ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 秋祭り開催RTA ⑫
これ、ホントに上手くいくのか?
その後、概史と佑ニーサンに連絡を取り進捗状況を尋ねて昼休憩は終わった。
概史の兄、フーミンが祭りに協力してくれるという約束を取り付けられたというのは収穫だった。
おそらく概史のヤツがキチンと交渉してくれたんだろう。(或いは、二人ともノリとテンションだけで決めてるのかもしれないが)
佑ニーサンの方も買い物は順調に済んだとのことだった。
俺らに出来る根回し──────────これ以上はもう無いだろう。
俺とドッペルゲンガーは5・6時限目を上の空で過ごし、HRの終了と共にダッシュで神社に向かった。
小泉はまだ下校出来ないので後から合流する。俺たちだけで、出来る限りの準備を進めておく必要があった。
16時過ぎに神社に到着すると───────いつものように巫女姿のシンジがそこに立っていた。
シンジは俺たちをギロリと一瞥すると無言のまま作業に入る。
ステンレス製の水槽のようなものを倉庫から出そうとしているのが見えた。
「おい、一人でやろうとすんなよ。俺らもやるし」
シンジが引き摺ろうとしていた水槽をドッペルゲンガーがヒョイと持ち上げる。
「バイトで鍛えてっからよォ、こういうのは俺らに任せときゃいいんだって」
シンジは不服そうにプイと視線を逸らす。
「……全く。なんだって姉さんは急に祭りだなんて言い出したんだ」
ボソリと小声でシンジが呟いた。
すまんな。全部俺らのせいだ。
「シンジくん。おてつだいにきたよ!」
水槽を運んでいると天宮列奈が声を掛けてきた。
おまつり、すっごくたのしみだねぇ、と天宮列奈は無邪気にニコニコと笑っている。
ふと、境内の一角を見るといくつかの買い物袋が置いてあったのが見えた。
中には水風船とラムネの瓶、ニッキ水の瓶が何本か入っている。
「……ああ。それは」
学校帰りにスエカ婆ちゃんの店で受け取って来たんだ、とシンジは苛立ちを抑えない様子で言った。
「え?スエカ婆ちゃんのトコで?」
今から行くって手間も省けたし、マジで助かったわ、と俺が礼を言うとシンジはまたプイと視線を逸らした。
「……別に。姉さんに頼まれただけだし」
「まあ、とにかく準備作業に掛かろうぜ」
二つの水槽に水を入れ、そのうち一つにラムネの瓶とニッキ水を入れる。
なんとなく祭りの雰囲気は出る気がした。
もう片方の水槽には水風船のヨーヨーを浮かべる。
水風船を膨らませ、ゴムを引っ掛ける作業は天宮列奈とシンジに任せることにした。
そうこうしている間に時計の針は17時を指す。
ちょっとずつメンバーと出し物は揃って来た気がするが──────────
開始まで残りあと2時間。無事に間に合ってスタート出来るんだろうか?
いいトコまで来たんだが、果たして間に合うか?




