ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 秋祭り開催RTA⑤
まあまあショックだ。
無言になってしまった俺に対し、ドッペルゲンガーは強めの力で背中を叩いてくる。
バシン、という音が部屋の中に響く。てか、痛ぇよ。
「来れないってモンはしゃーないだろうがァ。時間はねぇんだしよォ!?」
次の作戦でも考えようぜェ!?という佐藤次郎(仮)の言葉に俺は頷いた。
「まあ、そうだよな……」
けど、どうする?
マコトがダメだってんなら、夢野くるみに岬京矢なんて到底無理じゃねぇか。
「お。そういやリセはまだ誘ってねぇよなァ?言ったら来んじゃね?」
ドッペルゲンガーは気楽に言い放つ。てか、呼び捨てかよ。馴れ馴れしいな。
「まあ、そうなんだろうけど──────」
俺は内心ビクビクしながら花園リセに電話を掛けた。
深窓の令嬢がガキの手作りの祭りごっこなんかに付き合ってくれるとは考えられないんだが……
予想に反し、2コール目で花園リセが通話に出る。てか、早くね?
「……佐藤さん。こんな時間に──────どうされましたの?」
電話の向こうの花園リセの声は気のせいか少し緊張しているかのように思えた。
いや、ガチガチになってるのは俺の方じゃねぇか。
「あ、いや。悪ィ。こんな変な時間に───────」
大した用事でもないんだけど、と俺は恐る恐る告げる。
まあ、といういつもの声がスマホ越しに聞こえた。
「嬉しいですわ。佐藤さんからこうして電話を頂けるなんて──────」
用が無くてもいつだって気軽に連絡してきてくださいね、と柔らかく笑う花園リセの反応に俺は少しホッとしたのかもしれない。
「あ、えっと。その……めっちゃ急なんだけど。リセさん、明日の夜って空いてるか?」
俺がビクビクしながら切り出すと、花園リセはええ、と即答してきた。
「ん?え?空いてる?」
意味がわからず聞き返すと花園リセはこう答えた。
「勿論ですわ。佐藤さんの為でしたら……わたくし、予定はどうとでも調整出来ますもの」
どういう意味だろう。よくはわからないが─────とにかく俺はダメ元で花園リセを誘ってみることにした。
「あの、もし嫌じゃなかったらなんだけどさ。明日、センセェのとこの神社でお祭りがあるんだけど……よかったらリセさんも来てくれないかなって」
思い切ってそう打ち明け、祭りの概要を説明すると花園リセはしばらく黙った。
やっぱ駄目か……?
俺がそう思った瞬間、スマホの向こうの花園リセはこう呟いた。
「……嬉しいですわ。佐藤さんからお誘い頂けるなんて──────」
謹んでお受け致します、という花園リセの言葉に思わず俺はガッツポーズをきめていた。
「マジで!?マジで来てくれんのかよリセさん!?」
「ええ、勿論ですわ」
わたくしに出来ることがありましたらなんなりと、という花園リセの言葉はこれ以上ないほど心強かった。
「リセさんが来てくれるなら俺も安心だし」
横で俺の様子を窺っていたドッペルゲンガーと御月も思わず表情を明るくする。
花園リセに礼を言い、詳しい事はまた連絡すると言って通話を切った。
マコトの欠席は痛かったが──────花園リセがメンバーに加わってくれたのは収穫だった。
残るは夢野くるみ、岬京矢だけだが──────────
思ったよりあっさりOKが出たな……




