第14.5話 恋のから騒ぎ。
暗い部屋の中でベッドに寝そべる愛里那と、その下で来客用の布団にくるまる舞は、今日初めて会ったとは思えないほど、盛り上がっていた。
「じゃあ舞ちゃんはさぁ、アイツのどこが良かったの?」
「優しいところ……」
「ウチと真逆だね」
「ホントだね、ふふ」
「なんであんなに人のことばっか考えられるんだろ。きっと心はMなんだよ」
「実際はSだったの?」
「ありゃ、失言だったね……ごめん」
「いいよ。それも含めて青嶋くんだし。でも今ちょっかい出すなら、あたしは断固戦うよ」
「舞ちゃんには勝てる気しないから降参っ」
「ねぇ、あたしまだしたことないんだけど……やっぱ最初は痛いの?」
「人にもよるけど、痛がって途中で断念する人も結構いるよ?」
「そうなんだ。やっぱりちょっと怖いね……」
「将なら、きっと舞ちゃんの気持ちが整うまで待ってくれるよ」
「愛里那ちゃんの時はどうだったの?」
「あの時は、ウチの方から迫ったから」
「えぇ、すごいね。どんな感じで迫るの?」
「強引にキスして、そのまま押し倒したら、向こうもやる気になってたって感じ……」
「あたしには無理だなぁ。まだそんな度胸ないや」
「人それぞれペースがあるよ。ウチは焦ってただけだから」
「でもまずは付き合うところからだよね。頑張ろうっと」
「ウチも応援するよ」
「元カノに応援されるって、変な感じだね」
「ホントだね」
「明日の朝、連絡先教えて?」
「うん。ウチから聞こうと思ってた」
「明日になってあたしたちが仲良くなってたら、青嶋くんビックリするかな?」
「するだろーなー。どんな顔するか想像したら笑えてきた」
「あ、そうだ。今日青嶋くん、エッチな本買ってたんだよ?」
「え、マジ? その瞬間見たの? よく冷めなかったね」
「それを捨てる為に今日ここに来たんだった」
「ハハ、やっぱ舞ちゃん超面白いじゃん」
「たぶんまだあのカバンに入ってる」
「アイツが普段どんなの見てるのか気になるね。見ちゃう?」
「ここに来るまではそれも気になってたし、絶対捨ててやるって思ってたけど、もうやめる」
「どうして?」
「勝手に見るんじゃなくて、青嶋くんが自分から見せてくれるのを、待ってたい」
「そっか。待つのは女子の特権だからね。いいと思う」
「今度青嶋くん抜きで遊びに行こうよ」
「いいね。どこ行こっか?」
「今年まだ水着一回しか着れてないからプールとか?」
「その話聞いたら将のヤツ羨ましがるだろうなぁ」
「青嶋くんには水着姿、この前見せたんだけど、胸ばっか見てた」
「あのエロ猿……ちゃんと褒めてくれた?」
「うん。可愛いって言ってくれた」
「そっか。嬉しかったんだ?」
「うん。すっごく。それにしつこいナンパからも体張って助けてくれたの」
「この前の顔のアザはそーゆーことね」
「かっこよかったんだよ?」
「へぇ。ってかまたアイツの話に戻ってる」
「青嶋くんがいなかったら、愛里那ちゃんとも出会ってなかったんだね」
「そうだね。将には頭あがんないや……」
「……ホントに、もう好きじゃないんだよね?」
「うん。それは安心していいよ。ウチ、もう別に好きな人いるから」
「どんな人?」
「優しくて、いっつも守ってくれて、ウチが悲しそうな顔してたら、くだらない冗談で笑わせてくれる人」
「それ、青嶋くんじゃないんだよね?」
「違うよ……でも、だから将に告ったのかも」
「そっか。あんな人、他にいないって思ってた」
「世界は広いから、ウチらが見えてないだけでいっぱいいるのかもね」
「でも、あたしは青嶋くんがいい」
「ウチも、似たような人が他にいたとしても、あの人がいい」
「あたしも愛里那ちゃんの恋、応援するね」
「この前振られちゃったんだよね……」
「大丈夫だよ。あたしも青嶋くんからの告白、3回も断っちゃったけど、今ではこんなに好きだもん。だから諦める必要なんてないよ」
「そっか。舞ちゃんだったか……」
「え? どーゆーこと?」
「将と付き合う前、その話聞いてたんだ。人生で1番好きだったって言ってたよ?」
「そっか……嬉しい。どうしよ愛里那ちゃん、嬉しすぎて目、覚めちゃった」
「この勢いで夜這いかけちゃう?」
「それは……また今度にする」
「今度かけるんだ?」
「うーん。結婚したら?」
「それは飛躍し過ぎだから。何年後だよ」
「でも、出来たらいいなぁ」
「もしそうなったら、結婚式呼んでね?」
「うん。呼ぶ」
「まだ付き合ってもないくせに」
「あ、言っちゃいけないこと言った!」
「ごめんごめん。でもそうなったらいいね」
「あたしも、人生で1番好き」
「それをウチじゃなくて本人に言えたらねぇ」
「恥ずかしくなってきた……」
「ダメだこりゃ」
「見捨てないでよぉ」
「舞ちゃんと将は、誰から見てもお似合いだよ」
「そうかな?」
「人生で1番好きってお互いが言ってるなんて、それだけで奇跡みたいな確率じゃん」
「まだそうならいいなぁ……」
「今度さ、ウチの地元のお祭りあるんだけど、将も誘って行かない? いい感じに2人きりにさせてあげる」
「ホントに? 行きたい! 浴衣着た方がいいよね?」
「よし! そうと決まれば今日のところはもう遅いし寝よっか」
「うん。お休み、愛里那ちゃん」
「お休み、舞」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
もし少しでも、おもしろい、続きが気になる、と思って頂けましたら、ブックマークやコメントなど頂けるととても励みになります。
今後とも『サンスクミ』を宜しくお願いします。




