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サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜  作者: 野谷 海
第1部 夏

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第8話 Gロック。

挿絵(By みてみん)




 ――翌朝、小浦宅で簡単な朝食を頂いた。


「青嶋くん、それどうしたの? 顔真っ赤だよ?」


「た、たぶん変な寝相だったから跡残っちゃったんだな、ははは……」


「そっか、湿布いる?」


「大丈夫大丈夫! すぐ治るよ!」


「……」

起きてからも、後藤さんは目も合わせてくれなかった。



「じゃあまたバイトでねー!」

小浦は玄関まで俺たちを見送ると、大きく手を振った。


「お邪魔しました!」

「お邪魔しました」


 俺の自転車が置いてある『たまだ』まで、たった数100メートルの距離が気まずい……。すごく気まずい。でも、このまま別れると明日からもっと気まずくなるだろう。そう思って声をかけようとした時――


「あの……」

俺より先に後藤さんがバツの悪そうな顔で切り出す。


「昨日は、事故だったのに叩いてごめんなさい。痛かったわよね?」


「んーと……親父に殴られた時よりも少しだけ痛かった」


「ご、ごめんなさい! 突然だったから、力加減出来なくて……」


「い、今のは冗談だから! 原因をつくったのは俺の方だし、こっちこそごめん……」


「良かった……」


「俺も嫌われたと思ってたから良かった」

俺たちは顔を見合わせて微笑み合った。


「でも、次あんなことしたら、右の頬も覚悟してね?」


「勿論です閣下! 昨夜は首が1回転するかと思いましたであります!」


「何よそれ、これでもか弱い女の子なのだけど?」


「あのビンタは、世界を獲れると思うであります!」


「分かったから、もうその喋り方やめて」


「ごめんごめん。そういえば後藤さん今日もバイトだろ?」


「ええ」


「もしキツかったら俺変わるから連絡してよ」


「そういえば、まだ青嶋君の連絡先知らないわ」


「そうだっけ?」


「不便だから交換しておきましょう?」


「そーだな」

こうして俺は、学園のアイドル2人の連絡先をゲットしたのだった。



 家に帰ると昨夜あまり寝られなかった疲れから、すぐにベッドに入り眠った。たぶん、眠りについて間もなくのことだと思う。ズシズシと体を揺らされた。


「おにぃ、ねぇおにぃ……」


「どした美波(みなみ)、俺まだ眠いんだよ……」


 のしかかって体を揺らすのは、妹の美波。

「もう夏休みになったのに、なんで全然アリナちゃんうち来ないの?」


「…………」

愛里那(ありな)、すっかり忘れていたその名前は、最近まで付き合っていた俺の元カノの名だ。


 俺は起き上がり、事情を説明した。


「そっか……。一緒に海に行く約束してたんだけどな……。アリナちゃんとなら、友達になれると思ったのに」

 

 妹がこんなに落ち込むのには理由がある。美波は現在、中学2年生の13歳だ。でも学校にはあまり行けていない。友達作りに失敗して、クラスで孤立しているらしい。でもそんな美波が、愛里那にはすぐに懐いた。愛里那が家に来るたび、俺たちは3人で遊んでいた。海に行く約束も、覚えている。


「ごめんな美波」


「ううん……仕方ないよ」


「俺と一緒に海いくか?」


「おにぃと2人はヤダ」


「なっ……何が不満なんだ」


「だって彼氏と間違えられたら嫌だもん」


 ク、クリティカルヒット……だ。

「美波、悪いがしばらく実家に帰らせていただきます」


「ここ実家だよ」



 翌日になっても、妹のことが気がかりだった。どうにかまた普通に学校へ行けるようにしてやりたい。それが無理でも、海くらいは連れて行ってやりたい。


 ――気付けば、また俺はサラダを作り過ぎていた。


「ひぃぃっ……」

「きゃっ……」


「ん? どうしたんだ2人とも?」

真っ青な顔の学園のアイドル2人が、厨房のシンクの方からゆっくりと近づいてくる。


「で、でたの……」


「出たって何が?」


「言わせないでよそんなこと!」

小浦は突然声を荒げる。

 

「ちょっと舞、そんな大きな声だしたら……」

後藤さんの指摘通り、案の定、床で黒いモノが素早く動いた。


「「ぎゃああああ」」


 2人の恐ろしい悲鳴が轟くと、それが飲食店の天敵Gであることが分かった。我を忘れた2人は俺の腕にしがみついた。右に小浦、左に後藤さん、なんて贅沢な状態だろうか。Gよ、ありがとう。だがここでひとつ問題なのが、俺も虫が苦手だった。


「青嶋くん、やっつけて!」


「しぃ、早くあいつ倒して!」


 2人のしがみつく力がギュッと強くなる。あれ、右から柔らかい感触がする。あれおかしいな。左からはあまり感じられない。なぜだろう。あぁそうか。少し前、この手で触れたじゃないか。そういえばそうだった。


「今何か、すごく失礼な事考えなかった?」

後藤さんの指の力が強くなる。


「そ、そんなことないですよ……」


「とにかく、早く倒して!」


「実は俺も苦手なんだよね……」


「ちょっとあなたそれでも男なの?」

「そうだよ青嶋くん!」


 Gがまた、動き出す。


「きゃあ青嶋くん、お願い! なんでも言う事聞くから!」


「え? ホントに?」


「うん、ホントだから早く!」


「後藤さんは?」


「内容によるけど、大体のことなら聞くわ! 早くして!」


「よぉーし。じゃあ2人とも、俺と海に行ってくれ」


「「分かったから!!」」


 俺は2人から言質をとると、古新聞を丸め心を殺して振り下ろした。


「やったか……?」

フラグ回収と言わんばかりに動き出すG。


 妹の為にすかさずもう一度振り下ろすと、長い戦いに決着がついた。

「ご臨終です」


「よ、良かったぁ……」

「心臓が止まるかと思ったわ……」



 バイトが終わった後に2人に妹について詳しい話をした。

「なーんだ、そんな事すぐOKしたのに。ねぇ姫?」


「そうね。普通に誘えば良かったじゃない」


「ありがとう2人とも、助かるよ」


 妹の為とはいえ、2人の水着姿が楽しみ過ぎて、しばらく眠れぬ夜が続いた。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

もし少しでも、おもしろい、続きが気になる、と思って頂けましたら、ブックマークやコメントなど頂けるととても励みになります。

今後とも『サンスクミ』を宜しくお願いします。

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