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ep10.『聖母と道化、その支配人』傷とライター

「……もしかして」


隣で水森唯が小さく呟いたのが聞こえた。


(え?誰なん?)


俺は小声で聞き返す。


水森唯は俺の質問には答えず、疑問をそのまま口にするかのようにこう言った。


「……あの……りあむ……さんですか……?『スタア☆レモネイド』の─────────」


その瞬間、女の表情がサッと変わったのがわかった。


スタア☆レモネイド?


なんだそれは?聞いたことない名前だな。


「……へぇ?」


女はやや動揺しているのか、クタクタになったヴィトンのバッグからタバコの箱を取り出して一本口に咥える。


「アンタ、あたしのこと知ってるんだ?」


はい、と水森唯は頷いた。


「物心ついた時から母の出演しているステージのDVDは繰り返し観ていましたから───────」


どういうことだ?


ステージ?


俺がポカンとしていたからか、水森唯がこっそりと囁いた。


(……多分……お母さんのアイドル時代の仲間……)


なんだって!?


ってことは何か?


この挙動不審な女は水森唯の母親と同く、かつてアイドルだったっていうのか?


俺は改めて女を見た。


ふん、と小さく鼻を鳴らすと女はライターで煙草に火を付ける。


あのライターはカルティエだろう。前に佑ニーサンの店の客が使ってるのを見たことがある。


だが、女の身なり同様に随分とそれはくたびれているように見えた。


リサイクルショップかフリマアプリででも購入したんだろうか。


身の丈に合っていないブランド品で───────────しかもそれはかなりの傷やダメージが目立つ。


どうしてだかはわからない。


だけど。










────────────────それはこの女の置かれている状況そのもののようにも思えた。








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