17年前の真実
クゥが開けた扉を通ってアッソード神殿に着いた私達だが、周りに誰の姿も見えないので私が一人で中に入って誰かを呼んで来る事になった。
私が大きな扉の横にある通用口から中に入ると、
中は吹き抜けになった広い空間があって、壁には絵が飾られ、人や飛竜の彫刻が置かれていた。
「どなたかいらっしゃいませんか?」
大きな声で呼びかけると、今まで誰もいなかった場所に一人の杖をついた白い法衣を着た老婦人が現れた。
「大きな声で言わなくても聴こえておる。飛竜の門が5000年ぶりに開いてこっちもビックリしたわい。外の飛竜も一緒に中に入れれば良いぞ」
一部訳のわからない数字が聞こえたような気がしたが、老婦人がそうおっしゃったので、私は玄関の扉を開けて、シャーラン君達も中に入れさせてもらった。
「そこの青飛竜は見かけない顔をしておるな。アッソードで生を受けていない野育ちか」
クゥを 野育ちと言われて、ムッとしたが、私は冷静に老婦人に自己紹介した。
「ベルーガ王国から参りました、ジェンナ.マーキュリーと申します。こちらが同じくベルーガ王国のシャーラン.ランド男爵と赤飛竜の背におられるのが母君のミメラジーナ夫人です」
私の紹介の後、シャーラン君がここに来た経緯を説明した。
「母は体内の魔力が固まりつつあるそうです。こちらでそれを治療する事はできないでしょうか?」
「私はこの神殿の神殿長をしておるシェネリーと言う。そこにいるミメラジーナとは旧知の仲じゃ。
ミメラジーナの症状は予想しておったわ。
まったくもっと早く来いと言っておいたのに強情な女だわい」
シェネリー神殿長は人を呼ぶと「魔鉱石の部屋を整えて寝かせるように」と言ってミメラジーナさんを搬送させた。
ミメラジーナさんを連れて行かせた後、シェネリー神殿長は私達を部屋に通してお茶を振る舞ってくださった。
「其方達はミメラジーナの病についてどう聞かされておる?」
「はい、体内にある大量の魔力を使わなかったので魔力が固まって体を傷つけたと聞きました」
「そうじゃ、ミメラジーナに魔力を使わないように言ったのはこの私じゃ。
ミメラジーナの魔力は危険すぎたからの。
ん?なぜか知りたいか?
ミメラジーナの魔力は、5000年前まだここがラフラン帝国と言われていた頃の魔法使い達に匹敵する魔力量だったからじゃ」
シャーラン君は、目の前の人物が母の病の原因を作ったと知り驚きを隠せないようだった。
「ここには、はるか昔空中に浮かぶ大陸、ラフラン帝国があった。
発達した魔法技術と青飛竜を使って世界中を支配下に置く、とてつもない大国じゃったが5000年前に内乱が起こり、ラフラン帝国は文字通り国を割ってしまったのじゃ。
魔法使いの超強力攻撃魔法で空に浮かぶ大陸は粉々になり、今のように数万とも言われる小島に分かれてしまったのじゃ」
「5000年前にそんな事があったのですか…」
「生き残った者の内、下界に降りてラフラン群島王国を作った者もいたが、飛竜に乗って世界各地に散らばった者もいたそうじゃ」
(シャーラン君の里の人もその時ここから去った人達なのかしら?)
「17年前になるか、再びこの地にラフラン帝国を作ろうとした一派がミメラジーナの強大な攻撃魔法に目をつけた。
自分のせいで世界に災いが起こるのを恐れたミメラジーナは、ここから逃げるように外国から留学に来ていた男と駆け落ちした。
私は青飛竜をくれとここに現れた2人に、逃げた先で魔法を使うなと言った。
その頃、魔力を放出するために魔法を使えば、必ずラフランに情報が届いて居場所が突き止められるだろうと。
その代わりに大きな魔鉱石を持たせ、ここに魔力を貯めよと言った。
この魔鉱石がいっぱいになった頃には、追っ手もいなくなるだろうと。
そして2人は青飛竜に乗ってこの地を去ったのじゃ」
ミメラジーナさんとページャンさんの駆け落ちには、そんな事情があったのか。
たしかに、ミメラジーナさんの魔力はすごいけど、本人が嫌がっているのにラフラン帝国再建の為にミメラジーナさんを利用しようなんて間違っている。
私は、ミメラジーナさんの身体が治ったら、里で今まで通り平和に暮らしてもらいたいと思った。
その時、部屋をノックして入って来た男性から連絡が来た。
「神殿長、青飛竜に乗った何者かが青飛竜の卵を寄越せと玄関で騒いでおりますが、どういたしましょう?」
「ガレット王弟殿下かしら?」
どうやら青飛竜のジゥラに乗った王弟が到着したらしい。
私達も神殿長に続いて玄関に向かった。




