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ep10.『聖母と道化、その支配人』　自ら丸裸になる行為

なんだそれは？

「……？」

それってどういう意味？と俺が尋ねると水森唯ははぐらかすようにこう言った。

「……別に私って訳じゃないわよ」

まあ忘れて、と水森唯が話題を変えようとしたので俺はそれ以上は訊かなかった。

そうだ、忘れちゃいけねぇ。

俺は水森唯について調べる義務がある。本題に戻らないとな。

この件については何せ自分から───────首を突っ込んでったんだからさ。

乗り掛かった船ってよりも既に乗ってる船って感覚が正しいかもしれない。

そのためにはまず、水森唯の家族の安否確認が必須だ。

その次に家庭環境の変化の有無、そして最後に──────────

別の世界線での水森家の祖母と母親の死の真相に辿り着かねばならないだろう。

俺は考えを巡らせた。

その為にはまずどうすればいい？

手っ取り早いのはさ、水森唯の家にもう一回上がりこめたらいいんだよな。それしかない。

けど、どうやってそれを実行する？

現段階じゃ俺はただの同級生、同じクラスなだけの人物でしかないじゃないか。

そう思った俺はどうにか話を引っ張ろうと画策する。

「なあ、リア王？ってやつ以外だとさ、他にどんなオススメがあるんだ？」

興味が出て来たからさ、何冊かピックアップしてくれねぇか？と俺が言うと水森唯の表情が少し明るくなった気がした。

「……そう言って貰えるのは光栄ね。じゃあ、私の好きな本でもいいかしら？」

勿論、と俺は答える。

そうそう、その調子で水森唯の情報をちょっとでも入手しねぇとな。

そもそもさ、[自分の好きな本を他人に紹介する]って行為自体がもうアレだよな。

──────本人の考えてることを全部開示するのに近い行為じゃねぇか？

それはそれで興味あるな。