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アガパンサス:恋の訪れ

 とくん、とくん、……胸の奥から、体に伝わる鼓動を感じる。触れ合ってる肌から、伝わっちゃいそうなくらい、ドキドキしてる。離したほうがいいかな、でも、離せないよ。

 もう一回、なんて、また、ひなちゃんの頭に顔をうずめる。もう、何回目だっけ。落ち着くのに、落ち着かなくなるかおり、ずっと、におってたくなる。私、どうしようもなく変になってる。罪ほろぼしみたく背中をなでてあげて、それでも、そんなので埋め合わせできてるとは思えない。

 はちみつの香り、よくかいでみると、ほんのりバラの花みたいなかおりがする。寝る前に香水とか付けてるんだったら、教えてもらおうかな。そうじゃないなら、シャンプーのかおり、なのかな。お風呂のとき、ちゃんと見てなかったけど、どんなの使ってるか今度訊いてみたいな。私も、そうすれば、おんなじかおりをいつでも感じられる。

 けど、そうしたいかっていったら、……そうじゃないよ。……私が好きなのは、ひなちゃんのかおりで。もっと感じたい。そんなこと言ったら、気持ち悪いよね。許してくれるとは思うけど、私だって、同じこと言われたら、ちょっとびっくりしちゃうもん。だって、そんなの、近くにいる人じゃないと分からないし、……そんなことができる関係で、思いつくのなんて一つしかない。


「ひなちゃん……」


 ……すき。言葉にしちゃえば、たったそれだけなのに。どうして、こんなにくらくらしちゃうんだろう。本の中の子とかで見たことはあるけど、その子たちだって、おんなじ気持ちなのかな。

 私、……ひなちゃんに、恋してる。なんとなくだけど、確かに、わかる。なんとなく遠いものだって思ってたのに、いつの間にか、こんな近くにあって、胸の中、じんじんって、痛いくらい熱い。

 満たされてるのに、ほわほわしたものが入りこんできて、それが分かってても、止まらない。このまま、ぽんって破裂しちゃいそう。

 いつもとは違う、甘いかおり。あったかくて優しくて、眠れるように、深く息をする。ひなちゃんのかおりが、優しく入り込んでくる。このまま、一つになっちゃいそうなくらいに。なんて、それは夢見すぎか。毎日は無理でも、もうちょっと、こういうふうに寝たいな、なんて。ひなちゃんもすぐ寝てくれるし、私だって、いいかおり、感じられるし。

 起きないでいてね。私が寝れるようになるまで。……こんなとこ気づかれてたら、きっと恥ずかしくて死んじゃうよ。ふわりときた、ほんのりした眠気に身を任せようとしてみる。ふわぁってあくびがこぼれて、その先は、……意外と、すぐそば。

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