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サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜  作者: 野谷 海
第2部 新学期

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番外編 【BENTO】




 小浦舞は料理が出来ない。でも大好きな青嶋将に良いところを見せたくて、体育祭の日にお弁当を作ってあげると、つい流れで言ってしまったのだ。その場にいた後藤姫華はもちろんため息を漏らしていた。


「どうしよう姫、勢いであんなこと言っちゃった……」


「なんで舞はいつも後先考えずに暴走しちゃうのかしら……」


「姫も、恋したら分かるよ……」


「どうせ私は恋したことありませんよ」


「あ、姫いま拗ねた?」


「拗ねてません」


「助けて姫エモン……」


「ポケットマネーを出してお弁当を買ってくれば解決するわよ」


「そんなのつまんないよ。どうせなら手作りで喜んで貰いたいし……」


「要するに、料理を教えろってことね?」


「話が早くて助かります」



 

 こうして姫華によるお弁当講座が始まった。ただし姫華も料理が得意という訳ではない。母親と二人暮らしで家事をする機会が多い為、舞よりは出来る程度の実力である。

 

「じゃあまずはお弁当箱を決めましょう」


「それならコレって決めてるの!」

豪華なおせちが入っていそうな三段のお重を取り出す舞。


「少し、大きすぎないかしら……?」


「でも3人で食べればきっと大丈夫だよ!」


「まぁそういう事にしておきましょうか……」


「青嶋くん玉子焼きは甘い派かな、しょっぱい派かな?」


「以前、彼の家に泊まった時、朝食は食べなかったの?」


「あ、食べた! 甘かった!」


「じゃあ玉子焼きは砂糖派ね」


「でもでも、体育祭だから汗かいてしょっぱいのが欲しくなってるかも!」

 

「じゃあせっかくだし、2種類作っちゃいましょうか」


「そうだね、スペースはいっぱいあるし」


「他に青嶋君の好物はある?」


「うーん。なんだろ……姫は知らない?」


「この前……ファミレスで唐揚げ定食を食べていたわ」


「じゃあ鶏の唐揚げもマストだね!」


「一番下の段はおにぎりにするとして、具は何がいいかしら……?」


「梅干しとか昆布とか? 渋すぎかな?」


「でもまだ気温も高めだし、あまり傷みやすい具にするのは危険だわ。それでいきましょう」


「はい、先生!」


「じゃああとはその他のおかずだけど、唐揚げと玉子焼きで一段埋めたとしても、あと一段はどうしましょうか……」


「もっと彩りが欲しくなるよね。野菜もとらなきゃだし、プチトマトとブロッコリーなんてどうかな?」


「いいわね。茹でて切るだけだから簡単だわ」


「じゃあ残りはあたしと姫の好物を一品ずつ入れちゃおうよ!」


「分かったわ」


 

 こうしてお弁当の中身が決まり、当日の朝5時に集合した2人はエプロンに身を包んだ。

 

「ねえ姫、玉子焼きのお砂糖ってこのくらい?」

おたまに山のように盛られた砂糖を見て絶句する姫華。


「舞、おたまは砂糖を計る道具じゃないわ……そっちのスプーンみたいなやつを使って」

 

「こっちね、これを10杯くらい?」


「1杯よ。カスタードクリームでもそんなに入れないわ……」


 舞は玉子焼きを何度も失敗したが、6回目でようやく綺麗に巻けた。塩味を姫華にバトンタッチすると器用に巻き上げる手つきを食い入るように見つめた。


「さすが姫、慣れてるね」


「舞もこのくらいすぐ慣れるわよ」


「うん。今度から練習する」


「じゃあ次は鶏の唐揚げね。私も揚げ物は初めての挑戦だわ」


「レシピはいっぱい調べたし、頑張ろう姫!」

両手を握りしめる舞は、自分と親友を鼓舞している。


「じゃあ昨日下味をつけておいた鶏肉に衣をつけましょう。その間に私は油を温めるわ」


 鶏肉に衣をまぶしながら、舞は小さく呟いた。

「喜んでくれるといいなぁ……」


「きっと喜んでくれるわ……舞がこんなに頑張ったんだもの」


「姫と一緒に作れて良かった……」


 そう語った舞の表情を見て、姫華も同じことを思った。

 

「……まだ完成してないわよ?」



 パチパチと音を立てる油の中を覗き込む姫華と、ストップウォッチを握りしめる舞。

「姫、時間だよ!」


「はいっ!」


 見事な連係プレーで唐揚げを油から取り出すと、見た目はおいしそうな揚げ上がりだった。2つに割って味見をする。

「美味し~い……」

「ホント、成功ね」


 続々と唐揚げを揚げていき仕込んだ分を全て揚げきると、2人は一休みを挟んだ。

「じゃあ後はあたしたちの好物だね。姫は何にしたの?」


「私はいいから、残りは舞の好物で埋めて?」


「え……?」


「どうしたの?」


「あたしもそう言おうと思って、何も用意してない……」


「フフフ……」

「ハハハ……」


 やはり2人は、親友だった。


「どうするのー? スペース余っちゃうよー」

 

「おにぎりを予定より多くして埋めちゃいましょうか?」


「そうしよっか」



 体育祭でこのお弁当を食べられた将と解は、本当に幸せ者である。誰かが作ってくれたお弁当の数だけ、自分の知らないストーリーがあるということを、私たちは忘れてはいけない。

 

 

ここまで読んで頂きありがとうございます。

もし少しでも、おもしろい、続きが気になる、と思って頂けましたら、ブックマークやコメントなど頂けるととても励みになります。

今後とも『サンスクミ』を宜しくお願いします。

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