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ep10.『聖母と道化、その支配人』助け舟

「どうする？せっかくだから行ってみねぇか？」

チケットを眺めつつ────────────何気ない素振りを装いながら水森唯に問いかける。

「……そうね。せっかくですものね」

水森唯の返事を聞いた俺は内心ガッツポーズを決めていた。

見切り発車の思いつきの産物でしかない今回の計画。

『普段から世話になっている小泉に推しのグッズをプレゼントしたい』って口実だったもんな。

一時は肝心のグッズは手に入れられないでいた上に金だけドブに捨てた形になっていたが─────────────

店員の機転？サービスのお陰で水森唯には“プリアリ”のコンパクトを、小泉には“アイぷり”のストラップをそれぞれ入手出来たのは運が良かった。

その上、予想外にアイスクリーム無料券まで貰ってしまった。

普通に考えれば用が済んだら帰らなきゃいけないとこだが─────────もう少しここに居る口実が出来たのは本当に助かった。

全くのノープランなままここに来てしまってたからな。

ある種の延長戦に持ち込めたのは僥倖と言うべきだろう。