表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

601/1123

ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 王子様とスナイパー

嘘だろ…?

「……え!?」


俺は自分の目を疑った。


鳥居の前に立つ人影。


─────────岬京矢。


ここにいるはずの無い人物だった。


「……」


岬京矢は無言のままこちらに歩いてくる。


なんだこりゃ?どういう事だ?


俺は空の銃を持ったままで身構える。


すると。


岬の前に姿を現したのは花園リセだった。


「……来て下さったのですね」


優雅に微笑むご令嬢を目の前に、やや緊張気味の岬京矢。


「……ご無沙汰しています」


小さく会釈をする岬京矢はまるで別人のようにも思えた。


「今、由江さんに教えて頂いて鉄板で焼きそば作りに挑戦するところでしたの。よろしければこちらにいらして」


花園リセに手を引かれ、祭り会場に足を踏み入れる岬京矢。


「……ちょっと!あれ、もしかして西中の岬京矢じゃない?」


諸星キクコが小さく声を上げる。


「え!?クールな王子様って有名な岬京矢?」


マコトもそれに反応する。


花園リセが岬京矢を呼んだのか?


俺は気配を殺しつつそろりと焼きそばブースの後ろに移動した。


岬京矢は緊張した面持ちで焼きそば屋の前に佇んでいる。


由江さんの影に隠れるように、そろりと花園リセに近付き声を掛ける。


(ちょっとリセさん、なんで岬京矢がここに……?)


俺が小声で尋ねると、花園リセは微笑みながらこう答えた。


「佐藤さんからお話を伺った後に、お父様の会社のレセプションパーティーの時に一度お会いした事を思い出しましたの」


それで僭越ながら岬さんをお誘いしたんですが……来てくださって良かったですわ、と花園リセは嬉しそうな表情を浮かべた。


花園リセの父親の会社?


パーティー?


それってさ、花園リセの父親の部下が岬の父親って意味なのか?


やや固い表情で棒立ちになっている岬を俺はチラリと見る。


それってほぼ業務命令じゃね……?


花園リセが岬と個人的にやり取りしてそうな雰囲気はねぇし、誘うって言っても直接連絡したって感じじゃ無さそうだ。


だとすると──────花園リセが岬の父親経由で連絡したって線が濃厚だろう。


普通に考えてさ、大財閥の花園家の令嬢からの誘いだぜ?


しかも父親の上司で社長令嬢だし、流石の岬京矢でもまず断れねぇ案件だよな。


岬京矢が何故か祭りに参加するというミラクルではあるのだが、その経緯を考えるとなんか気の毒にも思えてくる。


「……出来ましたわ!」


出来上がった焼きそばをパックに詰め、意気揚々と岬に差し出す花園リセ。


やや困惑気味な表情の岬を目の前にして、思わず俺はこんなことを口走っていた。


「……わ!美味そうじゃねぇか!?なあ、リセさん。俺にも同じの作ってくれね?」


腹減ってるからさ、三人前程食いたいんだけど、という俺の申し出で花園リセは俄然ヤル気を出したようだった。


「本当ですか?!佐藤さんからのリクエストでしたら……勿論、精一杯頑張らせていただきますわ!」


花園リセが慌ただしく三人前の焼きそばを焼く準備をしているのを見計らって、俺は岬に声を掛けた。


「なあ。アンタ、もしよかったらこっちの射的場に来てやってくれねぇか?」


激ムズでさ、まだ誰も景品が取れてないってハナシなんだよ、と俺が言うと岬はこちらをチラリと一瞥する。


「景品に可愛いぬいぐるみとかもあったしさ、花園リセに何かプレゼントでもしてやったら盛り上がるんじゃね?」


俺がそう言うと岬は無言のまま頷いた。


「……君がそこまで言うなら───────まあ、少しやってみてもいいけど」


俺は岬を概史の居る射的屋まで案内する。


「2名さまご案内ーww」


面白そうな客が来たとあって概史はテンションが上がった様子でニヤニヤとしている。


弾を込め、照準を合わせて引き金を引く岬。


「……」


弾は真っ直ぐに飛び、景品のチョコレートに命中する。


ポトリ、と音を立ててチョコレートの箱は倒れた。


「!?」


ふん、と鼻を鳴らした岬はこちらを一瞥した。


「大財閥のご令嬢へのプレゼントに相応しい品物なんてここには無いようだけど……?」


「……ま、まあ後四発も残ってるだろ?なんか良さげなの選んで狙ってみろよ」


俺は適当に答える。


てか、岬ってこんな特技あったのか?


二発目、三発目。


弾はドロップ缶とクッキーの箱に命中する。


マジか?


四発目と五発目。


弾はラッピングされた綺麗な箱にそれぞれ命中した。


百発百中じゃねぇか。


てか、コイツ一体どうなってんだ!?


戸惑う俺を尻目に、概史は意気揚々と鐘を鳴らす。


「大当たりーwww」


てか、マジでスゴいっスねwwwおにーさん何者っスかwww、と概史は命中した全部の景品をドサドサと岬に手渡した。


菓子類はともかく───────ラッピングされた箱は何やらいい物が入っていそうに思われた。


「マジでスゲェな。てか、その箱ってめっちゃいいモン入ってんじゃね!?」


俺がそう言うと岬はラッピングされた箱を怪訝そうな顔で手に取る。


岬がそれを開けようとした瞬間、概史がニヤニヤニヤとしながらこう言った。








「あ、ラッピングしてある箱ってwww兄貴がビンゴゲームの景品で用意してたアダルトグッズが中に入ってるんでwww」


ハァ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