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級友の話

作者: 志名波諸智

実話怪談風の創作です。実話ではありません。

大学生のCさんから聞いた話。



Cさんが小学生の頃、T君というやんちゃな級友がいたという。


少し乱暴なところはあるが、明るく元気なT君はクラスの皆の人気者だったのだそうだ。


が、ある日、T君は交通事故にあってしまった。自転車で走っているところ、後ろから来た自動車にはねとばされたらしい。


頭をひどく打っているので検査の為に入院が必要だが命に別状はないと聞かされて、クラス全員で「良かった」と話していたのだが、数日後にクラスに戻ってきたT君は別人のように変わり果てていたのだという。


治療と検査の為に頭は丸坊主で白いネットを帽子のようにかぶせられたT君は、陰気な青白い顔で登校し、おどおどきょろきょろと何かに怯えているように周りを見回してばかりだったらしい。休み時間になっても席からはなれる様子もなく、授業中も休み時間も一言も口を開こうとしない。


「事故がよっぽどショックだったのだろう」


と教師やまわりの大人たちはそっとしておこうという雰囲気だったらしいのだが、子供というのはそういう我慢ができない。T君と仲が良くてクラスの男子のリーダーというかガキ大将というかだったK君があの手この手でT君を引っ張り出そうとし、T君がそれをいやがるという光景がクラス内でよく見られるようになった。


ある日、K君が嫌がるT君を連れだして自治会主催のお祭りに連れ出した時、盆踊りの会場を一目見たT君が今にも殺されそうな悲鳴を上げてすさまじい勢いで逃げ出すという事件が起こった。そこにはCさんもいて「とても子供のあげるような悲鳴じゃありませんでした。聞いている方もぞっとするような感じでした」という絶叫だったのだという。


結局、この悲鳴事件が原因になってT君の家は引っ越してしまうことになった。もっと田舎の方に越してT君の神経を休ませるのだろう、と父親は言っていたが、Cさんは何か気になってT君のところに行ってみた。


ドアホンを鳴らして「T君とお別れのあいさつにきました」と告げると、おずおずといった感じでT君が出てきた。


「よかった、Cか」


とT君が言うので、


「そうだよ。一体、どうしたの。大丈夫」


とCさんが答えたら、真っ青な顔をしたT君が「お化けが見えるんだ」と小さな声で呟いたのだという。


「お化けだらけなんだ。学校も町も、先生もクラスの友だちも、サカナみたいな顔だったり二本足で歩くカエルみたいだったり、キノコだかカニだかわからない化け物だったり。人間のふりをしてる怪物がいっぱいいるんだ」


Cさんが呆然とT君を見ていると


「秘密だよ。見えてるなんて怪物たちに気づかれちゃいけないんだ、絶対に」


T君は真顔でCさんに口止めし「気をつけてね」と言って家の中に戻っていった。


その翌日にT君の家は引っ越していったらしい。


「ついさっきまでT君のことを忘れていたんですけどね」


とCさんは私に言った。


「ここに来るまでの途中で妙な人を見たんですよ。そこのスクランブル交差点をびくびく周りを伺いながら歩いている人がいて。小さな悲鳴を上げながら蒼白な表情で」


多分、あの人にもお化けが見えているんでしょうね、とCさんは笑った。

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