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魔法で荷物お運びします!  作者: 耳折れ猫
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王弟の裏切り

 次の日、ミメラジーナさんの病室を訪ねると、枕元に女王陛下がいらしていた。

 ミメラジーナさんの顔を見た後、女王陛下が別室で話があると呼ばれたので付いて行くと、侍医長が待っていて病状を教えてもらえた。


「ミメラジーナ様は、王族でも大きな魔臓をお持ちの方でした。大きな魔臓はたくさんの魔力を生み出します。しかし作られた魔力を消費されないと、使わない魔力が固まって魔臓を傷つけるのです」


「では母の病の原因は、魔力を使わなかったからという事ですか?」


「はい、ミメラジーナ様程の魔力の持ち主になりますと、毎日魔力を放出しないと消費できません。今まで魔力が溜まっていくばかりの生活をしていたのでしたら、体中に痛みが出ていた事でしょう。指先は石化が見受けられますし、体中の痛みはかなりのものだったと察せられます」


「そんなに酷い状態だったのですか」シャーラン君は真っ青になって聞いていた。


「ミメラジーナ様の魔臓は手術では治せません。

魔鉱石という魔力を吸い上げる特別な石を使って、少しずつ凝り固まった魔力を溶かして健康な魔臓に戻す必要があるのです」


「健康な魔臓になるには、どのくらいかかるのでしょうか?」


「そうですね。早くて5年、長かったら10年は掛かるのではないでしょうか。しかしそれもミメラジーナ様の体力が保てばの話です。魔力が固まるより早く溶かさなければ、ミメラジーナ様の命は危険に晒されるでしょう」


「そんな…」


 医師が出て行った後、女王陛下がおっしゃった。


「姉上をアッソード神殿に連れて行ったら、早く魔力を溶かす事ができるかもしれない」

 

「本当ですか?」


「うむ、アッソード神殿には結界が張られているのだが、それにはさっき医師が言っておった魔鉱石の巨大な物が使われていると聞いた事がある。

その魔鉱石なら姉上の症状を和らげるのではないかと思う」


「アッソード神殿はどこにあるのでしょうか?」


「アッソード神殿の場所は青飛竜だけが知っている。

王族の飛竜がおらぬ今、幾万とも知れぬ島の中から神殿のある島を探し出すのは、姉上の青飛竜ジゥラしかもうおらぬ。

早く姉上を連れてアッソード神殿に行くが良い」


 その時、部屋に近衛兵が入って来た。


「申し上げます!王族専用廐舎に賊が押し入り、ミメラジーナ様の飛竜を奪われました!

賊の中に王弟殿下がおられ、王弟殿下はジゥラに騎乗して飛び去られたとの事です!」


 「何っ!」女王陛下が叫ばれると同時にシャーラン君は部屋を飛び出して行った。

 私も「失礼します!」と言って廐舎の方へ走った。


 廐舎の入り口で廐舎長が血だらけで倒れていて、医師の手当を受けていた。


「申し訳ありません。ジゥラを奪われてしまいました」廐舎長は弱々しい声で謝罪した。


 シャーラン君は中に入って「クゥ!!」と叫んだ。

すると、廐舎の藁が積んである中から「ズボっ!」とクゥが顔を出して「クゥ〜」と鳴いた。


「クゥ無事だったのか。赤飛竜は?」

赤飛竜も奥から走って来て元気良く鳴いていたので、シャーラン君と私は安心して座り込んでしまった。


「大丈夫ではないぞ、唯一アッソード神殿の場所を知っいるジゥラを奪われてしまった。

これでは姉上を連れて行く事ができぬ」


 女王陛下は王弟が青飛竜を手に入れたがっていた事と、[ラフラン帝国の復活]を訴えている団体に傾倒していた事を話し、王弟が神殿で青飛竜の卵を大量に調達するのを阻止しなければならないと訴えた。


「ジゥラの行き先ならクゥがわかるかもしれません!クゥは甘えん坊の遊び好きですが、やる時はやる頼れる子なんです!」

シャーラン君、急いでミメラジーナさんを連れてジゥラを追っかけましょう!」


 ここで嘆いていても始まらない。私達はクゥの青飛竜の本能に賭ける事にした。

 シャーラン君は赤飛竜にミメラジーナさんを乗せて、私はクゥに乗って王城から飛び立った。

アッソード神殿のある島は、数万の島から一つを探さなければならないのだ。


 「クゥ、ミメラジーナさんをアッソード神殿に連れて行かないと、ミメラジーナさんが死んじゃうかもしれないんだよ。ジゥラの跡を追ってアッソード神殿に連れて行って!」


 私は祈るような気持ちっクゥに頼んだ。

クゥは言った事がわかったようでキョロキョロしていたが、ジゥラの通った跡が見つけられないというように頭を振った。

 そして「クゥ…」とジゥラを見つけられない自分を情けなく思っているように鳴いたのだった。


「なあクゥ、お前は里で赤飛竜の子供達が仲良く遊んでいるのを見て、いつも羨ましそうに見ていたよな。

里には青飛竜の子供はおまえだけしかいなかった。

体の小さなクゥは、いつもいじめられて辛かったな」


 (そんな事があったんだね…)


「ジゥラの跡を探そうと思わなくて良いよ。アッソード神殿には青飛竜の仲間がたくさんいるだろう。

クゥは仲間に会いたくないか?

仲間の気配は感じられないか?

この島々のどこかにお前の友達や恋人になるかもしれない青飛竜がいるんだ。

クゥ、皆に会いに行こうぜ!」


シャーラン君がそう言った時だった。

クゥの体が光輝いてきたと思ったら、目の前に門が現れたのだ。


「何これ?クゥがやったの?この門の向こうにアッソード神殿があるのかしら?」


「クゥ、スゲー!お前すごいじゃん!ジゥラより先にアッソード神殿に着けるかもしれないぞ」


 私達が門を潜ると、そこは美しい緑に包まれた大地に建つ白い神殿が見えた。


「ありがとな。ジェンナ!俺、ジゥラがいなくなったって聞いた時にもうダメかもと思った。クゥはやる時はやる奴だって聞いて、俺がクゥを信じないでどうするんだって思った」


(私も思いましたとも…)


 クゥはやればできる子じゃない。やればすごい子だった。

 






 

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