ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 秋祭り開催RTA⑥
さて、こっからどうする?
花園リセとの通話を終えるとドッペルゲンガーの息子がすぅすぅと寝息を立てて寝ていた。
慣れない環境で疲れてしまったのだろう。
部屋の電気を消し、俺達も布団に潜り込んだ。
「……三人が不参加のままで飲み会─────祭りを実行してもそれって再現って言えるか?」
ふと思った事を口にすると、佐藤次郎(仮)が反応する。
「まぁいいじゃねぇか。なんかさ、こういうのも楽しいモンだなァ」
ま、どうにかなんだろォ?とドッペルゲンガーは楽観的だが、本当にそんなノリでいいんだろうか。
もしも今回上手く行かなかったら─────もうこんなチャンスって無ぇんじゃねえのか。
暫く……いや、或いは一生、このドッペルゲンガーとその息子と共同生活するって可能性もあるんだろうか。
不安になりながらも、疲れが溜まっていたのか俺はそのまま眠ってしまっていた。
──────翌朝。
スマホの音で目が覚める。
アラームを掛けた記憶はない。
ぼんやりとしながらスマホの画面を覗くと、それはマコトからの電話だった。
「……マコトか?」
訳が分からないまま通話に出ると、何やらモジモジとした様子のマコトの声が聞こえてくる。
「あ、ガックン?おはよ。……こんな時間にゴメンね?」
どうしたんだよ、と俺が訊ねると──────返ってきたのは意外な返答だった。
「あのさ、ボク……今日のお祭り?に行っていいことになっちゃって─────」
「ハァ!?」
思わず俺が聞き返すとマコトは言いにくそうに、こう続けた。
「あのさ……パパがね、行ってきなさいって言ってくれて──────」
「マコトの父ちゃんがか?」
どういう風の吹き回しだろうか。
いや、マコトが来てくれるんなら願ったり叶ったりだが──────それはあまりに不可解過ぎる出来事のようにも思えた。
「マジか?ガチで言ってんのか?マコトが来てくれるってんなら俺もめっちゃ嬉しいけどさ」
怒られたりしねぇの?という俺の質問に対し、マコトはこう答えた。
「なんかさ、寧ろ逆でさ……いい機会だからちゃんと挨拶しときなさいって言われちゃって─────」
挨拶?
どういう意味だろう。
俺が戸惑っていると、マコトは歯切れの悪い様子でこう付け加えた。
「ちょっと行くのに勇気いるんだけどさ─────ガックン、ちゃんとボクの側に居てくれる?」
その言葉に何故か、俺の心臓はドキリとした。
……どうしたんだよ急に。




