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ep10.『聖母と道化、その支配人』River⑤

「……ずっと迷ってたの。ずっと悩んで、でも───────────もうこれ以上は持ち堪えられないって感じて」


それから水森唯は自分の家に起こったことを話し始めた。


時折詰まりながら、だけど冷静に。


感情を極力除いたように淡々と現状を述べる水森唯の言葉に水森のじいさんは真剣に耳を傾けていた。


特に、金も尽き母親が大切にしていた時計をリサイクルショップに売ってしまったこと、生理用品すら買えず祖母のオムツを履く決心をしたくだりでじいさんは感極まったのか目頭をハンカチで覆っていた。


うん?


この世界線でも水森唯は同じように金に困っていた?


前回、いや前々回だったか──────────時間を戻った後には平穏な暮らしを送っているものとばかり思っていた俺は愕然とする。


どういうことだ?


世界線は常に変化しているのか?


いや。


今はよそう。こんなことを考えるのは────────────


父親の物理的な暴力と経済DV、そして不倫。孤立無援で行政に頼れない状態での介護。精神的に追い詰められている自分の娘と孫の身の上の話を聞き終わったじいさんは──────────人目も憚らず大声で泣いていた。


大人の男、しかも大きな事業をやってる社長っていう社会的地位のある人物がおいおいと泣いている。


どちらかというとナイスミドル、イケオジみたいなカテゴリに入りそうなルックスでもある。五十代だが若々しく、背もスラリと高い。


大人がこんなにも無防備に泣くのを生まれて初めて見た俺は硬直してしまう。









ふと、隣の水森唯を見ると──────────こちらも同じようにわんわんと泣いていた。


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