ペチュニア:心のやすらぎ
「……だめ、だったかな」
「ううん、そうじゃなくて、ちょっとびっくりしちゃったな」
普段の控えめすぎるくらいなのを考えたら、ぎゅってして、なんて相当に大胆。……そうだよね、嫌われてるなんて、あるわけないよね。よどみは、ほわほわしたもので上書きされてく。
「そうだよね……」
「いいって、そういえば、普段はどういうふうにしてるの?」
「どうって、……このまま、隣で座って、寄っかかるだけだよ」
「そっか、……おいで?」
さっきより、照れくさそうな顔をしてる。いつものひなちゃんって、こんなことしてるんだ。重なった目線は、そっと近づいてくる。ふわりと香る甘い香りと、優しいぬくもり。
「じゃあ、……これ、嫌じゃない?」
「う、うん、大丈夫」
胸元に顔をうずめるような感じで、顔を寄せてくる。なんか、落ち着かないどころか、ドキドキする。はちみつみたいな香りのほうが濃くて、これ、髪から香ってたんだなって気づいちゃう。
腕を背中に回してあげると、服越しに、あったかい感触が伝わってくる。そのぬくもりだけで、優しい。ゆったりとした吐息が、かすかに耳をくすぐってくる。
「これで、いい?」
「うん、……優しいね、清美ちゃんは」
「ひなちゃんのほうが、ずっと優しいよ、誰にでも」
私にも、気を遣いすぎってくらい優しくて、時々、不安になる。いいんだよ、私には。気がついたら、あやすように、背中をなでなでしてる。
「ん、……ねえ、清美ちゃん?」
「これ、嫌だったかな」
「ううん、……そっちのほうが、落ち着くな」
ぽんぽんって、背中をなでる手を止めないであげる。落ち着いた吐息の中に、ふわぁ、ってあくびが混じる。眠いのかな、ハーブティーのせいかもしれないけれど、それにしたって、今日のひなちゃんは、いつもよりもふにゃんってしてる。
「もう……、眠くなっちゃった?」
「……うん、ちょっとだけ」
「このまま、ベッド入っちゃおうか?」
「いいの?……わたしがしてたときは、添い寝までするときもあったけど」
普段なら「そんなのいいよ」って言ってきそうなこと、今日はなんというか、私のこと、頼ってるっていうか、甘えてるような。どっちかならかわいい系の顔だけど、そういうの関係なく、……かわいい。もっと、ぎゅってしてあげたくなる。
「ひなちゃんがいいならいいよ、どうしたい?」
「じゃあ、お願いしよっかな、……いい?」
「もちろんだよ。……体、離すよ、電気、消してくるから」
「ん、……うん」
寝ぼけたような声、普段じゃ聞かないくらいふわふわしてる。ひなちゃんのぬくもりはもうないのに、なんかまだ、体の中、熱いままになっちゃってるような。