ep10.『聖母と道化、その支配人』 足枷
嬉しくねぇな。
そうかぁ?と俺はなるべく慎重に答える。
「俺ってそんなに早死にしそうなキャラに見えんの?」
それとも生き急いでいる風に思われてるとか?と俺が尋ねると水森唯は首を振った。
「……まさか。そういう意味じゃないわ」
じゃあどういう意味だよ、と俺はなるべく明るいトーンでの口調を心がけて尋ねる。
一歩間違ったら詰問してるように取られかねないからな。
水森唯にはなるべく─────────そう、俺の前だけでも腹を割って話して欲しいって思うし。
もう俺にやれることが何もなかったとしても、だ。
「……お酒を飲むところとかもあるんだけど───────そういう表層的な面じゃなくて」
佐藤君て繊細な所があるものね、と言われた俺は何故だかビクリとしてしまう。
繊細?俺が?
俺がキョトンとしていると水森唯はこう続けた。
「……感受性が強いって言うのかな……そういうとこ、あるんじゃないかしら?」
はぁ、と俺はよくわからない返事を返してしまう。
感受性か。
それってよく聞くけどどういう意味だろう。
繊細だとか感受性が強いだとか言われてもピンと来ない上になんだかズレてるような気がしてしまう。
微妙に褒められてないような気もするが。
なんかあんまポジティブな意味合いで使われないような、というか───────あんまり武器にはなんねぇんじゃねぇか?こういうのってさ。
どちらかと言うと現代社会を生きていくに当たって足枷になりかねない要素のような気がしないでもないが。
俺の思考を見透かしたように水森唯は少し笑みを浮かべた。
「……佐藤君がちゃんと読んでくれてて安心したわ」
いやごめん、正直全然読んでねぇんだが。
マジですまん。




