ep10.『聖母と道化、その支配人』 この世界の真理
似たようなキャラの集団の中でも順位があるのか?
「ふーん?どいつも同じだと思ったけど違いがあるんだな?」
俺はもう一度人気ランキングのページを見た。
一位は“プリアリ”のキャラ、主人公のアリアのようだった。
「へぇ、幼児向けアニメの枠のキャラなのに人気トップなんだな。スゲェな」
確か、主人公のアリアが子どもに戻って幼女になった姿で人気が再燃したとか言ってたっけ?と俺が言うと水森唯は頷く。
「……そう。結局は男性票と女性票の両方集めることの出来る美少女キャラが強いのよね」
と言うか、よく知ってるわね佐藤君、と水森唯は目を見開いてこちらを見る。
まあ普通に考えたらヤンキーの俺が幼女向けアニメやら女性向け作品に詳しいってちょっとおかしいよな。
「そりゃ散々小泉に付き合わされたからな。コンビニコラボやらドラッグストアのコラボやら──────」
嫌でもアニメや漫画に詳しくなっちまうだろ、と俺がオーバーにため息をついてみせると水森唯はクスクスと笑った。
「……それもそうね。小泉先生らしいわ」
そうしみじみ呟くと水森唯は大豪寺ハルトの特集ページを開いた。
「ハルトは“アイぷり∞”の中でもダントツのトップの人気なの。キラキラなルックスでちょっとキザな───────俺様っぽい要素もある王子様系ってトコかしら」
小泉先生が夢中になるのもわかる気がするわ、と水森唯は一人で納得するように呟いた。
俺はハルトとかいうキャラのページを覗き込む。
薄紫を基調としたグラデーションの非現実的な髪が実にアニメキャラらしい。
濃い紫系統のスーツ姿はどこかホストっぽい雰囲気も漂っている。
女ってのはこういう俺様系が好みなのか?
いや。
女ってより“小泉が”ってトコが引っ掛かるが────────────
「壁ドンとかしてきそうだな。そういうの強引なのが女にモテるのか?」
そこまで口にした俺は間違いに気付く。
いや。
そうじゃねぇ。
イケメンだ。
イケメンにしか許されないんだ。
俺様っぽい言動や仕草。
[頭ポンポン]だの[俺のものになれよ]的な台詞も───────────────
“ただしイケメンに限る”ってことなんだよな。
違いねぇ。




