それを捨てるなんてとんでもない！〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜 R15

ep10.『聖母と道化、その支配人』River③

「……唯……なのか……！？」

スーツ姿の男性は固まった表情のまま水森唯を凝視している。

男性の年齢は四十代後半〜五十くらいといったところだろうか。

社長の秘書だとか右腕だとかそういうポジションの人かもしれない。

「あの、はい。私が水森唯ですが──────────」

どなたですか、と水森唯が恐る恐る尋ねると男性は再び固まった。

ああ、とため息のような声を小さく漏らした男性は今にも泣きそうな声でこう絞り出した。

「……私がお前の─────────祖父だ」

「ハァ！？？？？？」

水森唯より先に俺が反応してしまっていた。

祖父！？？？

ジイさんって言うもんだから、てっきり七十〜八十代くらいの頑固ジジイみたいなのを想像してたんだが──────────！？

「は！？オッサン！？アンタが水森のジイさんだってのか！？？」

思わず俺がそう声を上げると、スーツの男性は小さく笑った。

五十前後のその男性は───────────水森の祖父というより父親にしか思えなかった。

「……はは。まあ、そう思われるのも仕方ないかもしれないね」

祖父を名乗るその男性は俺と水森唯の顔を交互に見ながらゆっくりとこう言った。

「……妻とは学生結婚でね。親の決めた相手ではあったが、二十一の時に結婚したんだ。翌年に長女が生まれて───────それが君のお母さんだ」

ん？

てことは何か？

水森唯の母親はこのオッサンが二十二の時の子か？

俺は頭を高速でフル回転させる。

て、ことはさ。

水森の母親が十六で妊娠・出産した時には───────このオッサンはまだ三十八だったってこと！？？？

三十八で孫誕生！？？

てことはやっぱ──────────このオッサンは現在五十二でジイさんてことで間違いないのか？