ウェナ大地震 (前編)
このお話には、地震、津波の様子が描写されています。
ご不快に思われる方は、読まない事をオススメします。
次の日、里から赤飛竜が10頭東部のリッツェンに飛んでホールラビットを積んでウェナに向かう事になったそうだ。
私達は王都で書類をもらって各地に飛んだ。
昼前にウェナに行く予定だったので、ミア達とウェナでお昼ご飯を一緒に食べる予定だったのだ。
秋本番のウェナは晴れていて雲一つ無く、涼しい風が心地良かった。
ウェナの離発着場には赤飛竜が10頭並んで壮観だった。
馬車にホールラビットを積み込んでいるようで、たくさんの人が忙しそうに働いている。
私達は邪魔にならないように端っこに降りようとしたその時だった。
「ゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオッ!」と大きな音がした。
クゥは降りる体勢から再び空に向かって飛んで行くく。
赤飛竜達も操縦士が乗っていないのに飛び立って行った。
「地震だ!!」
シャーラン君の叫びと同時に街が揺れた。
「ガシャガシャガシャーン!!ベキベキベキ!!」
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長い大きな揺れがようやく治って、シャーランとジェンナが空から見たウェナは、街全体が砂煙に包まれ霞んで見えた。
「大変だ!!」
シャーラン君は離発着場にいる村の人達を探した。
広い空き地の離発着場は馬車が何台かひっくり返っていたが、村の人は皆伏せていた場所から立ち上がっていた。怪我人もいないようだ。
しかし街の方を向くとたくさんの建物が崩れていた。
家がかなり壊れているので怪我をしている人もたくさんいるだろう。
「とにかく飛んで行った赤飛竜を呼び戻さないと」
シャーラン君はクゥを赤飛竜達の方へ向かうように操縦すると、持っていた呼び笛を吹いて赤飛竜を集めた。
そして離発着場に全部の赤飛竜を降ろした時、私は海の水が沖に向かって流れていくのを見た。
「シャーラン君、海見て!水が沖に向かって流れて行く!」
「えっ、本当だ。あれは何だ!」
私は王立図書館にあった昔のウェナの人が書いた本の一節を思い出した。
地震の後…海の水が引いた。
そして2階建ての家より大きな破壊波が来て街を
押し流した…
「大変、シャーラン君破壊波が来る」
「破壊波って?」
「2階建ての家より大きな波が海から襲って来るの。
早く高い所に逃げないと!皆を助けなきゃ!」
「俺はどうすれば良い?」
「村の皆で赤飛竜で飛んで、海の近くにいる人から高い所に逃げるよう伝えてもらって!
…それからホールラビットを入れて来た檻に怪我人やお年寄りや子供達を乗せて高い所に連れて行ってあげて!」
「わかった!ジェンナはどうする?」
「私は役場で教会の鐘を鳴らしてもらうよう頼んで来る!避難の鐘を鳴らしてもらわなきゃ!」
「わかった!役場の前で降りるぞ」
青飛竜は小さいので、役場の近くの空いた場所に私は降りる事ができた。
私は役場に駆け込むと大きな声で叫んだ。
「破壊波が来ます!皆逃げて!避難の鐘を鳴らしてください!」
「破壊波だって?」
棚から落ちた物を片付けていた役場の人は窓から外を見た。
「海の水が引いて行くぞ!大変だ!避難の鐘を鳴らせ!誰か教会に行って鐘を鳴らしてもらって来い!」
「どうしたんだ?」2階からでっぷりとした大きなお腹をした男性が降りて来た。
「町長!大変です!破壊波が…破壊波が来ます!」
「なんだって!大変だ!皆、2階の町長室にある金庫を持って逃げなければ!手伝え!」
「町長!あんな重いもの持って逃げられませんよ!中身を出して町長が持って逃げてください!
我々は住民の名簿とか重要書類を持って逃げないといけないんです!」
この国では、役場にある名簿であらゆる情報を管理している。
災害が起こって国からの援助物資を配るのも住民の名簿の数で配布されるのだ。
住民名簿は役場の最重要書類だった。
町長はぶつぶつ言いながら2階に戻って行った。
「名簿を運ぶの手伝います。私の空間収納に入れますから、どんどん出してください!」
私は書類棚の名簿を片っ端から空間収納に入れて行く事にした。
「おおっ、助かります!」と役場の人は言って、私達はどんどん名簿を入れて行った。
「じゃあ皆さんも高い所に逃げてくださいね!」名簿を入れ終わった私は玄関に向かった。
「出てすぐの右の道を登っていけばご領主様のミドルノン伯爵の屋敷です。そちらに運んでいただけたら助かります」
「わかりました!ではまた後ほど」
私は役場の外に出た。教会の鐘が避難の鐘を鳴らし街の人達が山の方へ向かって走っていた。
「ジェンナ!こっちこっち!」シャーラン君がクゥと一緒に待っていてくれた。
空に飛びながら「皆逃げる事ができた?」と私が聞くとシャーラン君は「ジェンナに言われた通り皆で赤飛竜に乗って海岸近くにいた人に破壊波が来るぞー」って言って回った。
もう海の側には誰もいないはずだ。それにホールラビットの檻に怪我人や走られない人を乗せて山に向かわせた」と言った。
「良かった」私が胸を撫で下ろしていると、「きゃあああ!」という女性の叫び声が聞こえた。
下を見るとドレス姿の女性2人にホールラビットが襲いかかっていた。離発着場で下ろしたホールラビットが街の人を攻撃していたのだ。
「ジェンナ!操縦変わってくれ!俺が風の刃でやっつける!」
「ひいっ!」思わぬところで恐ろしい話が来た。
「大丈夫!俺が手を引いてやるから。ゆっくり前に来てくれ」
私はシャーラン君に手を取られながら後ろの席から前に移動した。クゥはよくわかっているので水平飛行して安定させている。私が手綱を握ったら、シャーラン君は右に手綱を引いてと言った。
クゥがホールラビットの方に近づいて行った。
「パシパシパシッ!」シャーラン君の手から風の刃が飛び出し、ホールラビットの体を何ヵ所か切り裂いてホールラビットは倒れた。
「やったー!」シャーラン君は風の刃の攻撃は初成功したようだ。再び席を変わって海の方を見ると沖に黒い線が見えた。
破壊波だった。




