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ep0. 5 「真夏と昼の夢」(溺れる二人)

沸騰。

二人の血液は相変わらす沸騰寸前のままでその心臓は暴発寸前だった。


俺もう我慢できねぇ、頭おかしくなりそう、と呟いた少年はテーブルの上にあった筒状の物に目に留めた。


未開封のウェットティッシュ。概史からのバックアップだった。


ソファカバーをセットしに来たときに置いて行ったのであろう。


あのガキ、と言いながら少年はそれを手に取りシュリンクフィルムを剥がす。


蓋を開けて数枚それを取り出すとその指と手を拭いた。


ガックン?どうしたの、と薄目を開けて少年の姿をマコトが窺っている。


何でもねえし、と少年は靴下と学生服のズボン、トランクスを脱ぎ捨てて誤魔化す。


なあ、力抜いて?と少年はマコトの           その指を再び小さい突起まで這わせる。


起動スイッチを探すような動きでその箇所を弄る。


あぁ!と泣きそうな切ない悲鳴がマコトの口から漏れる。


ダメこんなとこ、と首を振るマコトの内部エンジンからは蜜のような透明なオイルが止めどなく流れてくる。


少年の指は蜜のような滑らかな液体に絡め取られていった。


内部エンジンや機体に負担を掛けない為にもこの箇所のメンテナンスと整備は必須だった。


少年はやや錯乱し呼吸が荒くなっているマコトの肩を抱くともう一度耳元でゆっくり力抜いて、と囁く。


その指はゆっくりと奥のエンジンルームに近い部分に沈みこんで飲み込まれていく。


マコトが思わず小さく叫び身体を反応させるとその指は身動きが取れなくなり立ち往生する。


狭く固く閉ざされた未開封の無垢なパーツは無意識のうちに異物を排除しようとする機能を発揮していた。


無理にこじ開ければ破損させかねない繊細な部位。しかし、メンテナンスと整備を行わねば機体の侵入と通行は不可能だった。


ふと思い出し少年は短ランのポケットから細長い箱を取り出した。


ギアやシャフトに使うのと同じ効果のある消耗品。


本体やパーツの摩耗を防いでくれるであろうその物品を手に取ると自分の掌にそれを絞り出す。


ひんやりとした感触の蜂蜜のような甘い香り。


少年はゆっくりと再度のメンテナンス、エンジンルーム入り口に指を這わせた。


同時に他の指が小さな突起物に触れている。


マコトは身を捩り掌で顔を覆って絶叫する。その身体は無意識に仰反ろうと動いており、少年は左手でマコトの肩を押さえて落ち着かせた。


マコト?と少年は先程の言葉を思い出してそっと問いかける。


なあ、いまのお前めっちゃ可愛い、と少年は唐突に脈絡もなく呟く。


こんな狭いんだ?


マコトの身体から少し力が抜け、少年の指はそのまま最深部に進み行き着いた。


最深部に到達した爪の感触がマコトにも伝わってくるようにも思えた。


何これ?指入ってるの?とマコトは荒い息遣いのまま戸惑い硬直する。


ちょっと怖い、と言い掛けてマコトは言葉を飲み込んだ。


僕が無茶言って無理矢理に騙し討ちしたようなものなのに、とぼんやりと思考を巡らせた。


でももうここまで指が入っちゃってるんだ、とマコトは異様な感情の昂りを覚えた。


あれ、もう僕処女じゃないのかな。いまの状況ってなんだろう?半分処女?じゃあタンポン使ってる子は全員処女じゃなくなってる?そんなことないよね。じゃあなんだろう?


そういえば処女膜ってまだあるのかな?どんなのだろ?っていうか膜?じゃあもう破れてる?破れた膜の断片て出てくるの?


