ぱんと手を打った。


「ぐぅー。朝食べてないからお腹減ったなあ……よし、オムライス作ろう。ね、手伝って?」

「オムライス?」小島ちゃんが首をかしげる。

「そう。私、料理はからっきしでさ。だから助けてもらえない?」


私が苦笑混じりに言うと、小島ちゃんは一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐに小さく笑った。

「……ふふ、じゃあ、私が教えてあげます」

「おっ、頼りになる!」


二人は並んで台所に立った。


玉ねぎを切るとき、私は目を押さえて「い、痛っ……涙出てきた!」と大げさに騒ぎ、小島ちゃんが思わず吹き出す。

「だから言ったじゃないですか、包丁はこうやって持たないと」

「はーい先生。……お、ほんとだ、さっきより切りやすい!」


自然と「先生」と呼ばれた少女の顔は、ほんの少し誇らしげだった。


フライパンの中で玉ねぎと鶏肉がジュウッと音を立てる。

私が慌てて木べらを動かすと、小島ちゃんが隣から覗き込む。

「強火すぎです。もう少し弱くして」

「え、そんな細かいの? すごいなあ」

「料理本で読んだだけです」


照れくさそうに答えるその声には、どこか楽しさが混じっていた。


やがて卵を焼く段になると、私は緊張した面持ちでフライパンを傾ける。

「ひっくり返すとき、どうするんだっけ?」

「勢いよく、一気に!」

「……えいっ!」


べちゃり、と失敗。二人は顔を見合わせ、同時に笑い出した。

「見た? これ、スクランブルエッグだな」

「でも美味しそうですよ」


出来上がったオムライスを二人でテーブルに運び、ケチャップで小島ちゃんが小さく絵を描いた。

「ほら、ハート」

「わっ、可愛いじゃん。センスあるな」

「子どもっぽいですよね……」

「いいの、こういうのが一番おいしそうに見えるんだから」


二人でスプーンを持ち、同時に口へ運ぶ。

「あ……思ったより美味しい」私が目を丸くする。

小島ちゃんも小さく笑い、「ですね」と頷いた。


食後、並んで皿を洗いながら、私は何気なく言った。

「ありがとね、手伝ってくれて」

「……こちらこそ、なんか久しぶりに笑いました」


その表情はどこかやわらいでいた。


やがて食器を拭き終える頃、少女がぽつりと口を開いた。

「川端のお姉ちゃん……もし良かったら、話を聞いてくれる?」


私は手を止め、真剣な眼差しで少女を見た。

「もちろん。こんな私でよければ」


読んでくださり、ありがとうございます。








重いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はまだ続いていきます。




彼らの心の揺れ動きや選択を、これからも見守っていただけたら嬉しいです。




一歩ずつ前に進む姿を一緒に感じていただければ幸いです。








次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。




次回更新日:2025年8月31日(日) 20時

次回予告:・・・

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