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ホテイアオイ:揺れる心

 ハーブティーで温まった体は、ふんわりとした眠気に導かれる。カップも片付けなきゃだし、寝支度も済ませなきゃ。


「カップ洗ってくるよ、先洗面所使ってて」

「あ、うん、ありがと、……さっきのも、考えとかなきゃ」


 いつもだったら、ひなちゃんがすぐ洗いに行っちゃうのに、今日は、なんかぼうっとしてる。私が変なこと言っちゃったからって自覚はあるけど、そんなに悩んでるとこ、初めてみたかも。

 お盆にカップを移して、給湯室に向かう。……そういえば、ひなちゃんと一緒にいないの、こういうときくらいだな。他であるとしたら、どっちかが実家に戻るときとか、……細かいこと言ったら、お花を摘みにいくときとか、それくらい。


「そんなに、気を遣わないでくれたっていいのに」


 好きなことだって合うし、クラスも一緒になったし、部活だって一緒で、一緒にいると楽しくて落ち着く。でも、ひなちゃんは、どうなのかな。他の人にするみたいに、私にも気を使ってばかり。別に、寄りかかってもいいんだよ。嫌じゃなかったら。というか、気を使ってばかりで、一緒いたくないのかなって思っちゃう。

 ……そんなもやもやも一緒にこすり落とせたらよかったのにな。よどんだ心は、元に戻ってくれない。そんなこと、ないっていうのは気づいてても、やっぱり、浮かんじゃった不安は消えてくれない。

 気のすむまでスポンジでカップをこすって、洗剤を洗い落とす。布巾で水滴をふき取って、……そこまでしても、まだ、消えない。


「ただいまー、もう、空いてる?」

「ありがと、うん、大丈夫」


 いつものローテーブルに置いて、私も寝支度しちゃおう。こんなの、たぶん寝たら忘れられるはずだし。歯磨きを済ませて、化粧水をはたき込む。他のことはお風呂場でやってるから、洗面台ですることはそれくらいで済む。ものの5分くらいの間、何度か、ひなちゃんが目線を向けてる気配を感じる。

 気づかないふりなんてできなくて、ひなちゃんのほうのベッドに向かう。さっきと同じように隣に座って、目線は、寄せてるけど、完全には合わさない。


「何かあった?」 

「ほめん、清美ちゃん、……その、さっき言ってたの、思いついたんだけど、いいかな」

「うん、いいよ、何してほしい?」

「あのね、……わたしのこと、ぎゅってしてほしいな、……妹にこれやると、すっごく落ち着くって言ってくれるんだ」


 かわいらしいような、大胆なような。胸の中、ちょっと揺さぶられる。思わず視線を合わせようとすると、うつむいた視線は、わたしよりもずっと下を見てる。


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