第十八話:ジャーナリスト 川端 千代の急な一日
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
「あー疲れた、今日の取材も大変だったー!」でも、これで記事かけるぞ。
私の名前は川端 千代。ジャーナリストで、今は裏の情報から表のニュースまで、すべての情報を網羅し記事にして売っている。
連日の取材と執筆作業でへとへとだった私は、打ち上げと称して昨夜、ジャーナリストの知り合いの安村さんと一杯やった。明日は待ちに待ったオフの日。
何をしようか考えながら眠りについた翌日、10時ごろに着信音で目が覚める。
――――
真田:「川端、すまない。一つ頼めるか?」
川端:「なに、治。せっかくの休暇なのに」
真田:「今、小島さんという少女が自殺しないよう見ているんだ。その役目を変わってほしい。俺は緊急の招集がある。だからマンションの1412号室に来てほしい。夕方までには戻る。頼む、千代」
川端:「…分かった。すぐ行く」
真田:「小島さんから受け取った鍵は郵便受けに入れておく。すまないな」
ラジオからは軽快な音楽とニュース。
『今日の運勢、第三位ふたご座。誰かを助けると良いことがあるかも』
「助けるねえ……」
30分後、私は到着した。鍵を持って部屋に入ると、小島ちゃんは机に突っ伏して寝ていた。
私は彼女の部屋を見回す。机の上にはノートが積まれ、棚には読みかけの小説。ベランダの方はカーテンが風に揺れ、さっきの緊張がまだ残っているようだった。
「勉強か、真面目だねー。私はガキの頃、勉強なんかほとんどやらなかったなー」
小島ちゃんがゆっくりと目を開ける。
「……ごめん、起こしちゃった?」
寝ぼけ眼でこちらを見る少女に、私は柔らかな笑みを浮かべた。
「いえ、大丈夫です。……あの、お姉ちゃんは誰? お兄ちゃんの友達?」
「私は川端千代。あのお兄ちゃんの代わりに、今日はあなたと一緒にいる人。そうね……お兄ちゃんとは、友達ってところかな。あんたは?」
「私は小島 冬香。1412号室に住んでいる中学2年生です」
少女の目には、まだ警戒と戸惑いが揺れている。私は気取らずに続けた。
「宿題してたの?」
「はい」
小島ちゃんは答えながら、何か言いかけて口を閉ざす。その沈黙を埋めるように、私はリモコンを手に取り、テレビを点けた。
ニュースのアナウンサーが淡々と読み上げる声が部屋に流れる。
――「ただいま入ってきた情報によりますと、紫林町で強盗事件が発生した模様。犯人は昨年の強盗事件にも関与しており、現在の動機は不明ですが、過去に容疑者は『自分の人生にどうでも良くなった』と語っていました。」
小島ちゃんの視線が画面から私へ移る。そして意を決したように口を開いた。
「……怒らないの?」
読んでくださり、ありがとうございます。
重いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はまだ続いていきます。
彼らの心の揺れ動きや選択を、これからも見守っていただけたら嬉しいです。
一歩ずつ前に進む姿を一緒に感じていただければ幸いです。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
次回更新日:2025年8月31日(日) 18時
次回予告:貴方は同じ立場ならどうしますか?




