ep10.『聖母と道化、その支配人』 狩られた後
「……それでさ。どれだっけ?小泉の推しってのは?」
山盛りに陳列されたキャラクターグッズを眺める。
「確か───────大豪なんとかって奴だったよな?」
俺がそう尋ねると、水森唯は首を傾げた。
「……あら?ハルトの棚だけ空になってるわ」
どういうことだろう?
俺はもう一度改めてその特設スペースを観察する。
色とりどりのカラーリングのキャラが並ぶ中で、赤い色のキャラの商品だけが無くなっている。
「……ん?どういうこと?」
俺がそう口にすると水森唯は特設スペースの上、天井からぶら下げられたPOPを指差した。
「……今、“アイぷり”のフェアの真っ最中みたい。だからじゃないかしら」
フェア?と俺が聞き返すと水森唯はこう答える。
「“アイぷり”のCDやDVD、キャラグッズを1000円お買い上げごとにランダムブロマイド1枚プレゼント、っていうキャンペーンをやってるのよ」
なるほど。
「へぇ。じゃあ丁度いい時にここに来たって訳だ」
俺がそう言うと水森唯は首を振った。
「そうでもないんじゃないかしら。むしろ逆かも」
水森唯はスマホを開くとフリマアプリを開いた。
「……見て。ノベルティが高額転売されてるわ」
俺は水森唯が開いた画面を凝視する。
そこでは“アイぷり”のフェア限定のブロマイドが数百円〜二千円前後でズラリと並べられ、取引されていた。
「は!?タダで貰える奴だろ!?なんでこんな値段!?」
思わず俺は声を荒げてしまう。




