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ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』  (I Feel Like Being a)

さりげなく、軽ーく聞いてみるか……

なあ、ちょっと聞きたいんだけどさ、と俺はなるべく軽く──────世間話のようなノリで切り出した。


「ローションってあらかじめ買っとくものなんか?」


無いと(むず)くね?と俺が聞くと概史は急に真顔になった。


「……それって先輩が、ってことっスか?」


ん、ああ……まあ、と俺は適当に誤魔化す。


概史は少し考え込むような仕草を見せた後、こう答えた。


「───────相手とかシチュによるんじゃないっスかね?例えば初めてとかそうじゃないとか」


無くても大丈夫ってこともあるでしょうし、という概史の言葉に俺はすこし戸惑う。


そうだよな。


概史の場合は相手が撫子に固定されてるもんな?


「まあでも、持ってて損はしないっスよね。あれば使った方がいい気もするんで」


まあ、あらかじめ『今からセックスする』って確定してるなら買っとくべきかもな。


概史の場合は実行するシチュってのもコイツの部屋だろうし───────


「じゃあさ、そういう場合はやっぱボトルで買って置いとくのか?」


俺が尋ねると概史はまあ、そっスね、と頷いた。


「それじゃさ。もしもさ、もしもだけど───────なんか急に別の場所でヤることになったら───────そういう時ってどうする?」


思い切って踏み込んだ質問をした俺に対し、概史も何故かガチ目のトーンで答える。


「ローションのボトルが手元に無いようなシチュってことっスか?屋外とか、なんかそういう──────」


まあ、そういうイメージで、と俺が答えると概史は迷うような素振りをみせた。


「んー?そうっスね。そういう場合もありそうっちゃありそうっスけど……手持ちのゴムの種類の方を変えてみるってのもアリじゃないっスかね?」


ん?


「……ゴムの種類?」


思わず俺は聞き返す。


「ゼリー多めの潤いタイプとかのゴムとかだったらいいんじゃないっスかね?普通のよりかはいい感じっスよ」


ちょっと待っててくださいね、と言いながら概史は隣の部屋に引っ込む。


しばらく待っていると紙袋を抱えた概史がこちらに戻って来た。


「あ、これ、貰い物なんすけど─────ちょっと見てみます?」


概史はテーブルの上に紙袋の中身をぶち撒けた。


テーブル上に散らばるカラフルなパッケージのそれは──────────色とりどりのコンドームだった。


「は!?なんでこんなに持ってんだよ!?」


驚く俺を尻目に、概史は平然と解説を始める。


「あ、兄貴が貰ったモンみたいなんすけど─────兄貴の店のお客さんにアダルトグッズの会社の企画部?の人が居るっぽくて」


なんか色々と貰ってくるみたいなんですよね、と概史は上がり気味のテンションで嬉々として答える。













てか、なんだよ!?兄貴絡みだとは思ってたけど───────コイツ、なんでこんなに知識とストックが豊富なんだよ!?


あーもうメチャクチャだよ……

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