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ep10.『聖母と道化、その支配人』 建前の構築方法

なんとなく興味はある。

それから俺は暫くの間、水森唯の勧めてくれた本についての話に耳を傾けた。


それは思ってもみない内容だった。


改めて水森唯の感性の豊かさのようなものを感じたように思う。


今までは全く気付かなかったが────────水森唯についての印象はいい意味で裏切られた。


「へぇ。水森が読んでる本ってどれも面白そうだな」


すっげぇ興味出てきたんだけど、と俺が言うと水森唯は感情を隠さない様子で屈託のない笑顔をこちらに向ける。


「……あら?じゃあもしかして、佐藤君と私って案外似たもの同士なのかもね」


まあそうだな。


どっちも家庭に問題を抱えていて─────────オマケに母親は死んでるときてる。


いや。


俺は首を振った。


そうじゃないだろ。まだそれは確定してないんだ。


それを探るために俺はこうして水森と話してるんだし──────────


少し慎重に遠回りしすぎたかもしれない。


俺にしては珍しいんだけどさ。


そろそろここで一気に攻勢に出るか?


そこまで考えた俺は、ある種の賭けに出た。


「なあ、水森。さっき言ってたさ、教科書に載ってた作者の本って───────」


なんだったっけ?と俺が話を振ると水森が素早く反応した。


「ああ、あれ?ヘルマン・ヘッセの[車輪の下]のことかしら」


そうそう!と俺は前のめりになりながら相槌を打つ。


「なあ、水森。水森が今、読んでる最中なのに悪いんだけどさ────────」


それ、ちょっとだけ見せて貰えねぇか?と俺が口にすると水森唯は驚いたように声を上げる。


「……え!?」


俺は機会を逃すまいと一気に捲し立てた。


「ほら、加賀に提出する読書感想文って明日が締め切りなんだよ。だから絶対に今日中に読まなくちゃいけなくて」


は?と水森唯はキョトンとした表情を浮かべる。


そうだよな。俺の狙いが何処にあるかなんて水森唯からは見えてこないよな。


「今、借りてる最中のその本、家にあるんだろ?」


俺がそこまで言うと水森唯もその先の言葉を察したのか、身構えたように僅かに表情が硬くなる。












「……だからさ、今日の放課後────────お前んちに寄らせて貰っていいか?」


流石に無理があるとは思うけど……

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