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ep10.『聖母と道化、その支配人』 辻褄合わせ

翌日。


俺はどう水森唯に接していいものか答えを出せずにいた。


自分に出来ることは何もない。


リアルな現実。それを突き付けられた気がした。


そうだ。呪いの力があるなんて図に乗った所ですぐに壁にぶち当たる。


俺自身に才能があるだとか突出した能力があるなんてものじゃないんだ。


あくまでも副次的な力。


コントロールなんてほぼ不可能だ。


俺には何もない。


ただの平凡な中学生に過ぎない。


俺は何を思い上がっていたんだろう。


人を救えるだなんて思い上がりも甚だしいじゃないか。


昨日パラパラと捲っただけの[車輪の下]。


その内容がまた俺の気分を憂鬱にさせた。


筋立ては所謂“バッドエンド”と呼ばれるようなものだろう。


救いはない。少なくとも俺にはそう感じられた。


こんな陰鬱な話の何がいいんだろうか。


少なくとも教科書に載っていた[少年の日の思い出]はまだ何か教訓めいたものを得られたような気がしないでもないが──────────


それから俺は朝の教室でただ、自分の立ち位置について考えていた。


俺のような人間の出る幕でもない上に何も出来ることなんてないだろう。


普通に適当に謝ろう。本を返してそれでおしまいにしよう。


それくらいしか俺には思い浮かばなかった。


その日は少し遅い時間、予鈴ギリギリの時間に水森唯は教室に入ってきた。


やはり家庭内でのことが大変なんだろうか。


俺は水森唯の席に近付き、[車輪の下]を差し出した。


「……あ、あのさ水森。これ、助かったぜ」


サンキュな、と何事もなかったかのように平静を装って声を掛ける。


「佐藤君」


水森唯は少し俯き本を受け取る。


「……それでどうだった?」


え?と俺は思わず聞き返す。


「……読んだんでしょう?佐藤君的にはどうだった?」


しまった。


感想か。


感想を聞かれるなんて思わなかった俺は戸惑う。

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