考えれば考えるほど現在の状況から思考が離れて脳内がシャッフルされ続ける。


少年が中指と他の指をゆっくりと動かす。


他の指が小さな突起に当たって痛みと快感が同時に押し寄せる。


マコトは思わず悲鳴に似た叫び声を上げて目に涙を浮かべる。


アドレナリンとドーパミンが人生最大風速で放出され、二人は脳内麻薬にその全てを支配され溺れていった。


ブレーキが完全にブッ壊れた暴走車のような速度で二人は正気を失っていく。


あー悪ィ、もう無理だわ、と少年は呟くとその指を引き抜く。


それが何の合図であるかをマコトは理解していた。


お前が言い出したんだからな、と少年は囁く。後悔すんなよ、知らねぇからな。


マコトは荒い息遣いのままソファに横たわり暗い天井に映し出されたモバイルバッテリーの青い光を眺めていた。


心拍数が最大値に上がる。


その内部のエンジンから沸騰したオイルが太腿の内側を伝って流れる。


少年はポケットから淡いピンクの紙箱を取り出して開封した。


連なった個包装のパッケージを切り離し、表面に描かれた蝶の模様をチラリと一瞥した。


手に持ったまま二、三回強く振り中身を片側に寄せる。


封を切って取り出すとその先端を摘んだ。そのままゆっくりと支度を完了する。


シフトレバーはいつでも目的地に出発できるよう準備が整えられた。


現時点で既に到達しかねない勢いだった。


ソファに横たわるマコトの細い身体に覆い被さるようにその顔を近付ける。


お互いの荒い息遣いが感じられた。


目的地までの経路を確認する為に二本の指がその通り道を確保する。


堪らずマコトが小さく叫びソファカバーを掴む。少しの痛みと異物感がその身体に走る。


んんっ、と痛みを押し殺すように小さく声を漏らす。


今から痛いと思うけど、と少年は呟き、マコトは乱れた呼吸のまま頷いた。


念のため少年は先程のチューブを手に取った。


残しても二度と使う予定は無いのだ。ひんやりとした感触の蜜のような液体を掌に全て絞り出しマコトの出発地点とシフトレバーの両方に流し込んだ。


冷たい感触にマコトの身体がビクンと小さく跳ねる。


マコト。大丈夫か?と少年はその名前を呼んだ。


ガックン。大丈夫だから。とマコトも少年の名前を泣きそうな声で呼んで応える。


少年はマコトのその白い太腿を開き、そのままの体勢で体重を掛ける。


ダメ!こんな格好恥ずかしい、とマコトは首を横に振るが既に二人の身体の一部は結合を開始していた。


小さな突起や柔らかい小さな花の部分をその車体の一部が何度も通過して試運転を行った後に本来の目的地へのルートに突入していく。


そのドアはゆっくりとこじ開けられ二人の見ている景色は何もかも変わっていく。


痛みと共に全身に走るゾクゾクとした精神的な快感の洪水にマコトはその身体を震わせた。


初めて感じる温かく柔らかい感触と快感が少年の身体を襲い纏わりつく。


飛びそうになる意識を繋ぎ止めるのに精一杯だった。


更に脳内はその追撃の手を緩めず容赦なくアドレナリンとドーパミンを放出させる。


身体は快感に引き摺られ勝手に動いていく。


マニュアルでなくオートで動く機体のように本能に従った身体の動き。


暴力的なまでの快感が襲ってくる。


やべぇマジで気が狂いそうになるな、と少年は既に正気で無い意識の中で感じた。


マコトは少年の腰の動きに身を委ね破裂寸前の心臓と身体の奥深くに到達した痛みを凄まじいまでの脳内麻薬の快感と共に味わっていた。身体が揺さぶられるたびに頭がおかしくなりそうだった。


マコトの薄い胸板の上で控えめに上下に揺れる白い二つの膨らみが堪らなく扇情的だった。


少年はそのままの身体の動きで      に指を這わせた。マコトが悲鳴に近い小さな叫びを上げてその快感に耐えられず身を捩り目に涙を浮かべた。


もうダメ、なんでこんな気持ちいいの?すっごい痛いのに頭おかしくなりそう。


マコト、と少年は何度もその名前を呼んだ。


ガックン、とマコトも少年の名前を呼びその背中にしがみ付き爪を立てた。


 この夜が明けなければいいのに。このまま時間が止まればいいのに。お前が居ない明日なんか要らない。誰が決めたんだ?このまま二人で一つになったまま何もかも終わればいい。もう何も要らない。少年は飛びそうになる意識の中で呟いた。







「この世界もお前も滅茶苦茶に壊してやりたい」

暴発。

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