カスミソウ:清らかな恋
「そろそろ、シャンプーとか切れちゃうんだよね、買っておかなきゃ」
「私も、……今度は、ひなちゃんとおんなじのにしよっかな」
放課後に、ドラッグストアでお買い物をする。デートというにはささやかすぎるけれど、なんとなく、そういう風に意識しちゃう。
「あれ、くせっ毛の人向けらしいよ。清美ちゃんは髪質まっすぐだし、同じブランドのこっちのがいいんじゃない?」
「そうかもだけど、私あのかおりが好きだし……っ」
「それじゃあ、一回わたしの試してみる?」
「ありがと、じゃあそうさせてもらうね。代わりに、何かお菓子おごるよ」
「もう……、ありがと」
前までだったら、そんなのいいよ、なんて言ってくるところなのに、……私とお付き合いしてからは、素直に受け取ってくれるようになったな。
私の分はいったんお預けして、二人で使う分を買いに移る。ティーバッグとか、ペットボトルのお茶とか。一個ずつ自分のカゴに入れるの、不公平にならないようにってしてることだけど、お揃いって感じして、なんか嬉しくなる。
「なんか、食べたいのある?」
「じゃあ、これにしよっかな、一緒に食べよ?」
「うん、じゃあ、そうしよっか」
……抹茶味のポッキリバーを手に取るひなちゃんの顔、真っ赤になっちゃってる、なんとなく察しちゃううよ、やりたいこと。意味が分かっちゃうと、ほっぺたが熱くなっちゃう。……ちょっと、大胆になったよね。私も、興味はあるし、嬉しいけど。
「清美ちゃん、何かあった?」
「うえっ、……うーん、ひなちゃん、変わったねって」
「そうかな……、でも、確かにそうかも」
甘えていいよ、なんて、あの時言ったけど、まさかここまでになるなんて思ってなかったんだけどな。何かが引っ掛かったようなあいまいな笑い方じゃなくて、にっこりって言葉が似合うような感じ。レジに並ぶのも、袋に詰めるのも、いつも隣。その距離が落ち着くけど、そわそわもする。いい加減、まだ暑いのに、心の中、それ以上に熱い。
「……誰かの『特別」でいられるのだけて嬉しいけど、それが清美ちゃんでよかったな」
「……わたしも、ひなちゃんでよかったよ」
……すき。それ以上の言葉がありそうなのに、そうとしか言えない気持ち。まだ外なのに、胸の中からあふれちゃいそうになる。早く、寮に帰りたいな。熱くなるのは、ひなちゃんだけでいいのに。
「わたしには、届かないとこにあるって思ってたのに、こんな近くにあったんだね」
「……うん、私も思わなかったな、まさか、私の隣にあるって」
ぽつりぽつりとつながってく、甘い言葉。寮までの距離、思ったよりもすぐ近くになってく。けど、胸の中、もっと熱くなっちゃうな。……帰ったら、私も、甘えていいよね。ちらってひなちゃんの方を向くと、いいよって目で言ってくれたような気がする。




