ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 秋祭り開催RTA⑦
どういう意味だ?
「え?なんでだよw」
俺はすっとぼけるようにそう答えた。
「うん……ガックンには話したことなかったんだけどさ」
ボク、前の学校でちょっと友達とギクシャクしちゃっててさ、とマコトは神妙な様子で呟いた。
それを聞いて──────── 一瞬でも“別の何か”を想像してしまった自分自身に心底、嫌気がさした。
「……そっか。まあ、そんなことだったら─────────」
俺がどうにかフォローするし、とマコトに告げつつも、自分の心は全く上の空だった。
そうだよな。
当たり前じゃねぇか。
俺とマコトに“何か”あった世界線の記憶なんて、二人とも無いはずだろ?
なんで一瞬ビクっとしちまってんだよ俺。
「うん……頼むよ」
ボク、あれから友達に会うのって初めてだから、というマコトの言葉に俺の胸は少し痛んだ。
僅かな罪悪感のような感情。
今回、俺は自分達のことしか考えて無かったが──────大勢の人間を呼ぶってことはこういう事なんだよな。
いわば俺が主催なんだから、周囲の状況やゲスト一人一人に気を配んなきゃなんねぇ。
諸星キクコ。
マコトが心配してんのはコイツのことだろう。
いくら焦っていたとはいえ、仮にもダチだったハズのマコトの心情や感情を1ミリも考慮してなかった自分が最低に思えた。
「……あのさ。突発とは言ってもせっかくの祭りだし───────」
マコトとお前のダチがいい思い出が作れるように俺も頑張るから、と告げるとマコトはクスクスと笑い出した。
「……なんか、さっきからガックンらしくないなぁ?どうしちゃったのさ?」
変なの、というマコトの言葉に対しお前もだろ、と返す。
「マコトこそいつものお前らしくねぇじゃん。やけに弱気じゃね?」
俺がそう言うとマコトは少し黙ったあと、そうかもね、とだけ返してきた。
「でも、ガックンが祭りの主催って意味わからなさすぎてウケるね」
楽しみにしてるから、とマコトは少し笑って俺達は通話を終えた。
ふと横を見るとスマホの画面を眺める御月の様子が視界に入る。
「あ、悪ィ。朝から変な場所で通話しちまって。五月蠅かったか?」
いや、と御月は首を振る。
「えっと……あのさ、マコトから連絡があってさ。なんか急に来れることになったらしくて」
俺がそう報告すると御月は安堵したような表情を浮かべた。
「それは良かった。昨晩、キクコに今までの流れを伝えてたんだが─────────上手く行ったようだな」
え?諸星キクコに?




