ウェナ大地震(後編)
この章には地震と津波の描写が書かれています。
ご不快に思われる方は、読まない事をオススメします。
沖の黒い線だったのが、ウェナに近づいて来るに従い大きな波だというのがわかった。
クゥに乗った私とシャーラン君は、2階建ての建物より大きな破壊波が街を覆うのをなす術もなく見つめていた。
赤い屋根と白い壁が美しい街が破壊されていく。
自然の脅威に言葉も出なかった。
私達は山の上の領主の館に向かった。
広い館の前庭とそこに繋がる道には、たくさんの街の人が避難していて、赤飛竜達が運んだ怪我人が医師の手当てを受けていた。
クゥが空いた場所に降りると、役場の男性が駆け寄ってきた。
男性は「破壊波が来るのを早く知らせてくれてありがとうございました」とお礼を言ってくれた。
赤飛竜で皆が手分けして避難を呼びかけて、歩けない人を飛竜で運んだおかげで、怪我人は多かったが、逃げ遅れて亡くなった人はいなかったそうだ。
破壊波に気がつかないで海の近くにいたら死者がたくさん出ただろうと言っていた。
私は「ホールラビットが地震を感知してウェナから逃げたから赤飛竜が今日たくさんウェナに集まっていたんですよ。感謝祭のおかげですね」と言った。
「ホールラビットはここにもたくさん逃げて来て、街の人達が総出で捕まえています。
感謝祭は明日ですが、今日の晩ご飯で頂く事になりそうです」と言われた。
「ところで町長さんの金庫の物は持ち出せましたか?」と聞いたら、役場の人はため息をついて、「あの金庫の中には町長が家に持って帰れない物が入っているんですよ。愛人にプレゼントするアクセサリーとかドレスとか…。さっき大きな袋を持っていた所を奥様に見つかっていましたから、今頃どうなっているか…」
「うわ〜、その先は聞かないでおこう」と私は思った。
その時「先ほどはありがとうございます!」とシャーラン君に駆け寄って来た2人の女性がいた。
ああ、さっきホールラビットから助けた人かと思っていたら、女性達はシャーラン君の手を取って、「ホールラビットが怖かったです〜。貴方の攻撃がカッコ良かったです」と泣きながら叫んでいた。
「あの方達はどなたでしょう?」
私が役場の人に聞くと、「あのピンクのドレスを来た女性が領主のミドルノン伯爵のお嬢様でアイルーシャ様です。もう1人はお付きの侍女でしょうと教えてくれた。
感謝祭の休暇で王都の王立学園に通っている令嬢が自宅に帰っていたのだろうと言っていた。
シャーラン君はしばらく女性達に捕まっていたが、捕まえられていた腕を降りほどいて、私達の方へ這々の体で逃げて来た。
役場の人は、逃げて来たシャーラン君を含む飛竜の操縦士を前にして言った。
「申し遅れました。私はこの街の副町長でクレーバーと申します。
飛行運送ギルドの皆さんに正式に仕事の依頼をします。
王都にウェナの地震被災を知らせて備蓄倉庫から援助物資を運んで下さい!お疲れだと思いますが、もう1度ウェナの街に手を貸してください!」と依頼した。
「了解しました!」
私達は揃って敬礼して、次々に赤飛竜に乗りこんでいった。
私も空間収納の中の名簿を副町長さんに渡すとクゥの所に走った。
「王都からたくさん援助物資をもらってきますからね!皆さん待っていてください!」
私達はウェナの人に見送られ、王都を目指して空に舞い上がって行った。




