ep2 . 『蜜と罰』 唯心論と壊れた世界
え?まだ続いてんの?長すぎない?部屋の中でUNO かトランプでも始めてるのか?
二人の世界は全てが逆転していく。
心の底からの嘘偽りない、まごころでの繋がりを何より大切にしたかった少年は未知の快楽の渦に足元から呑み込まれ沈んでいく。
この身体を差し出したい、受け入れて貰いたいと願っていた令嬢は求められているというその事実だけで精神的に満たされ陶酔していく。
細い腕を少年に掴まれて組み敷かれる。
細い足首は撫でられ大きく押し広げられる。
令嬢の細く軽い身体はベッドの上で踊る様に揺れている。
擦過傷と裂傷、そして下腹部が強く圧迫される鈍い痛み。
令嬢はシーツを握りしめて苦痛に耐える。
時折りその唇から小さな声が漏れる。
しかしその痛みを遥かに凌駕する脳内麻薬。
“求められている”という女としての本能が精神的な快楽物質を際限なく放出する。
アドレナリンとドーパミンが彼女の全てを支配し麻痺させていく。
二人は勢いに任せてお互いを求め合う。
まだ幼さの残る二人の身体に備えられていた、初めて使う未知の機能と臓器。
自分の人生はこの時この瞬間の為にあったのだと二人は悟る。
このまま狂ってもいい。
寧ろそうあって欲しい。
真夜中の静寂の中、二人は抗えない強烈な快楽に支配されていく。
少年は令嬢の耳元で囁く。
答えることはおろか、息継ぎすることすら出来ない令嬢は悲鳴の中その身体を捩らせる。
令嬢の身体の中心部の奥の奥、見えない何かに沈んで行きそうになる感覚は少年の身体を麻痺させていく。
身体の中心を大きく掻き回される感覚に耐えられず令嬢は絶叫する。
心と身体、自分の全てが令嬢の中心部に吸い込まれていくような強い快感に持ち堪えられなくなった少年は思わずその名前を呼ぶ。
『……リセ』
名前を呼ばれた瞬間、令嬢の中の何かが弾け飛んだ。
切ない感情に胸と身体が締め付けられる。
令嬢も少年の名前を小さく呼び、涙と蜜を滲ませてその背中に爪を立てる。
少年の下腹部が波打ち、ゆっくりと脱力し令嬢の身体に覆い被さった。
朦朧とする意識の中、迎えた結末の余韻で二人はぐったりと動けなくなっていた。
令嬢は少年の頭を優しく撫で肩を抱いた。
少年は令嬢ともう一度唇を重ね、その頬を撫でた。
この世界は何もかもが壊れてしまった事に二人は気付かないふりをしていた。
「ドロー4カード」の事を「泥棒カード」だとずっと思ってたわ。
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